サイトワールドに参加して

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サイトワールド展示会場風景
 (写真は、11月2日のサイトワールド展示会場風景)

  2006年11月2日から3日間、東京の墨田産業会館サンライズホールで、「サイトワールド」という視覚障害者向けのイベントが開催されると聞き、私は、向学のために参加することにした。

  「世界初の視覚障害者向けイベント」と案内チラシの上に書いてあったが、あまりピントこなかったし、たいした期待もなく、11月2日の開場間際に産業会館のエレベーターの所に行った。
  そこには、どこからこんなに集まってきたのだろうと思うほどの視覚障害当事者と、ガイドをする人たちがいて、私は、度肝を抜かれてしまった。
  展示会場は、上の写真のごとくごった返し、クーラーが効かないほどの熱気でむんむんしていた。出展業者・団体は、38。拡大読書器・音声パソコンソフト・ロービジョン用グッズ、点字プリンターなど、まさに視覚障害者の機器の見本市といった感じで、どのブースにも人が群がり、ゆっくり話もできない状態であった。

  展示会場の上の階では、学会・音楽演奏・講演会・音声解説付き映画の上映などの多彩なプログラムが行われていた。

  とにかく視覚障害当事者の数が多いのにびっくりした。主催者のお話では、3日間に配る予定でつくった500部の点字プログラムが、初日の午後3時には完売していて、どうやって増刷しようかと大騒ぎ。どうも関東一円から当事者が集まっているようで、地域の盲人会がバスを仕立てて、団体で来ている様子も伺えた。

  良く見ていると当事者の方たちは、中高年の方が多く、幼い頃からの視覚障害者で、ロービジョンというよりも全盲に近い方たちが多いように思われた。

  とにかく、この動員力には感動し、機器の説明を受ける人たちの熱気にも感動したのだが、何か強い違和感を感じ、今日までそれがぬぐえないでいるのである。
  このすばらしい動員力、展示物の多さと新しさ、この熱気、どれをとってもさすがだと思うのだが、それでもどうしても釈然としない。なぜだろう!!

  今でも、その違和感の原因が全部分かった訳ではないが、今一つだけいえるのは、会場にいる方たちが、本当に視覚障害者の世界の関係者ばかりで、とても閉ざされた世界だと感じたからだろうということである。
  主催者の方たちのねらいの一つは、一般の方たちへの啓発ということなのだと伺った。第1日目の風景を見る限り、その点においては、成功だったとはいえないのではないだろうか。

  高知の片田舎で、視覚障害者の福祉やリハビリ活動を行っていて思うことは、高齢の中途視覚障害者が多いことだ。その人たちは、自分から行動したり情報を入手する力が弱い。このサイトワールドに来ている視覚障害者の方たちとは、随分層が違う。自分で動いて情報を入手できず孤立している人たちに情報を届けようとするなら、地域の保健師や、ホームヘルパーや、病院・施設の職員の方たちを介するしかないと私は思っている。
  サイトワールドでは、そういう他分野の専門家がいなかった気がする。

  もちろん視覚障害当事者向けのこのような会を行う意義はとても大きいだろうし、東京などの都会でなければできないことだと思う。けれど、3日の会の内、1日ぐらいは、いわゆる視覚障害のことを何も知らない人たちに向けて、もっと開かれた催しにして欲しいと切に願う次第である。

  サイトワールドを企画なさった実行委員の方たちは、近々反省会を行うと伺っている。どうぞ、古い視覚障害の世界だけを対象にしないで、もう少し違う状況、違う対象のことも見ていただきたいと望む次第である。