秋田県立盲学校訪問記(1)

 

あきた総合支援エリアかがやきの丘の全体像

 「秋田県立盲学校」が「盲学校なのに中途視覚障害者のリハビリテーション」に重きをおいた「生活情報科」というのを開設したらしいという話を聞いて、私は、大変に興味を持って「いつか行ってみたい」と思っていました。
 今回、秋田県立盲学校に大変無理なお願いをして、二日間その中を見せていただくことができましたので、その「訪問記」を載せます。
 訪問記(1)では、まず秋田県立盲学校が属している「あきた総合支援エリア」というものの全体を貫いている理念について、私の感じたことを中心に書いておきたいと思います。その方が後でこの「盲学校」のことを理解してもらいやすいように思うからです。
 「かがやきの丘」のことを詳しく知りたい方は、こちらを見てください。
 http://www.kagayaki.akita-pref.ed.jp/

1 驚きの職員室

 「あきた総合支援エリアかがやきの丘」は、聾学校、盲学校、きらり支援学校(肢体不自由特別支援学校)の3つの学校が施設設備を一部供用し、隣接して秋田県医療療育センターがあるまさに「総合支援エリア」という名前にふさわしい地区です。
 盲学校に到着して廊下に入ると直ぐに、大きなディスプレイが
『写真』廊下の天井に情報保障用のディスプレイ 『写真』 盲学校エリアの廊下には壁際にグレーのライン 『写真』 コントラストを効かせた案内表示
天井からぶら下がっているのが目に飛び込んで来ました。「聾学校の児童、生徒のための情報保障用の映像や文字を写すものです」と教頭先生が説明してくださった。
 盲学校エリアには、壁際にグレーゾーンがあり、ロービジョンの人でも分かりやすいようになっており、壁に掛かった案内板は、コントラストが効いていてこれもロービジョン者でも見やすい工夫がしてありました。点字ブロックは教室の出入り口とかエレベーター前とかごく限られた所にあるだけ「きらら支援学校の人たちが車いすで通りやすいように点字ブロックは最小限の設置です」という説明を受けました。
 『写真』 220人の先生方が一堂に会する職員室『写真』 広い職員室を別の角度から『写真』 同じく職員室
 驚いたのは職員室に案内された時。三つの学校の合わせて220人が一堂に会する、とにかくばかでかい。せっかく良いカメラを持っていたのだから、パノラマ機能を使って撮影すれば良かったと後で後悔しました。
 220人の違った障害種別を教える先生方が、一緒に集まっていると「何が起こるんだろう。なんか面白い化学反応が起こるのかな」「それとも沢山もめ事が起こるのかな」私は心の中でそんな事を考えていました。

三つの学校の独自性を失わずに共有化の利点を生かす

三つの学校には職員室が一つというだけでなく、事務室も三つの学校で一つ、それぞれの学校を担当する事務職員の方たちが相談と調整をおこないながら、予算を効率的に使うシステムになっていました。
 それだけでなく、理科実験室や調理実習室、体育館、会議室、食堂など共通で使える部分、外部の方も利用できる地域交流施設なども3校で調整しながら使っていました。
 維持管理にお金のかかる屋外プールや、室内プール、広い校庭なども3校の共用だからこそのゆとりのある広さだと思いました。
 『写真』 リハビリテーションに効果的な水を使える室内プール『写真』 別の角度から撮影した室内プール
 視覚障害・聴覚障害・肢体不自由という、それぞれの教育対象のニーズの違いを重視して、それぞれの学校の特徴は損なわず、組織も別形態をきちんと保ちながら、共有できる部分は共有して、財政の負担を軽くすると言う、この「かがやきの丘」の考え方、始まったばかりで、きっと成果も問題点もこれから沢山出てくるのだと思いながら、とてもユニークですばらしい試みだと思いました。

 このような環境の中にある県立盲学校、その新しいチャレンジについて、これから順次書いて行きたいと思っております。