朝の9時頃、母の入院先の看護師さんから電話がありました。「母が朝6時ぐらいから、娘を呼んで欲しいと言い続けているので、来ていただけませんか」とのこと。
ちょうどタイミングが良く、今日は大学での授業が午後からだし、母は、最近午前中にリハビリで車いすに乗っているらしいのだが、私は、まだその姿を見たことがないので、それも見たくて、病院に直行することにしました。
午前10時過ぎに病院に着くと、ちょうどリハの担当者と看護師さんが、母をベットから車いすにうつしている所でした。
今86歳の母は、16年ほど前に骨粗鬆症になり、現在は、ほんのちょっとした刺激でも骨が折れる可能性があるとのこと、ベッドから車いすに移す時などは、リハ担当者と看護師さんと二人がかりで、まさに壊れ物を扱っているような感じです。
4ヶ月ほど前に、大腿骨を骨折して、寝たきり状態、鼻腔栄養になった母が、この介護療養病棟にうつって60日足らず、スタッフの皆さんの協力で、リクライニング式の車いすに座って、2階のリハビリ室に移動して、窓から空を眺めたり、時には中庭に出たりできるようになり、言語療法士さんと嚥下の訓練をして、毎日少しずつゼリーが食べられるようになって、暗く険しかった母の表情が、日々明るく穏やかになって、笑顔も沢山出るようになって来ました。
母がここまでに回復できたのは、看護師さん・リハの方たち、そして介護を担当する方たちがそろっている病院の介護療養病棟だからです。つまり、母のような状態の高齢者には、介護だけでなく、医療スタッフが深く関わらないと、質の高いケアは、保障できないのです。
それなのに、昨今の医療制度改革の中では、介護療養病棟など、医療型の療養病棟は減らすか、完全に廃止するという方針が打ち出されています。現在介護療養病棟に入っている高齢者の方たちは、老人保健施設・ケアハウス・特別養護老人ホームの数を増やして、そこに移すとか、在宅の方向にもっていくというのです。
老人保健施設も、ケアハウスも、そして特別養護老人ホームにも、看護師さんなど医療スタッフが充実していないので、母のように医療的なニーズの高い人たちは、そこで暮らすことは、ほとんど不可能に近いでしょう。介護療養病棟に、今入院している高齢者の多くは、医療的ケアが必要な人たちです。
いったい、厚生労働省の人たちは、何を見ているのでしょうか。
母の笑顔を見ながら、私は、とてもうれしい反面、先のことを思うと、不安になって来るのでした。