ルミエールプラン事業に関わる二つの職員提案の全文記事

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 2000年と2004年に提案した高知県職員提案の全文

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 2000年の職員提案2.docをダウンロード  

 5004年 視覚障害者自立支援事業に関する提案.docをダウンロード

 2000年の職員提案全文

ルミエール(フランス語の光)プランの提案

  ー福祉・教育の枠を乗り越え、高知県の視覚障害者の生活の質向上をはかる事業ー 

                      高知女子大学社会福祉学部 吉野由美子

                   

 1 提案理由 

  高知県には、現在4千人を超える視覚障害者が暮らしておられるが、その7割が、65才以上の高齢視覚障害者で、人生半ばで視覚障害者となった中途視覚障害者が、全体の8割以上を占めている。視覚障害者への教育・福祉サービスは、従来幼い頃に障害者となった人たちに適したシステムであったため、急速な高齢化と中途視覚障害者の増加に対応出来ない状態である。そのため、中途視覚障害者は、生活の維持・歩行・生活訓練などの基礎的リハビリテーションサービスを充分受けない状態で、職業自立を目指して盲学校に入学することが多く、又、糖尿病などを原因とする障害者は、腎臓透析などの重複的な様々な障害をもっていることが多いため、従来通りの教育的なアプローチだけでは、充分な成果を望むことは出来ない。一方、県が福祉サイドから行っている「視覚障害者生活相談・訓練事業」は、この1年徐々に充実してきているが、ハード、ソフト面とも決定的に不足している状態である。

 この状態を打開するため、盲学校の豊富なハードと教育実践から出た視覚障害者に対する指導技術と福祉サイドのもっている、様々な福祉サービス、生活相談や歩行訓練、日常生活訓練などのノーハウを有機的に合体させることによって、高知県在住の視覚障害者の生活の質を大幅に向上出来ると考える。

 2 事業の達成目標

 視覚障害者、家族、その方たちに関わる保健婦、看護婦、介護支援センター職員などが、福祉の窓口、教育の窓口など、どの窓口からアプローチしても、必要な情報が提供され、満足のいく適切なサービスを受けられるようなネットワークを造ることを最終目標として、本事業は、その第1段階とし、下記の事業を実施する課程で、異職種の方たちが相互に充分な情報交換と理解が出来ることを目標とする。

  3 事業の内容

     (1)盲学校の一般に開放可能な開き教室を利用し、本プランで購入する拡大読書機、弱視用レンズなど、光学的機器をはじめ、視覚障害者用の便利なグッズを展示し、県の視覚障害者、家族 関係者が自由に閲覧・試用出来るようにする。又、高知市が障害者福祉センターに購入展示予定の、視覚障害者用コンビューターセットなどは、県が依頼して市外在住の視覚障害者も閲覧・試用出来るようにする。

    (2)盲学校の解放可能な教室や本プランで購入した機器類を活用し、盲学校教員・視覚障害者生活訓練指導員・研究者などを講師とし、保健婦、看護婦、ホームヘルパー、介護支援センター職員など、視覚障害者と出会う専門家を対象に、視覚障害者への理解を深め、処遇技術などを紹介する講座を開催する。

    (3)本年度、療育福祉センターで行った視覚障害者巡回相談事業を拡大し、障害福祉課、障害     児教育室・盲学校教員、視覚障害者生活訓練指導員、研究者等が(2)の機器類をバスに乗せて、県内の遠隔地、中山間地区など、高知市に出て来にくい所に、年3-4回出張し、視覚障害者の出前相談、専門家に対する出前講座を開催する。

    (4)視覚障害者に対する自立支援事業先進地域から講師を招き、講演会を開催する。

  (5)上記4つの事業などを円滑に進め、相互理解を深めるため、県障害福祉課に調整役をお願いして、連絡会議(事例研究会のような形式張らない会議)を開催する。

        会の構成は、県障害児教育室・障害福祉課・療育福祉センター・盲学校教員・弱視学級担任・視覚障害者生活訓練指導員・保健婦など・研究者(吉野)などとする。

 

  4 視覚障害者生活訓練指導員の人件費を県で一人分保障すること

 上記プランを円滑に運営し、充実したものにするためには、視覚障害者のリハビリテーション専門家である「視覚障害者生活訓練指導員」が、高い専門性を発揮し、教員や他の専門職と対等な立場にあること、当プランに充分な時間がさけることが必要不可欠の条件であるので、県は、「視覚障害者生活相談・訓練事業」内容を拡大し、「遠隔地巡回相談」「啓発活動(2年後に迫った、全国障害者スポーツ大会のサポーター、ボランティアの養成も重要となる)」などの要素も加え、視覚障害者生活訓練指導員を専門家としての身分保障のもとに、一人分の人件費を保障するべきである。 

