(写真は、第43回高知リハ研究会の視覚障害支援関連のプレゼンテーション風景)
月日の建つのは本当に早いもので、第43回高知リハビリテーション研究会で講演させていただいて1ヶ月が立ちました。この間高知は、豪雨に見舞われ、そして今台風11号が接近し、いろいろと被害も出ていて、私も遠くから「被害が少しでも少ないように」と祈るばかりです。
そんな中ですが、この大会で「視覚障害リハビリテーション」が取り上げられたことの反響がいろいろと出てきているようです。
8月6日には、実行委員会の反省会が開かれたとのこと、そこでの様子を、実行委員の福島さんが、ご自分のブログにまとめておられる、それがすばらしいまとめなので、まずそれをリンクさせていただきます。
http://ameblo.jp/hukunokami4649/entry-11905790218.html
それから点字毎日に私が寄稿した文章を紹介します。そして、当日の座談会の抄録も掲載します。少しでも、あのときに雰囲気が伝えられたらと思います。
点字毎日8月7日(活字版)への特別寄稿
点字毎日8月7日(活字版)への特別寄稿
私の寄稿した原稿が出ました。点字毎日の許可を得て、PDF版とテキストデータで掲載します。私の持っている機器の性能が悪くて、PDF版は、二つに分けて掲載します。印刷してから組み合わせて見てください。
23回リハ記事1.pdf
23回リハ記事2.pdf
((((特別寄稿))))
「視覚障害リハビリテーションの未来像を見た」
ーー第43回高知リハ研究大会に参加してーー
視覚障害リハビリテーション協会長 吉野由美子
高知市朝倉の福祉交流プラザで先月6日、第43回高知県リハビリテーション研究大会が開催された。この研究会は、20年以上の長い歴史を持つ総合的なリハビリテーション研究会で、年に2回ほどリハビリテーションに関するさまざまなテーマで大会を開催している。今回の大会テーマは「高知家で支える視覚障害リハビリテーション-知っちゅう?見えない見えにくい人の生活のヒントやケアのコツがあるがやき-」で、このような総合的なリハビリテーション研究大会で、視覚障害がメインテーマに取り上げられるのは、日本初のことではないかと思うほど珍しいことである。43回大会実行委員長に選ばれた視覚障害訓練指導員の別府あかねさんと、私は11年間、高知で視覚障害リハビリテーション(以下、視覚リハと略す)の普及活動に取り組んで来た関係で、大会で「誰でもいつでもどこに住んでいても受けられる視覚障害リハを目指して」というテーマで講演させていただくことになり、大会の準備段階から関わらせていただき参加した。
なぜ今まで「総合的なリハ研究会」などで視覚リハはテーマにならなかったのかと言うと、我が国の身障手帳を所持している視覚障害者は約31万5000人と推計されており、非常に少数であると考えられるし、世間一般では視覚障害者というのは全然見えない人(全盲)のみというイメージが定着していることもあり、視覚障害者と日常のリハやケアの現場で出会うことは滅多になく、また出会ったとしても「どう接してよいか分からない特殊な問題」として見られているからだと考えられる。そんな中で、なぜ高知リハ研では、「視覚リハ」がテーマに取り上げられたのだろうか。それは、高知での視覚リハサービスの提供の仕方と他職種との連携の仕方に起因するところが大きい。
高知県で手帳を取得している視覚障害者の70%以上が65歳以上の高齢者である。高齢視覚障害者のリハビリテーションの目指すところは何かと言えば、「暮らし馴れた地域で、日々の生活を生きがいを持って快適に過ごせるようになること」である。この目標を達成するために、視覚障害者生活訓練指導員(歩行訓練士)が毎日その方のところに行って、相談に乗り指導や訓練をすればよいのだろうか(もちろんそんなことは不可能だが、仮にできたとして)。果たしてそれが効果があるのだろうか。そうではないだろう。毎日接している家族やホームヘルパーや、デーサービスの職員が、見えない見えにくい方たちに対する正しい知識を持ち、間違った接し方をしないようになること、見えない見えにくい方たちの日常生活のちょっとした困りごとを、少しの工夫で乗り越えるための情報を日々接している支援者が持っており、いざとなったら相談できる視覚リハ専門家の情報を持っていたりすることが、高齢視覚障害者の生活の質を上げて行くことに直結するのである。
そこでの視覚リハ専門家の役割は、日々接している支援者に「こうやって接したらよいですよ」「ここは暗すぎて見えにくい人は困るのでもう少し明るくしましょう」などのアドバイスをし、日常的に接している方たちの理解と協力を得て行くことがキーになるのである。高知県の視覚リハサービスは、利用者の生活の場に出ていって、実際の生活の中での問題を解決することを主に行ってきた中で、視覚リハ専門家も周辺の支援者もそのことに気づいていったのである。
15年間に及ぶ視覚リハ普及活動の中で、視覚障害生活指導員と日常生活の中で日々接している方たちとの交流の中で築きあげたこの関係を元に、視覚リハがテーマに取り上げられた大会ではあったが、最初は参加者がなかなか集まらず、繰り返しの宣伝活動や高知リハ研究会理事のさまざまなネットワークを使っての広報活動を経て、大会スタッフも含め269人を集めることができ、その中で介護関係の79人をはじめとする30種類以上の職種の方たちが参加。ロービジョンの人の見え方をスライドを使って体験するなど、視覚障害者に対する理解を深めるためのプログラムを体験した(プログラムの詳細は第43回大会ホームページ http://rihaken.sakura.ne.jp/rihab/conventions/info/を参照)。
参加者たちは、その体験をフェイスブックやブログなどで発信し、それが全国に広がっている。包括支援センターの相談員が、自分の担当する視覚障害ケースに対する対応を早速検証するなどの報告もされており、これからの新しい支援の輪の広がりが楽しみである。
今、視覚リハ(ロービジョンケア)の関係者の間では、「医療、福祉、教育」の連携の重要性が強調されているが、そこで言われている連携の範囲は、眼科医と視覚障害リハの関連施設、盲学校や弱視学級など、いわゆる視覚障害に関わる業界同士の連携の範囲に限られているように思われる。視覚障害リハ施設や盲学校などには、高齢視覚障害者はほとんど関わりを持たないので、視覚障害関係だけの連携をいくら強化しても、全視覚障害者の7割以上を占める高齢視覚障害者の生活の質を改善するというニーズには応えられない。だからこそ、私たちは発想を転換し、視覚障害の業界以外の日本社会福祉士会や日本介護福祉会等、相談の専門家組織や、高齢者ケア関係の機関等へも広く情報を発信し連携を模索する必要があると考えた次第である。
追加情報を少し
7月6日の座談会、会場とのやりとりも盛り上がったのですが、各登壇者の書いた資料をアップします。参考にしてください。
座談会.docx