秋田県立盲学校訪問記(6)

私の主観的意見

盲学校は視覚リハ施設として理想的

   「生活情報科」の取り組みを見せていただいて、この取り組みの中に『中途視覚障害者に対するリハビリテーションシステムの一つの理想の形」を見た思いがしました。  まず第一に「生活情報科」は、「生活の質向上」を教育目標に掲げています。すなわち、移動・歩行、日常生活動作、コミュニケーションという視覚障害リハビリテーションの基礎的な部分を、じっくりおこなうことを通して、その後の自分の人生を考えて行く時間を与えてくれるわけです。  しかも、特別支援教育という土壌は、元々個別のニーズに合わせた、一人一人の発達を支援することを第一の特徴としているので、「さあ先生のしているのを見て、まねをしてください」というようなことができない視覚障害という特徴を踏まえ、一人一人違った人生を送ってきた人たちのニーズに即した個別対応が絶対に必要な視覚障害リハビリテーションの考え方とぴったり一致しているわけです。幼稚部から専攻科まで多くの学級の維持と職業教育をおこなうという関係上、今全国的に盲学校には、生徒一人に平均二人の教員が配置されているので、工夫次第でマンツーマンの対応をする人員を確保できる余地があります。  しかも、学級という形をとっているので、同じ中途視覚障害者同士ふれあうことができ、しかも学校という土台の中にありますから、「学生時代に戻った気分で」再出発をはかる、そんな気持ちになれる場所でもあります。

 明治以来、視覚障害児の発達保障と理療科を中心とした職業教育を一手に担い、盲学校で理療科の教育を担った視覚障害のある教員や卒業生の努力により、地域の視覚障害者福祉や文化は向上して来た歴史があり、現在でも視覚障害者ケアの専門的な施設としては盲学校しかない地域もまだ沢山ある中、中途視覚障害者のリハビリテーションにとって盲学校の存在と役割はとても大きいと、秋田県立盲学校の例を見て、私は確信しました。

視覚リハの専門性をどう維持するのか

 中途視覚障害者のリハビリテーションも、ロービジョンケアも、盲学校教諭が持っている専門性とは異なる専門性が要求されます。
 秋田県立盲学校のロービジョン支援センターで、教育的視機能評価をおこなったり、目の活用相談に乗る専門家として期待されている視能訓練士をどのように雇用できるようになったかは、訪問記4で書きました。

 視覚以外の他の感覚をフルに活用して見えない見えにくいことから来る不便を補う専門家、すなわち歩行訓練士と一般に呼ばれている専門技術を持った人材がいないと「生活情報科」は維持できませんが、それをどのようにしているのかと校長先生に尋ねて見ると、生活情報科の開設準備とロービジョン支援センターの立ち上げの準備のために、日本ライトハウスの歩行訓練士の養成コースに、すでに2名の教員を派遣して、その方達が「生活情報科」の中で中心的な役割を果たしているとのことでした。そして今年も一人日本ライトハウスに派遣し、これからも毎年一人の教員を平成29年度まで日本ライトハウスに派遣する予算を確保しているとのことでした。

 基礎的なリハビリテーションを受ける機会がないまま職業的リハビリテーションを受けるために盲学校に入学してくる中途視覚障害者がどんどん増えてくる中で、全国の盲学校は、多くの教員を日本ライトハウスに派遣し「歩行訓練士」の認定資格を取らせる措置をとって来たのですが、この専門性というのが、教員の世界では重視されていないのか、人事異動のために、盲学校を離れてしまうというのが、今の我が国の現状です。
 その異動という問題を見据え、平成29年度まで毎年教員を派遣するという予算を確保した秋田県立盲学校のこの取り組みには、本当に感心するばかりでした。

 ただ、高齢化と重複化の進む視覚障害者への対応は、半年の養成コースを出ただけでは不十分だと思うこと、「学科を教えること」をイメージして教員になった方たちが、「視覚リハ専門家」として、その道を究めて行くための情熱を持って取り組み続けてくださるのかどうか等、私なりの疑問が様々に残りました。

福祉の立場から思ったこと

   秋田県立盲学校の先進的ですばらしい取り組みを見せていただきながら、「もしこの地域で私が福祉の立場から何かするのだったら、何をすべきなのか」とずっと考えていました。  ロービジョン支援センターのカバーする領域は、乳幼児の子育て支援から壮年期までで、サテライト方式で地域へ出て行っての相談もおこなっているので、このシステムと連携して視覚リハをおこなうのだとしたら、まず、在宅訪問型のデリバリーサービスで、主に対象とするのは、高齢期の視覚障害者の「生活の質の向上」に関わる部分と、老人ホームや福祉施設にすでに入所している視覚障害者の「生活の質向上」に関わる部分だろうと思いました。  子育て支援、青年期・壮年期の生活問題などにも福祉として関わったら、もっと手厚いサービスが提供できるだろうと考えました。

 視覚障害当事者の福祉の向上を図るために、今ほとんどの地域ではなにもサービスがない状態ですから、気づいた所で、できる所でやれば良いのだと私は思っています。地域地域によってそこの実情に根ざしたシステムのあり方があると思うのです。ただ、デリバリーでのリハビリテーションや家の中に何年も閉じこもっているような高齢中途視覚障害者のリハビリテーションは、たぶん福祉の側で整えて行かなければならないのだと思いました。
 道のりはとても遠いですが。

 長く書いた割に、訪問して私が感じたことが充分に書けていない気がしますが、とりあえず、これで区切りとしたいと思います。