視覚障害早期教育研究会に参加して

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この記事は、2006年3月2日(木)に点字毎日に登載されたもの

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(ワークショップ風景)

 == 寄稿 ==
          「早期教育研究会に参加して」

  北海道立旭川盲学校で去る2月4日・5日の二日間にわたって開催された第7回視覚障害早期教育研究会の最初のプログラムは、現北海道立特殊教育センター所長で、旭川盲学校長や函館盲学校長を歴任された鈴木重男先生の「視覚障害児の言語発達について」と題する講演であった。目の前のスクリーンに、手と足だけでなく頭も床にすりつけながら探索行動をしている3歳ぐらいの全盲で軽度の知的障害を併せ持つ児童に、鈴木先生が働きかけ、そのこが単独歩行ができるようになるまでの変化を写したビディオが流される中、「手を目にするために、とにかく2本の足で立って歩けるようにすること。まっすぐに立てば体の軸が決まり、自由になった手で探索行動を行うことができる」「それが点字指導の基礎」と、先生は話され、そして盲学校教育の責務は、「重複障害がどんなに重いこどもにも、点字を触読できる能力を身につけさせることを目指すこと」であり、「『このこにはその能力がない』というのは教師の指導力不足、このような指導否定を許さない風土を盲学校に造り出す必要がある」こと。視覚障害児に対する教育の効果を高めるためには、「寄宿舎を最大限に活用した学習指導の徹底と基礎的な生活習慣を身につけさせることが第一」と強調された。「点字の触読能力を身につけさせるなどの目標をたて、寄宿舎と連携して専門的な指導を行えばこどもが伸び、こどもが伸びれば親たちも盲学校の専門性を認め、盲学校は選ばれるようになる」というのが鈴木先生の主張なのだと私は聞き取った。

 2月5日の午前には、旭川肢体不自由児総合療育センターの訓練課長で作業療法士の金田実先生を講師として「感覚認知から見た学習基礎能力の発達ー視覚障害児への応用についてー」と題するワークショップが行われた。ここでは、視覚を利用できないこどもたちの感覚認知がどのように発達するかが分かりやすく述べられ、その上で、知的障害や脳性マヒなどの障害を併せ持つこどもたちの感覚認知がどう阻害されるかを参加者が体感し、盲学校でも行うことのできる解決の手段も学ぶことができた。

 増える重複障害児への対応と資源の有効活用という観点から特別支援教育体制の基、各県の実情に合わせて盲・ろう・養護学校の障害別の枠を取り払い「総合養護学校」にしても良いという規制緩和ともとれる現状の中、私は、「視覚障害児教育の砦」としての盲学校は残しておかなければならないと主張してきたのであるが、その守るべき「視覚障害児教育の根幹をなす専門性」とは何かについて、実ははっきりとつかめていなかったのであるが、「手を目にすること(視覚を利用できない人達に視覚以外のあらゆる感覚を使って探索し、外界を認知する能力をつけること)また、ロービジョンの人達には使える視覚と他の感覚を最大限に利用し外界を認知する能力をつけること」であることが確信できたのである。参加者みんなが、「盲学校の危機」を真剣に心配し、「視覚障害教育の専門性とは何か」を追求した熱い熱い二日間は、あっという間にすぎてしまった。この研究会は、毎年2月の第一集の土日に開かれており、来年は岐阜盲学校で、2月3日と4日に開催されるとのこと。「次なる収穫」を期待して、また参加して見たいと考えている私である。