25日午前9時30分高知空港ロビーで集合した。飛行機は10時30分発。どうしてこんなに早く集合するのかよく分からなかったものの、吉野氏の指示に従い4名集合した。旅行中も全てこの調子で、一般的に予想する倍以上の余裕をもって行動する。㈪関西空港
これは障害がある吉野氏が社会生活を営む上での保険である。つまり、視覚に障害があり(つまり情報障害がある)、加えて下肢の障害があることにより移動に時間がかかるため、乗り遅れない・待ち合わせに遅れないための自衛手段である。
「今回の旅は元気な若い人たちが3人もいるから、大丈夫だと思うんですけど、心配なので」(吉野談)
こうなったらとことん吉野氏にお付き合いしようと新たなる決意を行う。
9月11日の事件以来、セキュリティチェックがかなり厳しくなっていて、利用者はかなり減っているにもかかわらず長蛇の列。吉野氏の杖もしっかりエックス線に通され、映画「ジャッカル」を思い出す。㈫ユナイテッド航空810便
チェックインの際、吉野氏に障害があり、各空港で車いすを利用したいことを確認する。高知で旅行会社にもその旨を依頼していたので、スムーズに話しが通る。
私たちも研修前かなりたくさんの方に「アメリカだいじょうぶ?」との心配をいただいたが予想通り日本人の姿は機内にほとんど見かけない。しかし、結構席は埋まっている。吉野氏のおかげ?か私たちの席はエコノミー席の1番前の広いスペースがある場所であった。㈬サンフランシスコ空港
今回はバリアフリー調査が目的なので、さっそく機内のトイレの調査を行う。
障害者用トイレドア 障害者用トイレ便器 障害者用トイレ手すり
スペース上の問題で、広さは充分にないものの一応配慮されている。また、そのとなりにおむつ替えシートのあるトイレも設置されている。
ベビー対応トイレドア おむつ替えシート閉 おむつ替えシート開
サンフランシスコ空港で、入国の手続きを行い、その後乗り継ぎを行う。迎えに来てくれるはずの車いすが来ておらず、結局歩くこととする。
空港内のトイレサインがたいへん解り易く、常々私たち4人が理想的とかんじていたものに近く感激した。女性はサインのプレートが○、男性は△のプレートの形により男女の別を判断できる。また、白黒反転の浮き出し文字に加えて点字表示もあった。矢印により入るときと出るときの動線が分かれていてぶつかりにくい。
ひとくちメモ:理想的なトイレサイン弱視者に配慮されたコントラスト、全盲者が触ってわかる形状と高さ、知的障害者が認知しやすい統一されたデザイン、子どもの目線でもわかりやすい高さ、などに配慮されたものが理想的と私たちは考えています。
トイレサイン女 トイレサイン男 矢印での誘導
また、空港内を移動中に通ったエレベーターが階段、エスカレーターの中央にあり車いす利用者等障害者に便利にできている。
ひとくちメモ: 階段、エスカレーターの中央のエレベーターは何故便利階段やエスカレーターはメイン通路にあるのに対して、障害者に配慮されるエレベーターは、人目につきにくい場所や遠回りをしなければならない場所にあることが多いのです。
一般にサンフランシスコはバリアフリーが進んでいるといわれているが、空港で数時間過ごしただけで様々な工夫を見ることができた。しかし、エスカレーターの段鼻が灰色でコントラストがなく見えづらかったり(日本は黄色)階段の段鼻がコントラストはなく、一段目と最後の段のみ白いラインがあったことなど、まだ工夫の余地が残されているようにも思う。 エレベーター
ひとくちメモ: 段鼻のコントラスト階段は上るよりも下る方が危険です。踏み外すと一気に下まで転げ落ちるからです。段の角にコントラストをつけるだけで、弱視者は見えやすいのです。
サンフランシスコで感激したトイレサインをここでも発見した(後に、この○と△のトイレサインはカリフォルニア州では一般的であることを知る)。
この空港では踊り場(平らな部分)に色が付いており、スロープ部分とのコントラストにより判別しやすく、車いすを押す人もコントロールしやすいし、一般の人にもわかりやすい。
天井から吊り下げのゲート案内表示が黄色に白文字でコントラストが弱く少しみえにくいが、矢印は赤色の立体でおもしろい。
この空港でも車いすの迎えが来ておらず、吉野氏は歩いて空港内を移動する。広くてたいへんだった。おまけに、感謝祭の休暇の最終日と重なったため、タクシー待ちの長蛇の列で、30分待ったところで、ダウンタウン行きの乗り合いバスを捕まえて(無理やり定員オーバーさせてもらった)空港を脱出する。
濱田が捕まえたバスから他3名が待っているところまで約100m、
「急いで友達を連れてこい」
と客引きの男性に言われたので、急いで4人で移動していたら、1人が障害者だと気づくとすぐ、私たちの所まで来てくれて
「ゆっくり来ていいよ。落ち着いてね。」
おまけにスーツケースを運ぶのを手伝ってくれた。人間として当然のことであろうが、なかなか日本では気軽にやってもらえない。バスの移乗の際も、気軽にサポートしてくれた。全くバリアフリーとなっていないバスであったが、ソフト面での暖かさを感じた。
無事バスに乗ったあと、
「私一人だったら、永遠にタクシーを待ってました。」(吉野氏)
障害のない者は、歩き回って探す・周りの人がどうしているか観察する・人に聞くなどして、問題を解決するが、障害のある者、特に情報障害のある者にとっては、非常に難しいことを確認した。
スロープ踊り場 ゲート案内