 5 必要費用について

  • 拡大読書機など視覚障害者用用具購入費 100万(拡大読書機4種類、遮光用レンズ・拡大  レンズなどで専門的フィッティングを必要としないもの10万程度、電子調理器具など)
  • (備品購入に関しては、スクールプランニング事業や、高知市が行っている視覚障害者生活訓練   事業によるコンピューター機器などと重複しないものを購入することを基本とする)
  • 講演会のための講師の旅費と報償費(2回開催することとして)25万
  • 「視覚障害者生活相談・訓練事業」の事業拡大と視覚障害者生活訓練指導員への事業委託費(一人分の人件費)額面月20万円と考えて、年間400万
  • 遠隔地と中山間への出前相談・講座の開催事業については、バス(ワゴン車)等の使用や、職員旅費、その他について、県が所有しているものを最大限に利用して行いたい(予算の仕組みについて把握していないので、額の見積もりについては、専門家の知恵をお借りしたい)。

                                                 計600万程度 

 

 【補足説明】

 このような補足説明を付記することは、ルール違反かとも思ったが、障害者教育・福祉関係のことは、一般になかなか理解しにくい部分が多いと思われるので、下記のような補足説明をさせていただきたいと考える。 

 事業内容(1)と(2)に対する補足説明

  • 盲学校を会場に展示品をおいたり講座を行う効果について

  例1 介護支援センターの職員が、視覚障害についての研修のため、初めて盲学校を見学した際、盲学校に飾ってある盲学生の作品などを見て「視覚障害者にもこんなものが造れるの」と驚きの声を上げた

   例2 弱視児の修学問題で両親が盲学校を訪ねて「盲学校って暗いというイメージがあったのに、建物もきれいで、雰囲気も明るくて、こんなだとは、想像もしていなかった」と、印象を語った。

 一般の人たちが視覚障害者のシンボルとして描くイメージは、点字・白状・盲学校・あんまなどであるが、盲学校は、暗いイメージであり、視覚障害者は、「何も出来ない人」である。多くの中途視覚障害者、家族、専門家が、展示品を試用することや、講座を受けることで、実際に盲学校を見ることによって、このようなイメージの多くを払拭することが可能である。

  • 弱視の見え方と拡大読書機・弱視用レンズ

 視覚障害者の約9割が何らかの形で視機能を残している、いわゆる弱視であり、弱視の人たちにとって、拡大読書機・弱視用のレンズは、視機能を補うため、すばらしい道具である。所が、弱視の見え方は、一人一人千差万別で、ある人に使いやすい拡大読書機は、別の人には、非常に使いにくいものになってしまう。そのため、様々な種類の拡大読書機が開発されているが、弱視者は、自分の見え方に適した機器を購入するためには、様々の種類のものを実際に試用することが必要不可欠である。

 しかしながら、拡大読書機は、1台の値段が20万前後と高額であり、様々な種類を一同に展示するためには、当プランのような、特別枠の予算措置が必要である。尚、高知には、視覚障害者に対する便利な機器を一同に展示している所が皆無で、そのことが特に中途視覚障害者の自立と生活の質の向上にとって大きな障害となっている。

 2004年の職員提案全文 

事業名

視覚障害者自立支援事業(ルミエールプランのステップアップ) 

2提案者

所属 高知女子大学 専任講師

氏名 吉野由美子 

3事業の説明 

1)事業の目的及び内容(事業の実施主体及び体制・内容・スケジュール等について具体的に記載してください。事業の廃止

、見直しを前提とした事業の場合は1-2)も併せて記入してください。) 

 高知県の視覚障害者(手帳所持者)約3700人の約9割がロービジョン(弱視)であるが、これらロービジョンの方たちの見え方についてきちんと評価し、当事者に自らの見え方を自覚してもらったり、保有視覚をより良く使えるようアドバイスしたり、光学的補助具をフィッティングすることの重要性や効果については、ほとんど認識されていないことが、過去4年半の視覚障害リハ普及活動の中で明確になってきた。そこで、本事業においては、2001年6月から盲学校に設置されている「ルミエールサロン」にロービジョン用の各種トライアルセットを置き、ロービジョン当事者にそれを試用してもらい、適切な補助具選定をすることによって、ロービジョンの方たちの自立性と生活の質の向上をはかるとともに、不適切な補装具給付による税金の無駄な支出を防ぐことを目的とする。

