はじめに
ちょうど3年前になりますが、私は第5腰椎の圧迫骨折をして、長い距離を歩くことなどが困難になり、激しい腰の痛みにも悩まされて、いくつかの病院でリハビリテーションを受けました。しかし医療保険で受けられるリハビリテーションは、受傷して6ヶ月、その後は介護保険での訪問リハビリを受け、2017年7月からデイサービス施設(リハビリテーションに特化した)に週2回通うようになりました。その施設エバーウォーク両国店では、20分をワンクールとするサーキットトレーニングをおこなっていて、種目の実施の順番は、毎回変わるのですが、それを指導員の方が手書きでホワイトボードに書き出して、利用者は、それを見て自分のする種目のところに移動して運動を行う形を取っていました。
ご承知の通り私はロービジョン(矯正視力右0.02、左0.15、視野障害なし)なので、この手書きの表が見えなくて、種目を移動する度に「私次何をやりますか」「どこに行きますか」と職員の方にしつこく聞いていました。
そして私なりに見えにくさを訴えて、改善をお願いしました。それを施設の管理責任者の理学療法士の方が真剣に受け止めてくださり、職員の方たちと協議して、視覚的な掲示の方法や、プログラムの配置を工夫してくださって、私は、スムーズに移動して、施設での生活を楽しく過ごせるようになりました。
視覚リハ協会高齢視覚リハ分科会(略称)
視覚障害者の7割が高齢者であることは、統計的に良く知られています。そこで、私たち支援の専門家も、高齢視覚障害者の支援の仕方や方法について検討して行く必要があるということは、みんな思っていることなのですが、障害者が65歳を過ぎると、障害者総合支援法のサービスではなく、介護保険でのサービスを受けることが前提になるので、障害者総合支援法の体系の中でサービスを提供して来ていることが多い私たちは、高齢視覚障害者がどんなニーズを持っているかなども、良く知らないのが実情でした。そこで、2年前から視覚障害リハビリテーション協会の中に「高齢視覚障害者リハビリテーション事例研究分科会」を立ち上げて、研究を始めました。その第2回の勉強会で、「一つの前向きな実践事例」として、私の「見えにくい、なんとかしてください」という訴えに対して、改善を試みてくださった施設管理責任者の方との双方からの対談講演を行いました。そのプレゼンテーションをPDFファイルで下記に公開します。
吉野2019第2回勉強会講演資料.pdfをダウンロード
舟越20191019高齢者視覚リハ分科会対談資料.pdfをダウンロード
まとめに変えて
このプレゼンテーションだけでは、充分に対談講演の意図をつかみ取っていただくのは難しいと思うのですが、
1 ロービジョンのある私への配慮から始まった環境改善は、他の利用者にとっても「見やすくなった」「移動の順番がわかりやすくなった」と公表でした。ロービジョンのある人への配慮は、多くの高齢者にも役に立つのだと確信が持てました。
2 なぜ、環境の改善ができたのかというのが、私の大きな疑問でしたが、それは舟越さんのプレゼンの中で書かれています。安全にスムーズに利用者が過ごせるように、問題を解決していく心、「リハビリテーションには、環境の改善が含まれる」という前向きな考え方が全面に出ているように思いました。
3 この改善の素晴らしいところは、エバーウォークの置かれている環境の中で、いろいろと工夫してできるところからやったということだと私は思います。「視覚障害者を受け入れる」などを考える時に、あれもない、これもない、だから受け入れは無理というような考え方は、とても多いと思うのですが、「できるところから工夫」という精神があふれていると思います。それが素晴らしいです。
4 舟越さんは、高齢視覚リハ分科会第2回勉強会の二日にわたるプログラムにずっと参加してくださいました。その中で得たことをエバーウォークの公式ブログで書いておられます。高齢者のリハビリテーション(支援)を考える時に、多職種の相互理解と協力関係の必要性がいわれていますが、今回の試みで、視覚リハ専門家と理学療法士をはじめ、参加してくださったケアマネージャーさんや保健師さんとの相互理解が一歩進んだと確信しました。
エバーウォークの公式ブログ