高等部専攻科生活情報科1
秋田県立盲学校を私が訪問したそもそもの目的は、「盲学校の中に生活の質の向上を目指した中途視覚障害者などのための学科が設立された」と聞いて「どうしてそんなことができたのか」を知りたかったからです。
それなら、いの一番に「生活情報科」のことを書けば良かったのですが、それでは、「なぜこんなユニークな学科を作ろうとしたのか」「なぜその学科が維持できているのか」を、この記事を読んでくださっている方たちに理解していただくことはできないと思って、秋田県立盲学校の理想としていることや、「かがやきの丘」の全体像を書こうとして来ました。
そのようなことをしていたら、こんなに時間がかかってしまい、すっかり世の中秋になってしまいました。
ようやく、外堀を埋めたかなと思い、今日は「生活情報科」のことを書きたいと思います。
PDFファイルで載せた新聞記事は、平成22年度に生活情報科が開設された時のものです。まさに「視覚障害リハビリテーションコース」そのものです。
開設時新聞記事.pdf
生活情報科とは
いただいた「生活情報科の案内パンフレット」によると、この学科の対象は「見えにくくなって家庭生活や社会生活、仕事で不便を感じている人」で「見えにくさを補うための生活技能を身につけたり情報補助機器の扱い方を習得したりして、再び自立した生活を送りたい方」となっています。視覚障害の程度による入学資格については、盲学校の入学資格基準に準じています。
秋田県立盲学校生活情報案内.pdf
学科の定員は5名、入学判定は面接形式でおこなわれます。修業年限は原則1年ですが、必要に応じてもう1年継続して学ぶ事もできます。
授業の内容は、歩行・移動、日常生活動作、コミュニケーションといった視覚障害リハテーションの基本的な内容を学び、それと同時に社会教養など生涯学習の科目もあり、入学してきた生徒一人一人のニーズに合わせて、生徒と指導する先生方が話し合いをして決めて行く形をとっています。授業は、週5日開講されていますが、本人の体調や家事・仕事などの都合に合わせ週3日だけ通うなど、自由度の高い学習計画を作ることができるようになっています。
修了認定は、1年間の成果を評価して校長が終了判定をおこなう形をとっています。
このように大変ユニークな形をとっていますが、入学してきた方は、盲学校に学籍があるので、通学にスクールバスを利用することができ、遠方の方は寄宿舎に入ることもできます。また収入に応じて就学奨励費を受ける事も可能です。
この仕組みを知れば知るほど、「生活情報科」というすばらしい学科を認めた文部科学省の英断に拍手を送りたい気持ちがふつふつとわいて来ます。
「生活情報科」に関する詳しい資料をいただいて来ているので、下記に載せておきます。
生活情報科.pdf
明るく前向きな生徒さんたち
見学スケジュールかタイトだったので、生活情報科の生徒さんとあまりふれあうことはできなかったのですが、「情報」の授業風景と、調理実習の場面を見ることができました。どちらの授業も生徒一人一人のペースに合わせて、マンツーマンで指導がされていました。パソコンの習得を目指した授業では、白黒反転の画面に拡大文字を使用している方、音声ソフトを使っている方など、リハビリテーション施設で見慣れた風景でした。
先生方の計らいで、1日目の給食を生活情報科の方たちと一緒にいただきました。
その日出席していた生徒さんは3人、皆さん私と同じぐらいの年齢の女性だったので、「昔々の小学校の給食が脱脂粉乳だった」という共通の体験で、すっかり打ち解けた雰囲気になりました。
皆さんとても明るくてパワフルでしたが、特に一人の方が、失明に近い状態になって、まだ1年も経っていないのだと伺ってびっくりしました。「眼科の先生から入学を進められて、直ぐ相談に来て入学しました」「はじめは週1日通えるかなと思ったけれど、今ではすっかり学校が楽しくなって、できれば毎日でも来たいと思っています」と話しておられました。
失明状態に近くなって1年目で、眼科の先生に勧められて、と伺い、「医療との連携」のすばらしさを改めて実感しました。
「生活情報科ができて3年目になりますが、入学してくる方は、最初の内は『白い杖の使い方を覚えたい』とか『調理の方法を覚えたい』などと見えない状態を補うための生活技術の習得のことばかり言っていますが、2ヶ月も経つと、『学生時代に戻った見たい』と学校生活を楽しむようになり、生徒会活動やクラブの集まりにも積極的に参加するとようになる」とは担当の先生の話です。
学科修了後は、家庭に復帰したり、自営業に戻ったりする方と、高等部や専攻科の保健理療科に進み、免許取得を目指す方も出て来ているとの事でした。
さて、ブログの一つの記事としては、ずいぶん長くなってしまいましたし、私も書き疲れて来ましたので、この生活情報科を成り立たせている専門家のことや、私の思いなどは、次の記事で書かせていただきます。(つづく)