病的近視における脈絡膜新生血管増殖が収まった-眼科医療から離れないことの大切さを実感!!

 私の眼の紹介
 私は、現在74歳、先天性白内障で両眼とも失明状態で生まれたのですが、生後6ヶ月から7歳までの間に、何回かに分けて濁った水晶体を摘出して、早期に眼に光が入ったことと、レンズなどの光学機器の素晴らしい進歩と、ロービジョンケアの恩恵を早くから受けたことなどで、昨年までは、良い方の左眼の矯正視力が0.2程度見えていて、視野障害もなく、状態は、比較的安定していました。(少し話しがそれるのですが、70年以上前には、白内障の手術は、安全のために10歳ぐらいで行うのが常識だったらしく、生後6ヶ月で開眼手術を受けられたのは、奇跡みたいなことだと、私が50歳ぐらいの時に、眼科の歴史に詳しい先生に言われて、初めて知りました。)
 話しを元に戻すと、私が30歳ぐらいの時に右眼に角膜混濁が起こり、そのことで詳しい眼の検査を受けて、知ったのですが、私の眼は小眼球で、眼の構造は眼軸の長さが28ミリあり、いわゆる強度近視(今では病的近視とも言うらしい)で、網膜が引き延ばされて、「網膜剥離を起こしやすいので、気を付けるように」と、私が診てもらってきた眼科の先生方に、いつも言われていた。

 10年ほど前になりますが、良い方の左目に、暗い所から明るい所に出ると、黒い影のような物が見えるようになり「いよいよ網膜剥離が起きた」のではないかと慌てて、大学病院の網膜硝子体の専門の先生に紹介していただき、その時は、幸い網膜剥離ではなくて、加齢により硝子体が液化する現象で、それで影が見えたのだと言うことが分かりました。ただ、網膜剥離など、異状の起こりやすい眼なので、このことをきっかけに、3ヶ月に1度ほど、定期的に診ていただくことになり、ずっと今まで通い続けてきたのです。

 1 なんだかゆがんで見えるようになってきて-病変の発見
昨年の中頃から、特に横に引いた表の線や、テレビの枠などの横の線が、少しゆがんで見えるようになって来て、その内に、テーブルの上のお箸の真ん中辺が湾曲して見えたり、何カ所か曲がって見えるようになり、だんだんそれがひどくなってきました。
 そこで主治医に、その見え方を説明した所、眼底写真とか検査をして、「病的近視における脈絡膜新生血管の増殖」だと診断されました。。
 新生血管が増殖してくると、網膜を押し上げたような形になり、スクリーンがでこぼこになるので、物がゆがんで見えるんだと、私はそんな風に理解しました。この新生血管は、弱いので、そこから出血したりすることもあるとのことでした。

アイリーアRの治療をはじめる患者に手渡される説明冊子
アイリーアRでの治療をはじめる患者への説明冊子

 この新生血管の増殖を抑える効果がある薬が、アイリーアRと言うのだそうで、眼の中に直接注射をして、薬を送り込むという説明を受けました。
 薬が増殖を抑える期間は、平均8週間ほどで、それが過ぎると、また増殖が始まるので、何回も繰り返して注射を打つ必要があるとのことでしたが、病的近視による新生血管の増殖は、3回から5回ぐらい繰り返し注射を打てば、再発しなくなる例が多いとの説明をうけました。(個人差はあるとのことですが)
 この治療をするにあたって、一つ先生が心配したのは、私の眼球振盪(不随意に眼が細かく動く)、私の意思とは関係なく眼が揺れているので、注射を正しい位置に打つことが出来るかということでした。眼球振盪を止めようとすると、全身麻酔が必要なのだそうで、全身麻酔それ自体、大変なことですから。
 先生、いろいろと考えておられて、私の眼は無水晶体眼なのを確認されて、「それならば、注射針を入れるポイントは、そんなに狭い範囲ではないので、眼振があっても注射可能」ということになりました。
 「割に少ない回数で増殖が収まる可能性がある」ということに、期待しながら、治療をはじめることを決断しました。

  2 注射までの説明と準備と本番
  いよいよ注射という治療を行うことになって、その専門の看護師さんから、段取りの詳しい説明を受けました。その時に渡されるのが、写真の冊子で、病的近視の説明と、アイリーアRの効果について、詳しく書いてありました。
 詳しい説明をうけて同意書にサインし、感染症を防ぐために細菌を殺すための目薬を処方されて、3日後に再び病院に行きました。
 1回目の注射は、2021年11月12日。外来で血圧などをチェックして、処置室に入って、再び消毒、麻酔などを入れて。いよいよ注射、左眼の眼以外は、覆われている中で、先生が、注射針を眼の中に入れて、あっという間でした。キラキラと光った、丸い玉の形をした液体が眼の中に入ってくるのが見えて、その丸い粒が、とってもきれいだなと思っていたら、一瞬で消えていきました。すごく緊張していたはずなのに、「すごく幻想的できれいだ」という印象が強く残って、先生にも「液体が入ってきたとき、すごくきれいだった」と言ったことを覚えています。
 良く見える方の眼に注射をしたので、とにかく物がぼやけて見え、電動車いすを運転するのも、心配で、看護師さんが、会計窓口での支払い、そしてタクシー乗り場まで付き添ってくださって、帰宅しました。自宅のあたりは、良くなれているので、視界がぼやけていても問題なく、帰宅後は、眼に少し痛みもありましたから、ゆっくり休んで、一晩寝た後は、普通に生活できるようになりました。
 注射から4日ほど経って、眼にばい菌が入って感染を起こしていないかということの確認と、薬の効果を確かめるために眼底写真の検査を受けるために病院へ。視力検査を受ける際に、大きくゆがんでいた検査機の長方形の枠のゆがみが穏やかになっていることが自分で確認できましたし、写真を見せていただくと、私の眼でも、山のように盛り上がっていた箇所が、しぼんでいるのが分かって、薬の効果がバッチリ確認できました。
 そして、薬の効果が切れると言われている8週間後に、次の診察を予約して帰宅しました。。