 また、ロービジョンケアの重要性についての医療、教育、福祉分野での認識が充分でないこと。適切な補助具のフィッティングを行ったり、自分の意志を伝えることができない乳幼児や重複障害者の視機能評価を行える専門家が県内にほとんどいないので、県外から優れた実践を行っている専門家を講師として招き、視機能評価の重要性とロービジョンケアの重要性を認識し、トライアル機器を正しくフィッティング出来る専門家育成を行う。また、トライアル機器の貸し出しなどを媒介として、医療・福祉・教育の連携をさらに強固なものにしていくことを目指す。 

2)事業の必要性(県民あるいは社会の具体的ニーズ、それに伴う行政課題等も含め記入してください。

(数値で表せる場合には数値で、そうでない場合は具体的な説明を願います)) 

 高知県内の身体障害者手帳を持っている視覚障害者は、約3700人で、その約9割が、ロービジョンである。また、高知県は、超高齢化県で、手帳を取得するほどではないが、見えにくいことで生活に不便を感じている人たちは、いわゆる視覚障害者の10倍程度いると推計される。ロービジョンケアが、普及することは、単に視覚障害者の生活の質を向上させるだけでなく、視覚に心配を抱える高齢者の健康増進・介護予防に貢献するものである。 

3)事業の全体コストの把握(事業実施に当たりかかる経費を具体的に記入してください)

 1 機器購入 ロービジョン(弱視)用トライアルレンズ2セット(ツアイス製とエッシェンバッハ製合わせて約130万)、単眼鏡トライアルセット30万、乳幼児や重複障害者用視力検査セット40万円、遮光レンズトライアルセット20万、啓発用ロービジョン体験キッド20万 計240万

 2 ロービジョンケア技術研修会用講師、旅費・謝礼 80万(講師は、ロービジョンケアを実践している医師・大学教授・眼鏡士・視覚障害生活訓練指導員など5人を、全国各地から招聘する)

 3 研修会場借上費 5万円X5回分 計25万円

4 その他、通信連絡費、雑費など 計5万円

 合計 350万円 

4)手段の選択理由(本事業にて実施する方法が成果に結びつく有効なものであるか説明してください) 

 高知県では、弱視メガネや単眼鏡の有効性について、眼科医を始め、視覚障害関係専門家、当事者にもほとんど知られていないのが現実であり、この状況を打開するためには、出前で当事者、専門家の方たちに弱視用メガネや、単眼鏡の効力を見てもらうしかない。出前機器展示と勉強会の効果については、「ルミエールプラン」の実績が証明している。

また、県内の眼科医、眼鏡店などでロービジョンケアに対する関心が高まりつつあるが、弱視メガネや単眼鏡のトライアルレンズは、大変高価で、一つの病院や民間の眼鏡店で所有することは困難であるので、県が購入し、フィッティングの研修を行い、普及と技術者養成、医療・福祉・教育の連携を作り出すことが有効と考える。 

5)予算化を希望する課室名(理由を説明してください) 

 県健康福祉部障害福祉課 

理由は、視覚障害者に対する福祉サービスの実施機関であり、また「ルミエールサロン」の所管課であるので、障害福祉

課が予算化を行うことが適当と考える。 

6)その他 

(1)本提案は、視覚障害者自立支援事業による、「ルミエールサロン」の運営や巡回相談・視覚障害者向け出張機器展示などの活動を通じ、明確になってきた問題と、ニーズ(もっと見えるようになりたい・補装具としてめがねを作ったが

、自分にちっとも合っていない・この子は、見えてるようだけどどのくらい見えてるのかわからないなど)に対する解決案の提示である。

(2)ロービジョン(弱視)ケアは、日常の生活環境に多く左右されるので、福祉分野で、しかも、在宅の場で取り組まれることが望ましく、その点においては、視覚障害者生活訓練指導員を中心にして行ってきた、視覚障害者自立支援事業の延長戦上にある。視覚障害者自立支援事業(ルミエールプラン)をより良いものにしていくため不可欠のものと考える

(3)当提案を実施するには、高い専門性が必要である。従って、当提案の具体的な実施に当たっては、ロービジョンケア分野を専門的に研究している提案者が、積極的に関与したい。障害福祉課の持つ的確な行政能力や予算執行の能力と、研究・教育の専門家である提案者との緊密な連係プレイの有無が本提案の成功のキーを握っていると考えるので、単なる提案者と言う立場を超えて、積極的に関与させて頂きたい。

(4)この提案を、医療の側からでなく、「福祉の側」から行う必要の根拠などの説明は、この提案シートに書くことは不可能であるため、ヒヤリングの際充分説明したい。また、もし、チャンスを与えて頂ければ、障害福祉課に出向き、理解しづらい部分について、充分に説明させて頂きたいと考えている。

※ 事業の廃止、見直しを前提とした事業の場合は、1)と1-2)の両方に記載をお願いします。