東京の視覚障害リハビリサービスに携わっている方たちを訪問して、その現状から学び、高知という現場を離れて東京に戻って来た私に、今何ができるのか考えようと言う計画、次に訪問させていただいたのは、「社会福祉法人武蔵野生活リハビリサポートすばる」で「視覚障害者生活支援員」をしておられる箭田さんの所。
訪問した7月20日(金)は、梅雨が明けたというのにあいにくの雨模様で、猛暑から一転5月はじめの気温。猛暑よりは楽だけれど、こんなに激しい季候の変化には体がついていってくれない。
1 武蔵野市の視覚障害リハはどのようにして根付いたのか
武蔵野市で相談と訪問による視覚障害リハが根付いているということを、私は10年以上前から聞いていた。「どうしてそのようなことができたんだろう」「視覚障害者にサービスを提供している担当者はどういう身分の人だろう」と言う疑問を、ずっと持っていたので、まずそのことを話題にさせてもらった。
このサービスは、地元でずっと眼科医をしていらした原田住江先生が、武蔵野市の議会に「視覚障害リハが必要」という陳情をおこなって、市議会がその陳情を取り上げてニーズ調査をおこない、平成6年にその必要性が認められて、平成8年に事業が予算化され、同年6月から、まず市役所の障害福祉の中でサービスが開始されたのだとのこと。
「良く市議会で陳情が認められましたよね」との質問に対して箭田さん曰く「原田先生は地域で地道に活動をされていた方だからではないでしょうか」と
話はそれてしまうけれど、原田先生は、眼科医院は閉じてしまったけれど、元気で暮らしておられるとのことで、「話を聞きたかったら聞けますよ」といわれ、その内是非お話を伺いに行きたいと私は思っている。
さて、この事業の発足当時から担当している箭田さんは、平成6年に国リハ学院の視覚障害学科を卒業し、予算化と同時に嘱託として武蔵野市に入り、現在に至っている。
平成22年に、社会福祉法人武蔵野に事業が移管されて、箭田さんの身分は、市の嘱託職員から、法人の嘱託職員へと変わっているが、残念ながら正規雇用になってはいない。
2 サービス内容について
武蔵野市の人口は、13万人で、視覚障害の手帳所持者は、約280人程度で、相談支援に関しては、武蔵野市に住民票のある視覚障害者という以外には制限がない。自立支援法に基づく「自立訓練」については、法律に基づき、手帳の所持と利用の適否の調査を受けなければならない。
また、社会福祉法人武蔵野は、障害者支援の他高齢者に対する様々なサービスも提供している。視覚障害のある方も、箭田さんの基礎的な相談・指導を受けた後、希望があれば、他の障害者の方たちと一緒に、「社会福祉法人武蔵野」が提供する様々なサービスを利用することが可能である。
社会福祉法人武蔵野については、下記ホームページ参照
http://fuku-musashino.or.jp/
視覚障害支援の中身は、相談・支援と歩行・コミュニケーション・日常生活動作の訓練などである。(また、毎週点字教室も登録制で開催されており、月に1度のペースで、視覚障害者の集まり「サロン」をおこなっているとのことであった。
その他、箭田さんの業務の中に大きなウエイトを占めているのが、同行援護やホームヘルパー養成などの各種講習会の講師、公共建物のバリアフリー化に関する会議などへの出席である。
社会福祉法人武蔵野は、総合的なサービス提供をおこなっているので、視覚障害に関わる部分の様々な研修の講師の役割が箭田さんの所に回ってくるようである。
「視覚障害関係の講習などでは、私が担当するのは武蔵野では当たり前になっているけれど、こういった職員がいない所はどうしているのかしら」という箭田さんの言葉が表すほど、現在の武蔵野市では、視覚障害者生活支援員という視覚障害に関わる専門職がいると言うことが当たり前になっているようだ。
3 反省と感想
(1)まず、感想であるが、「すばる」は武蔵野市障害者福祉センターの中に事務所を置いて活動をしていて、聴覚障害者に関するサービス以外は、ほぼすべての障害に対応しており、PT・OT等の専門職もそろっているので、視覚障害と他の障害を併せ持つ方や、視覚障害のために運動不足となり体力低下を来してしまっている方たちにが、理学療法や、作業療法など多方面のサービスを受けることができること。このサービスを受けている方たちが、必要であれば、いつでも視覚障害専門家としての箭田さんの協力を得られることが、とても大きな利点であると思った。
箭田さんは、嘱託という身分ではあるが、16年にわたり、視覚障害者の支援専任で臨床経験を積んで来られている。しかも、現在周りには、各種の専門家がいて、協力体制を作ることができる。一方では、PTやOT等も、視覚障害について、困った時、箭田さんという専門家のアドバイスを受けることができる。この体制、高齢視覚障害者と重複の視覚障害者が増加の一途をたどっている現在の視覚障害リハには絶対に必要なことだと考えた。
(2)反省点について
箭田さんとお話していて、最初に「原田先生の陳情の話」を聞いてしまい、「今視覚 障害リハのサービスが存在していない多くの区市町村にサービスを新しく作るのには、 こんな手もあったな」ということに、気をとられてしまった。
また「原田先生に話が聞けるかも」とか「日常生活訓練研究会はまだつづいていますよ」などの箭田さんのお話で、「視覚リハの普及をしたい」「視覚リハ普及の歴史的過程を知りたい」という自分の興味に火がついてしまって、肝心の武蔵野市の今の視覚障害者に対するサービスについて、詳しく把握することや、箭田さんの現在のお仕事の現状をもっと掘り下げてお話を聞くことがおろそかになっていたように思う。
事業概要をいただいてくることも忘れてしまう状態であった。
せっかく貴重な時間なのに、話を聞くより私がしゃべりすぎたことも反省点であった。
反省点は多々あるのだけれど、箭田さんとの出会いの中で、私のやりたい事・興味はやはり「視覚障害リハの普及、システムを新しく作る方法の探求」なのだということが、はっきり分かって来たように思う。
最後になりましたが、箭田さん、それから「すばる」でお話を聞かせてくださった皆さん、ありがとうございました。