電動車いすでの旭川トリップエピソード1

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 6月15日と16日に北海道旭川で開催された第19回日本ロービジョン学会に参加するため、昨年9月の高知行き以来久々に電動車いすに乗って遠出をした。LCCでの飛行機の旅については良く知らないけれど、一般の飛行会社での障害者サービスは、たぶん一番整っていると思う。障害者サポートデスクに行けば電動車いすを預けるのも手慣れた手続きで出来る。ただバッテリーの取り扱いは、いろいろとルールがあるらしく、係員が二人がかりでラベルの記載内容を確認して、念入りに書類に記載している。たぶん飛行中の発火の棄権とか、いろいろとあるのだろう。

 私がいつもすごく苦労するのは、目的地に着いてからの交通手段(タクシー)の確保である。今回の旭川への旅でも、そこが大変だった。

折りたたんで足置き等を取り外して小さくなった電動車いす

私の乗っている電動車いすは、折りたたむと車いすとあまり変わらない大きさになる。足置きの部分も取り外すと、少しコツがいるけれど中型タクシー(クラウン型やセドリック型)のトランクにも収納できる。ただ、モーターで動くのだから、重さ4キロのバッテリー込みで32キロとちょっと重い。タクシーの運転手さんは、この頃高齢化しているし、職業柄腰痛を持っている方も多いので、通りで手を上げて、すぐに乗せてくださいというほど簡単にはいかない。特に地方では、小型のタクシーが走っている場合も多いので、気楽に乗せてくださいということが出来ない。

 そういう事情もあって、遠出をする前には、必ず現地調査が欠かせない。その現地とのやりとりをしていて、とても困るのが、電動車いすに対する間違ったイメージが払拭出来ていないことだ。そのイメージというのは、「折りたたみが出来ない」「60キロぐらいあって重い」というようなものだ。私の乗っているこのタイプは、小回りがきいて折りたたんで小さくなるというのが特徴だけれど、発売されてからまだ2年ほどらしく、ほとんど世の中に知られていない。

 旭川では、まず空港からホテルまで乗せてくれるタクシーを予約したくて、旭川空港のインフォメーションセンターに電話をかけた。するとこれはまた、すごく簡単に「シャトルバスに積めますから大丈夫です」という答えが返ってきた。「本当に積めますか」「どんなバスですか」「高い段差があると私登れないんですけど」と具体的に質問をすると、電話口の人は自信をなくしてしまい、「確認します。良く分からないので」となる。そこで私の方は、やはり無理なのだろうと推測してタクシーで何とかならないかと聞いて見る。タクシーの手配に詳しいはずのホテルのベル担当者にも電話をかけて聞いて見る。そのたびに何度も何度も電動車いすの説明を繰り返す。そこで分かったことは、旭川にはクラウン型は2台しか走っていないこと。ほとんど小型のプリウスという車種だと言われた。「プリウスのトランクに積めますかね」と聞かれて、今度は、私の方にプリウスのイメージがないのでどぎまぎ。ただ小型車のトランクは無理だろうなと思って、そう答えた。

 そうこうしている内に、旭川のタクシー協会(正確な名前は忘れてしまった)、つまりタクシー会社の元締めのようなところを紹介してくれて、そこの管理責任者の方とお話をした。「旭川に電動車いすも積めるジャパンタクシーという車種が6台あります。それを所有しているタクシー会社を紹介します」といってくれて、やっと一段落

ホテルの前でジャパンタクシーと一緒に撮った写真
ジャパンタクシーと私

このタクシー、トヨタが作っている大きな荷物や車いすがラクラク積めるタクシー、2020年のオリ・パラまでに東京では沢山増やすらしい。地方でもそろそろ走り始めている。旭川での移動は、ずっとこのジャパンタクシーのお世話になった。このタクシー会社を見つけるまでに、私は電話をかけまくって、1時間半悪戦苦闘した。

 ジャパンタクシーで旭川空港からホテルに行く時、もう一つびっくりすることに出会った。それは出迎えてくれた運転手さんが、後ろのシートをみんな寄せていて、私には助手席に座るように準備していたことだ。「どうしてこんな風にするんですか。折りたたんだら後ろのスペースに入るのに」と聞いたら「電動車いすと聞いたので、折りたためるとは思っていなかった」「やっぱり折りたためるんですね」という。電話で会社の方にしっかり説明したのだけれど、電動車いすの固定的なイメージがとても強かったようで、運転手さん信じられなかったらしいのだ。固定観念というのは、本当に恐ろしいものだ。

 視覚障害者のリハの普及活動をしていて「視覚障害者へのサービスとして役所の方が説明するのは、障害者手帳の取得と白杖の支給、少し気の利いた人だと盲学校に行って点字を習うこと」など、これが視覚障害者に対する一般の人が知っているサービスのイメージ、そこから起こってくる誤解とかを払拭していく難しさをつくづく感じさせられていた。そしてその固定的なイメージを跳ね返すためには、私をはじめ当事者や視覚リハ専門家が積極的に啓発して歩くしかないと思い知った。電動車いすの古いイメージを覆して、もっと普通に扱ってもらうためには、またまた私広告塔になって頑張るしかないのかなと、変な覚悟を決めた次第である。