二人の先天全盲の友人と会席料理を食べて酒を飲んで

  昨日、私の盲学校時代の友人が、久々に東京に来ると言うので、もう一人の友人と3人で、「ゆっくり四方山話をしながらおいしい料理を食べよう」と言う事になった。
  実は、この二人の友人は、先天に近い時期に失明した全盲で、私だけがロービジョンと言う事で、少し見えている私が、案内しやすい店を選ぶことになっていた。

  一人はヘビースモーカー、酒を飲んで話が弾むと、結構でかい声を張り上げる人たちで、二人の注文が「静かでとにかくゆっくり話せる所」と言う事だった。
  そこで、まず個室を予約して、料理の種類は、一品ずつ、それぞれの器に入って運ばれてくる「懐石料理」と言う事に決めた。少々お値段が張るけれど、3人ともそのぐらいの贅沢はできる年だろうと判断した。

  会席料理なら、中華料理や鍋のように、一人一人に取り分ける必要もないし、個室なら静かで、周りに気を遣う必要もないし、「喫煙オーケー」の部屋を選べば良いので、問題すべて解決である。

  その店、料理を運んでくれる仲居さんのセンスも良くて、お刺身などのわさびは、間違って食べてしまわないように別のお皿に取り分けて来てくれたり、料理を置く位置もきちんと説明してくれたりで、みんなとてもリラックスして、昔話に花を咲かせることでできた。

  ただ、見えている私としてちょっと物足りなく感じたのは、秋の会席料理の、器と料理の色の美しさの話ができなかった事。
  以前、この同じ店に、40を過ぎてから失明した友人と来た時には、「器は薄い青色で、そこに盛りつけてある柿の柿色の調和がきれい」とか言うと、その人、とてもうれしそうに聞いてくれたのだが、昨日の二人は、色の話にはほとんど興味を示してくれなかった。
  何十年ぶりかで会った友人同士、話したい事が山ほどあって、料理の色の事など、どうでも良かったのだと私も思うから、決して全盲だから色の事興味がないのだとか、そんな風に簡単に決めつける気はないけれど、それでも何となく寂しいなと思う私がいた。。

  料理はおいしかったし、お酒もおいしかったし、すごく豊かな時間を過ごしたけれど、ちょっぴり贅沢な事も言ってみたくなったのだ。