 3 4回の注射を繰り返して
 1回目の注射からちょうど8週間目の2022年1月7日に再び診察に行きました。診察に行く前から、またゆがみがひどくなってきていることを自覚していましたので、また増殖が始まったのかと思いながら、「注射が必要」と言われるのを覚悟して、主治医の

2021年1月7日に撮影された、私の眼底写真OCT私の眼でも、白くくっきりと膨らんだ増殖の跡が見える。
2022年1月7日に撮影した私のOCT

のお部屋に入りました。主治医から見せていただいて、私のiPhoneで撮影していただいた左の写真、「残念、盛り上がりが出ていました。」そこで、また、1回目と同じように、治療の予約をして、2回目の注射を5日後に受けました。すると、また盛り上がりは、消えました。
 しかし、8週間経つと、また増殖が始まり、3月29日に3回目の注射、そして5月の30日に4回目の注射を受けました。「今度こそは増殖が止まってくれるのでは」と期待しては、残念ということを繰り返し、その間のゆがみがひどくなるのを、自分でも確認できてしまうので、とっても不安になってしまい、「もう増殖は止まらないのではないか」と言うようなことを、何度も主治医に聞きました。「個人差がありますから」と主治医は言われて、「もしあまり効果がなければ、別の薬で試すことも考えましょう」という会話をして、次の予約は、7月22日になりました。


 4 増殖は収束したと判定されて
 5月30日から役8週間後の7月22日が近づいてきても、今まで現れていたような、ゆがみがひどくなることはなくて、見え方にほとんど変化がないように思いました。「これはもしかして望みがあるかも」と思いつつ、診察を受けたところ、写真を見ながら、主治医も「増殖していないですね」と言って、3週間後の8月12日に再度診察ということになりました。

2022年9月2日に撮影されたOCT写真、盛り上がりの再発はなく、増殖の跡が少し残っているという主治医の診断。
2022年9月2日撮影の最新の写真

 この時も、私の見え方にもほとんど変化がなく、画像も変化がありませんでした。そして、次は9月2日に、また検査に行きましたが、左の画像のように、増殖の再発は認められなくて、先生曰く「薬の効果が切れてから、6週間経っても再発が見られないので、増殖は収まった」という判断をされて、次は、増殖が始まる前の2ヶ月から3ヶ月に1度の観察のペースに戻ることになりました。私とてもほっとして、とても嬉しかったです。
 ただ、微妙に前に比べると、暗い所での見えにくさが増しているように思えたり、視力検査では推知が変わっていないのですが、手元で行う細かい作業がしにくかったり、不安の種は尽きないです。

5 眼科医療から離れないことと主治医との信頼関係を大瀬にすること
 私の眼は、右眼で角膜混濁が起こったり、左の眼は、一時眼圧が高くなって、緑内障の心配があったりして、眼科医療から長く離れることは出来なかったし、視覚リハの普及活動という仕事柄、沢山の眼科医の方と知り合い、いろいろと勉強させていただくチャンスがありました。
 そんな中で、私の出会った先生方は、見えにくい方達(ロービジョンのある方達)が、「医者に行っても治らないし」とか、「見えにくくなってきたのも障害の性だから」などという考え方で、眼科医療から離れていくことの問題点を一杯聞かせてくださいました。だから、私は、眼科医療から離れずに、定期的に病院に相談に言っていました。
 今回の病的近視から来る脈絡膜新生血管の増殖についても、通い続けていたから、早期に発見できて、最新の治療を受けることが出来たのだと思っています。
 今見えない・見えにくい方の支援に関わる仕事をしていて、とても残念だと思うことは、社会の一般の人たちが「見えなくなることをひどく恐れている」のに 眼の病気に対する関心が薄く、知識も乏しいことです。みんな年に1回健康診断を受ける人は多いですが、なぜかその中に、眼の健康診断はないです。とっても変だと思っています。

 話しがそれてしまいましたが、見えない・見えにくい状態の私たち、今は治療の方法がないと言われている方達も、眼科医療から離れないで、定期的に眼の状態を検査しに行くことが、とても大切だと、今度の体験で強く確信した次第です。

 自分の体験を残して起きたくて書きました。ここまで付き合っていただきありがとうございました。