下記は、3月98日と9日に高知女子大と九州ロービジョンフォーラムが共催で開催した「ロービジョンフォーラムin高知」のプログラムと、挨拶文です。
フォーラムの簡単なご報告は、別のページに登載してありますので、ご覧ください。
プログラム
○1日目○ 3月8日(土) 12:00〜16:30
13:15〜 基調講演1
「高知に多い視覚障害の原因と治療の現状」
高知医科大学眼科教授/ 上野脩幸
14:15〜 基調講演2
「視覚障害児・者支援 ロービジョンケアー」
柳川リハビリテーション病院眼科部長/高橋広
15:30〜
パネルディスカッション
「高知県の視覚障害児ケアーについて考える」
パネラー 澤田京子(高知県立盲学校教諭)
高橋広(柳川リハビリテーション病院眼科部長)
山田信也(国立函館視力障害センター)
川瀬芳克(あいち小児保健医療総合センター)
コーディネーター 吉野由美子(高知女子大学社会福祉学部)
○2日目○ 3月9日(日) 9:30〜15:00
専門家向け講習会
9:30〜 専門家向け講演 テーマ
「訓練の前に自己の視機能を知ろう」
柳川リハビリテーション病院眼科部長/高橋広
10:30〜 「光学的補助具の基礎と実践」
国立函館視力障害センター/山田信也
あいち小児保健医療総合センター/川瀬芳克
柳川リハビリテーション病院眼科/岩本寛子
●専門家向け講習会参加者は、材料費として1000円が必要です
●専門家向け講習会は医療・教育・福祉などの分野で視覚障害の方たちを支援する立場の方たちを対象としています。
※視覚障害者用光学機器・便利グッズ展示コーナーも同時開催※
全国から沢山の業者が参加し、拡大読書機・弱視レンズ・音声パソコンソフトなどの
最新バージョンや日常生活に役立つ便利
ごあいさつ
生活の質(QOL)の向上が多くの場で唱えられています。視覚障害児・者においても同様で、QOLの向上を目ざすロービジョンケアが重要です。しかし、未だ「ロービジョン」という言葉さえも一般には十分に理解されていません。この「ロービジョン」は従来、教育や福祉の分野では「弱視」と言われてきましたが、医療でいう弱視(医学的弱視:斜視弱視、不同視弱視、形態覚遮断弱視や屈折異常弱視など)とは異なっており、混乱が生じています。しかし、QOL向上のためには、医療、教育、福祉、行政や企業など多くの方々の支援が必要なことは自明です。したがって、職種間の共通した言葉が必要となり、最近は「弱視」と言わず、「ロービジョン(low
vision)」と呼ぶようになってきました。
1997年に発足した九州ロービジョンフォーラムは、眼科医、視能訓練士、看護師、教育、福祉、保健や企業の方々が個人で参加され、同フォーラムは視覚障害児・者や家族の皆様と共に考え、共に悩み、視覚障害児・者のQOLの向上を目指し支援しています。読売光と愛の事業団のご援助を得て、一般市民の方々を対象にした公開シンポジウムや専門家向け講習会を毎年、3〜4ヶ所の九州や山口で開催いたしております。
今度、高知女子大学吉野由美子先生のお招きをいただき、高知市、高知市教育委員会、高知県眼科医会など多くの皆様のご協力で、ロービジョンフォーラムを高知市で開催することとなりました。関係各位に厚く御礼申し上げます。
初日の公開シンポジウムでは、高知医科大学眼科上野脩幸教授に高知の現状のご講演をお願いしました。先生の多くのご経験から示唆の多いものと存じ上げ、期待しております。その後、私がロービジョンケアの現状を話します。また、パネルディスカッションではご参加の皆様からのご発言を大いに歓迎します。
第2日目は専門家向けの講習会で、あいち小児保健医療総合センター・視能訓練士の川瀬芳克先生、国立函館視力障害センター・指導員の山田信也先生に「視覚的補助具」に関して実習・実技を中心にご指導していただきます。
皆様の積極的なご参加を得て、実り多い公開シンポジウムや講習会になることを期待し、このフォーラムが高知、四国での視覚障害児・者の皆様への支援の起爆剤になることを祈念いたします。
『視覚障害児・者の方々と共に考え、共に悩み、共に歩むロービジョンケア』『早期からのロービジョンケア』
『地域に根ざしたロービジョンケア』
九州ロービジョンフォーラム
代表世話人 高橋 広
なぜ高知でロービジョンフォーラムを開催したかったのか
高知女子大学社会福祉学部
吉野由美子
私は、29年前、名古屋で点字図書館に就職し、人生の半ばで視覚障害者になった人たちの相談に乗ることになりました。そこで出会った人たちは、名医と言われる所を渡り歩いた後、何の支援も受けることなく絶望と孤立の中何年も家に閉じこもった末、ようやく点字図書館にたどり着いた人たちでした。絶望し、仕事を辞めてしまい、10年も家に閉じこもっていた方たちが新しい人生を踏み出すことの困難さを、必死で相談に乗っていた私は、いやと言うほど感じされられました。
中途視覚障害者の自立支援を成功させるためもっとも重要なことは「早期発見→早期ケアー」でありますが、それを実現するためには、眼科医との緊密な連携関係が必要なのです。しかし、残念ながら連携関係を造り出すことはたやすいことではありません。
1999年に高知に赴任し、そこで私は、再び29年前と変わらず、孤立し絶望している多くの中途視覚障害者の方にお目にかかり、再び医療との連携の必要性とその難しさに苦闘することになりました。そんな昨年、「九州ロービジョンフォーラムin長崎」で、高橋先生をはじめ、フォーラムの仲間のみなさんにお目にかかることが出来ました。その時だったか、後日であったかもう覚えていないのですが、高橋先生が「今の視覚障害者に対するリハビリテーションサービスは、『あなたは治りません』と宣告して、障害者を千尋の谷に突き落としておいて、そこから自力ではい上がった人にだけ提供されている、これは絶対におかしい」・「医療から(医者に見放されたと患者さんが思わないで)知らず知らずのうちにスムーズにリハに移行していくシステムが不可欠」と言われたことと、その言葉通り様々な職種との緊密なチームアプローチを実践しておられることに感銘を覚えました。
高知での視覚障害者自立支援ネットワーク造りも、視覚障害者生活訓練指導員別府さんとの協力、県・高知市の障害福祉担当者の努力によって、地域の保健師・教育関係の方たちの間に徐々に広がりつつある今、高橋先生をはじめ、九州ロービジョンフォーラムの方たちからの貴重なアドバイスが、今後の高知県での連携造りにすばらしい影響を与えてくださることを確信してフォーラムを開催させていただきました。
最後になりましたが、忙しい中、おいでくださいました、九州フォーラムのメンバーのみなさんに心からお礼を申し上げます。