写真は左からポスター、ポスターの前に立っている私、ポスター会場風景
今年の2月に岐阜で開催された全国視覚障害児早期教育研究会で「高知の視覚障害リハビリテーションの現状」を報告したところ、「今年の重心学会は高知で開催されるのですが、多くの重症心身障害児(者)が視覚障害を合併しているのに、視覚障害についての発表がない。何か発表してくれませんか」と重症心身障害学会の会員の方に声をかけられた。
私の持っている知識では、重症心身障害学会は小児科や小児神経科の先生が中心になっている学会で、私が発表する余地はないと思ったし、合同学会から1週間もないので発表することをためらったのだが、「視覚からのケアの発表がほとんどないんです」というその方の言葉が印象に残って、視覚障害を理解してもらったり、簡単な視機能評価のことを啓発的にポスターにすることにした。
どうせ啓発するのなら県の障害福祉課に協力してもらって盲学校にある「視覚障害者用の常設機器展示室」にある機器も展示することにした。
(写真は機器展示風景)
大会長に「視覚障害者用の機器展示もしたいのですが」とお話しすると、最初は「そんなもの展示してもみんな意味も分からないと思いますよ」といわれたが、とても前向きに考えてくださった。
私も重心学会では視覚障害のことなんてみんな興味など持たないだろうと思っていたので、機器展示に協力を依頼した視覚障害者生活訓練指導員や盲学校の教育相談の先生には「1人でも2人でも見てくれたら良いと思ってきてください」といっていたしポスターの説明用資料も50部印刷しながら「10部配れれば良い方かな」と思っていた。
初日の午前10時半から1時間が私のポスター討論の時間だった。メインホールと第二会場では一般講演などのプログラムが同時開催なのでポスター会場には大して人も入らないだろうとも思っていた。
所が私の代わりにポスターを貼りにいってくれた人から「作業中に5人ぐらいから『これ大切なことですよね』と声をかけられた」と聞いてまずびっくりした。
ポスター会場に行くと、きている人達はメモやカメラを片手に、ポスターを一つ一つ本当に眺め回すようにじっくり見て、発表者との討論も真剣そのものだった。
私の所にも、1時間で10名以上の人が来てくれて、ロービジョンの見え方の話や視機能評価のことについていろいろと質問をされた。
ポスターを見てくれた人達には、「メイン会場の前で機器展示もしている」と説明してそちらにも行ってもらうことにことにした。
二日間の参加者が420人で、そのうち機器展示を見て話を聞いてくれた人は80名ぐらい。予想以上の反響に驚いた。
ある脳神経が専門というドクターの方が、「ちょっとしたことですぐ暴れる問題の子がいて、鎮静剤を投与して収めていたんだけれど、よくよく原因を調べたら、見えている範囲が狭くて、突然何かが動いたり人の顔が見えたりするのが怖くて暴れていたらしい」ということが分かって「薬なんか出す必要はなかった、視覚障害に配慮すれば良かった」ととても反省している云々と話していかれた。
「こういう情報を手に入れられただけでこの学会に来た意味があった」と喜んでくれた施設職員の方もいたし、 「視機能評価、あなたたち本当にやっているの、できるの」と疑問を投げかけて行く人もいた。
何人かが「視覚障害についての配慮をしなければいけないと思って気になっていたが、どうしたら良いのか、どこで情報が得られるのか分からなかったからそのままになっていた」と話しておられた。
そんな言葉を聞きながら、反響の良さに気をよくしている場合ではなくて、もっと情報発信して行く必要があると痛感させられたのである。