研究室を開けると言うこと

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 月日の経つのは本当に早いもので、今年も後5日になりました。来年になれば、あっという間に退職を迎えることになります。
 退職の覚悟は徐々に整って来ていますが、一つ困ったことがあります。それは、研究室を開けなければならないことです。

 研究室には山ほど本や資料があります。研究室を開けると言うことは、それらの本や資料を引き取ると言うことです。引き取るためには、当然ですが、沢山のスペースが必要です。

掃除機がぽつんと角にたっている  洋服ダンスを運び出した後のがらんとした部屋
(大きなタンスを運び出した後のがらんとした部屋)

 私が母と共に高知に来た時、母が住んでいた広い家から、母が手放したくないと言った、大きな洋服ダンスを二つもって来ました。そのタンスの中には、母の衣類が詰まっていました。

 こちらに来てすぐに、母は健康を害して、入院生活が続き、結局もって来た沢山の洋服を着ることもなく。この10年、母の洋服ダンスは開かずのタンスになっていました。
 
 私の方も、沢山の段ボール箱をもって来たのですが、この10年一度もあけたことのない箱が10箱ほどありました。
 研究室を開けて、大量の本を自宅に引き上げるためには、この開かずの洋服ダンスと、あけたことのない段ボール箱を何とかしなければなりませんでした。

 母がもって来た洋服ダンスは、ほとんど使っていないし、高級品で、ただ捨ててしまうには忍びなく、何とか使ってもらえる人を探したくて、リサイクルショップの人に見せたら「今はこんな大きなタンスを使う人はいません」と言われて、売れませんでした。
 そこで、人づてにもらってくれる人を探して、ようやく見つかって、今日運び出していただいたのですが、そのタンスの中に入っている母の洋服は、すべて捨てなければならなくて。今日と言う日が近づくにつれて、とてもとても辛い気持ちになりました。
 母の思い出が詰まっていて。
 昨日など、もらってくださると言った方に電話をかけて「やはりこのまま残しておきます」と言おうと思ったのですが、それではことがすみません。

 そして、今日、5人の方たちが来てくれて、てきぱきと、タンスと段ボールを運び出してくれました。
 後には、広い広い空間ができました。
 今日、捨ててしまった荷物には、沢山の思い出が詰まっています。でも、これで良いのでしょう。これで新しい何かが開けるのだと思いました。
 少しだけ母に悪いという気持ちが残りましたが。