同行援護の導入の混乱の中で思う事

  皆さんもご存じのように、10月1日から視覚障害者の移動をサポートする新しいサービスとして「同行援護」が導入された。
  これは、今まで「地域支援事業」と位置づけられていたガイドヘルパー派遣事業を、「自立支援給付」として位置づけたものである。本来であれば、この新事業についての詳細は、4月に決定されて地方自治体に説明され、そして充分な準備期間を取って実施されるはずであったが、東日本大震災の勃発のため、事業の詳細にわたる決定が遅れて、各自治体には、9月半ば過ぎに詳細が説明されると言う状況になった。

 そんな関係で、実施にあたる各自治体も詳細が良く分からず、サービス提供を行う事業所に対する説明も十分できず、あちこちで様々な混乱が起こっていると聞いている。

  「地域支援事業」として、自治体の規定に従ってガイドヘルパー派遣を行っていた所で、条件が良く整っていた所では、「地域支援事業」から「同行援護」に移行すると、ガイドヘルパー派遣の単価が、今までより800円近くも下がってしまうと言うところがあったり、同行援護の事業所指定を取るために、サービス提供責任者の資格要件が難しくなったとか、ガイドヘルパーの講習時間が増えるから、職員を派遣できないとか、様々な理由で、「同行援護」の事業所に移行しないと言うところが多いようで、その事を、サービスを利用している当事者に直にぶつけてくる事業者がいるらしい。

  そんな中「今まで利用していた事業所が使えなくなるから、外出できなくなる」「生活が成り立たない」などの不安に襲われて、不眠症になったり、鬱状態になったりする中途視覚障害の方も出て来ているなどの事も聞こえてくる。

  同行援護の導入は、二つの意味で画期的な事である。
  一つは、視覚障害者への移動支援が介護ではなくて、情報支援であると言う事を国に認めさせた事である。視覚障害の本質は情報障害で、移動も情報の欠如によってできないのだから、情報を提供する事で、移動ができるようにする、また外出先での書類の読み書きについて代読代筆を認めると言う、視覚障害と言う障害の特性に合った専門的サービスを確立したと言う意義があり、介護ではないと言う考え方の元に、「介護保険優先」ではない障害者独自のサービスとして、サービスが確立された事である。

 第二の意義は、「地域支援事業」だと地域の裁量で行うので、サービスが提供されていない地域とか、低水準でしか提供されていない地域があり、地域格差があるが、「同行援護」は、自立支援給付で、国の一律のサービス基準で行われるのだから、全国どこででもガイドヘルパーのサービスが受けられるようになると言う点である。

 この制度、このような利点があるのだが、今まで「地域支援事業」でサービスが充実していた所では、前記したように単価の引き下げなどの事が出て来てしまい、「同行援護」のサービスを行わないなどと言う事業者が出て、結果的に利用者に負担が跳ね返ってくることになったりする。

 そんなわけで、「今までの制度の方が良かった」などと言う意見も当然に出て来る。特に今まで良いサービスを受けていた所で、そのような動きが出て来るように思う。

  移動支援と言う一つのエリアで起こった、この変化に対しての、この混乱と言うのを見ていると、これから先障害のある人の権利条約批准をめざして、障害者福祉の隅々まで、大変革を起こしていく中で、どんな混乱が起こるのだろうと心配になってしまう。
  理念において、障害認定の基準が医学的モデルから社会的モデルに大転換することは、大きな異議があるが、今まで医学的モデルを基準とした「障害者手帳制度」の中で、既得権を得ていた障害当事者が、この新しい考え方をどう理解するかと言うのが、ひどく心配なのである。

  我が国の財政状態はどんどん厳しくなって行く、その中で、建前上は新しい考え方を取り入れるように見える国も、あらゆる所で、既存の考え方にしがみつきたいのだと思う。それと対峙して行く障害当事者の私たちは、よほどしっかりと周りを見回して、今何が起こっているのか、きちんと見ていけないと、「前の方が良かった」などと言う事で、革命的な大転換の時期を逃してしまうのではないのかと思う。

 もっと分かりやすく、私の言いたいことを書きたかったけれど、まだだめだね。文章堅くて。分かりづらいよね。
  言いたいことは一言、「今までの方が良かった」と言って既得権にしがみついているような運動をしていたら、これからの障害者福祉サービスは、ちっとも良くならないと言う事。
 もっとほぐして書けるように、またがんばります。