全盲になって電動車いすを使える可能性があるなんて

 一昨年の10月に第5腰椎の圧迫骨折をしてしまい、その後座骨神経痛等に悩まされて、家の中を伝い歩きするのがやっとだった私は、昨年5月から電動車いすを利用するようになり、その力を借りて気軽に外に出られるようになりました。そして、電車や飛行機を使って、高知に行ったり、盛岡や福島で講演をさせていただいたり、圧迫骨折をする前と同様に活動できるようになりました。

電動車いすで歩道を走行する私

電動車いすで電車に乗って移動する私

杖をついて歩いていた頃の2倍以上のスピードで歩道を動けるようになった爽快感、この私が普通に歩いている人を追い抜くことも出来るなんて、なんとも言えない気分です。とにかくすごく感激していました。

 そんな爽快感の中で、ふと考えたのは、「私はロービジョンだけど0.2ぐらい視力があるし、視野障害もないので、時速4.6㎞で動く車いすを運転出来るけれど、全盲だったり、もっと視力が悪かったら、電動車いすは、危なくて運転出来ないということでした。もっと視力が下がってしまったらどうしようか。それに、全盲やもっと低視力で、しかも一人で歩けない人もいるはずだし、そういう方たちは、誰か車いすを押してくれる人がいないと、自由に外出したり買い物を楽しんだりする、この開放感は味わえないのだろうか。そんなことに気付いてしまいました。

 一度私の頭の中に生まれた疑問を、ずっと持ち続けながら、重複障害はあるけれど「電動車いすを扱えるだけの視力があって良かった、ラッキー」と思って過ごしていました。

 そんな時、日本盲導犬協会の設立50周年記念式典に、電動車いすで行った私は、その疑問を、そこで講演をしておられた盲導犬協会の多和田さんにお話しました。

 そうしたら、すごく当たり前のように「アメリカでは、電動車いすに乗った視覚障害者を盲導犬が誘導することをトレーニングするプログラムがあって、実際にそうやって動いている人のビディオもありますよ」「実は、盲導犬ユーザーだった方が、歩けなくなって困っていて、その人のためにアメリカのプログラムを日本でも試して見ようと思っているんです」「だから、もっと視力が下がっても全盲になっても大丈夫ですよ」と、私にとっては「えっそれホント」というようなお話を聞かせてくださいました。

 この話がとても印象的で、「実際に電動車いすの視覚障害者が盲導犬と一緒に移動しているところの写真とかないですか。是非見たい」とお願いしたところ、アメリカのウイルチェアーガイドドックの訓練プログラムをプレゼンした資料を送って来てくださいました。この資料、私が見ているだけではもったいないので、許可もいただいているので、下記にPDFデータとしてアップしますので、是非みんなに見てもらいたいと思うのです。

  GDB-WHEELCHAIR-GUIDE-DOG-PROGRAM.pdfをダウンロード

 ニーズがあれば、それに応えて、専門家として実践できるようにプログラムを作る、試みる、すごいことだと思います。このチャレンジ精神、私も視覚障害支援の専門家と称するのであれば、忘れてはいけないのだと思いました。