秋田県立盲学校訪問記(4)

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外部専門家活用術

 「光陰矢のごとし」昔の人は良く言ったもので、本当に毎日が飛ぶように過ぎて行ってしまいます。前回「訪問記3」を書いてから1週間も経ってしまいました。

 今回は、視能訓練士(ORT)や理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)等、教職員ではない外部専門家を、秋田県立盲学校がどのように利用しているのかについて、フォーカスします。
 盲学校からいただいた外部専門家の活用についての資料は下記からダウンロードできます。参考にしてください。
外部専門家の活用.pdf

「総合支援エリア」の利点はソフト面でもとても大きかった

 「訪問記1」で、盲・聾・肢体不自由児の3校と医療療育センターを1地域に集めた利点、共有できるハードを共有し尽くすことで、その分財政的な負担を減らし、最新式の設備を維持することができるということを書きましたが、この「共有」の利点は、ソフト面(教職員以外の専門家の活用)ということにおいても、威力を発揮していました。
 
 特別支援教育は、今どの分野でも、重度化・重複化が進んでいます。口から充分に食べられない児童が経管栄養の管をつけたまま登校したり、呼吸器を装着していたりで、看護師さんや医師の見守りが必要だったり、姿勢保持や、適切な機器を選ぶためにPTやOTの助言を得なければならないというようなことは、ごく普通のことになって来ています。
 少し話がそれてしまいますが、きらり特別支援学校に通学している重度の児童・生徒で常に医療的なケアが必要なものは医療療育センターに入院して、そこから通学しています。従って、寄宿舎は盲学校・聾学校にだけあります。 
 
 所でまだあまり一般には知られていないのですが、聴覚障害児、肢体不自由児、知的障害児の多くが、視覚認知の障害を持っているといわれています。
 これら多様な状態の児童・生徒の発達を保障するためには、医療分野の専門家の助けが必要になりますが、それらの専門家をそれぞれの学校で雇用するのは、財政的になかなか難しいです。

 「専門家活用」の資料を見ていただければ分かるように、医療療育センターが隣接している事で、PT、OT、STに関しては、医療療育センターの職員を必要に応じて3校で活用してし、盲学校の嘱託職員として雇用している視能訓練士も必要に応じて3校で調整しながら活用しているのです。

視機能評価の専門家として期待される視能訓練士の存在

 中村校長は、ロービジョン児(者)の教育に本腰を入れ、またロービジョン支援センターを立ち上げるにあたって、「見え方を評価することのできる専門家」の存在が絶対に必要であると考えられて、いろいろと探して、眼科の先生にも相談して、視能訓練士を盲学校の職員として雇用することを決めたとのことでした。

 「視能訓練士は法的には医師の指示の元に検査等をおこなうことになっていますから、医師のいない盲学校での仕事をおこなう上で問題にならないのですか」と私は率直に訪ねて見ました。
 「まず、学校でおこなうのは、あくまで教育的視機能評価で、疾患名の診断のための検査ではないということを、眼科医会にも良く説明して、理解を得ています」との答えが帰ってきました。

 最初の内は、盲学校が主な活動でしたが、その内にきらり特別支援学校の肢体不自由児の視機能評価についても、多くの相談が入るようになり、現在の週3日の勤務では、時間が全然足りなくなって来ているとのことで、勤務日数をもっと増やす方向を模索していると言うことでした。

 「常勤職員として勤務するというのはどうですか」と視能訓練士の方に伺った所、盲学校に来ない日は、秋田大学の眼科で仕事をしていて、大学と盲学校という二つのポストに努めているから、教育と医療の連携の橋渡しができるということと、大学病院にいると言うことで、最先端の医療情報を常に知ることができるメリットがあるので、「盲学校の常勤職員になる」ことが、必ずしも良いとは言えないとの答えが戻って来ました。

 公務員という立場と、専門職として臨床経験を積むために、あちこちに顔を出せる自由度の高い身分を維持するということは、現在の制度では、なかなか難しいのだと、改めて考えさせられました。

 視覚障害リハに関わる専門職についての私の考えは、この訪問記の最後に、少しまとめて書きたいと思っています。
 この回はここまでにしておきたいと思います。