秋田県立盲学校訪問記(3)

盲学校見て歩き

 訪問記(1)で書いたように、私がこの盲学校を訪問したのは「なぜ教育の分野で中途視覚障害者のQOL向上を目指す生活情報科を作ることができたのか」「それはどのように運用されているのか」を知りたかったからです。
 だから最初、このブログにも「生活情報科訪問記」だけを書こうと思っていたのですが、二日間の滞在の中で、それでは、「生活情報科」ができた意味も、そこで学んでいる方たちの楽しそうな学校生活のことも、良く分かっていただけないと感じてしまいました。
 それで、今回は、「盲学校全体の私なりの印象」を書かせていただきます。

 乳幼児から壮年期までをカバーする教育

盲学校開設100年のスローガン
 二日間主に話を聞かせていただいた校長室の直ぐ横に、生徒さん達から募集して採用された、盲学校開設100年の記念スローガンが張り出されていました。「受け継ごう100年の思い明日への力」とても分かりやすいスローガンだと思いました。
 盲学校の在籍者は、「訪問記2」で載せさせていただいたPDFにもあるように、28名で、幼稚部・小学部・中学部は、各2名ずつの在籍、高等部普通科3名までが、いわゆる学齢で、残りの、18名は、中途視覚障害者で理療科関係14名、生活情報科が4名です。
小4全盲児童と先生の授業風景 まぶしさを押さえるために段ボールで囲われた拡大読書器 

遮光カーテンを締め切って授業をしている部屋 一クラス二人それぞれに拡大読書器を設置
 5つほどの教室を見せていただいたのですが、小4全盲児童のお部屋はちょうど先生と差し向かいで点字の分かち書きの復習をしていました。手元のドリルは、保護者も指導できるように墨字の解説付きのものでした。
 
 そのほかの教室は、ロービジョンの学生さんの教室で、それぞれの見え方によっておいてある拡大読書器に段ボールのカバーを掛けたり、まぶしさがひどいという学生のためには、遮光カーテンを設置して1日中それを閉めて天井の蛍光灯だけで授業をしているなど、一人一人に合わせた配慮がなされているのを感じました。
広くて清潔な治療室 平成23年度の臨床実習業績が張り出されている 
 職業教育としての理療科教育にも大変力を入れているようで、外部から患者さんが来る治療室は広くて清潔。実習をしている生徒さんもきびきびと動いているように思えました。治療室に入る玄関の所に張り出された実績の数も多くて、大変驚きました。

 寄宿舎は、一部屋だけが二人部屋で、後はすべて個室。拡大読書器やパソコン、大型テレビが置いてあるゆったりしたラウンジがあり(下の写真はラウンジ)
寄宿舎のラウンジ 別の角度から撮ったラウンジの写真
また、寄宿舎にいる生徒が卒業後、一人暮らしができるように、独立した訓練用の部屋が用意されていました。
寄宿舎にある一人での生活を体験する実習室 卒業後の自立訓練のための部屋(ベッドの部分) 自立訓練のための部屋(バス・トイレ)

 各教室や寄宿舎に置いてある拡大読書器は、形の古いものもありましたが、個々の見え方に合わせて、何とか使いやすくしようという先生方の意気込みがひしひしと伝わって来る配置の仕方に思えました。
 移転してまだ3年目なので、設備が最新式ですばらしく、「新しいというのは良いな」と素直に思いましたが、そのこと以上に、そこで働いているスタッフの方たちの何かにチャレンジしようという意気込みを肌で感じさせられる散策でした。

 最後に、校長先生からいただいた「平成24年度教育目標の具体化に向けて」という資料をPDFで載せておきます。私の文章では上手く表せないものが、読み取っていただけると思います。
平成24年度盲学校の教育目標の具体化に向けて②-1.pdf