㈰ 3日目(研修10日目)
 Lighthouse Internationalへ訪問する。アメリカへ出発する5日前に訪問日程の変更の申し出があり大あわてで、翌日のHelen Keller National Centerとアメリカ到着後もメールや電話でやりとりした経過があり、無事4人全員で訪れることができた。
 説明は主にMary Ann Langさん。
 
正面玄関の写真
Mary Ann Langさんの写真
正面玄関
Mary Ann Langさん

 Lighthouse Internationalは1905年創立。2人の姉妹が善意で最初は音楽好きな視覚障害者にコンサートチケットを配るといった小さなことから始まり、その後視覚障害者リハビリテーションを始めていく。当施設の利用者はニューヨーク州とロングアイランドが中心で、その他の施設は他のライトハウスなどと協力してサービスを行っている。
 ボストンで訪れたCarroll Centerと異なり、対象は子供から高齢者まで幅広いサービスを行っている。
 Lighthouse Internationalの行っているサービスは

  1.  ダイレクトサービス(視覚障害者に対する直接のサービス。心理的、生理的なサービスも含む。)
  2.  リサーチ部門(視覚障害に関する専門的調査研究。)
  3.  教育部門(一般から専門家に対して、また子供から大人まで、視覚障害者のことを理解してもらうための教育。)
  4.  アドボカシー(法律の改正などの要求を含む社会への働きかけ)
  5.  プロダクト(ロービジョン用品、音声用品等の商品を作る)
の5つである。
 訓練費用は基本的に州が負担するが、何らかの理由で必要な経費を政府が支払ってくれない場合は、高額の遺産の寄付をはじめとする自主財源により施設が負担する。
 印象的なのは、中途視覚障害者の場合、仕事を辞める前に本人へのトレーニングとともに職場へのアプローチを行っており、たとえ視覚障害があっても特別な職業ではなく一般的な職業を持ち続けることに重点をおいている。
 また、Carroll Centerと同様、学生等若年者に対するオリエンテーションの充実に力を入れている。夏休みにアルバイトを行い、仕事を探す方法や社会経験を積ませることの重要性について語ってくれた。
 リハビリテーション訓練の充実もさることながら、この施設はアメリカで唯一の視覚障害に対応したバリアフリー建築の建物で、たいへん訪問を楽しみにしていた施設である。
 Lighthouse Internationalは独自の地下1階15階建てのビルである。メインエントランスは手すりによって入口と出口の動線を分けている。色彩と素材のコントラストによる絨毯で受付前まで誘導し、正面右側の受付で、行き先を告げ、その場所などを知らせてもらうことになっている。受付デスク前の待合いベンチでは、いすの下部に盲導犬を座らせるための空間を作ってある。
 
出入口の写真
受付の写真
受付前の触地図の写真
出入口
受付
受付前の触地図

 また、ビル全体に自然光を取り入れる等の方法でまぶしくない自然な明るさに配慮し、階ごとの急激な明暗の差をなくしている。県庁内では、特に昼休みにISOの関係で照明をおとしているし、廊下がかなり暗くなっている。昼休みにも来客があることを考えると、高齢者や弱視者のためには再考願いたい。現に以前、昼休みに障害福祉課を訪れた吉野氏はかなりお困りになったようだ。
 色彩のコントラストについて配慮することは、弱視者にとって大変有益な手段である。このビルでもそれを取り入れ、エレベーターの前の床はコントラストのあるタイルを貼ることとにより注意喚起を行っている。また、壁と床についてそれぞれ色や素材のコントラストを付けている。エレベーターボタンは一般のものよりかなり全体が大きい。エレベーター脇には各階ごとの受付があるが、その机すらコントラストに配
慮したものであり、利便性に配慮している。カフェテリアのテーブルもコントラストに配慮し、縁を黒くぬり、また方向がとりやすい四角形のものとなっている。
 
受付からの誘導とベンチの写真
カフェテリアテーブルの写真
受付からの誘導とベンチ
カフェテリアテーブル

 各部屋のドアはその周りを濃いピンクで塗り周りの白い壁とのコントラストを付けたり、階段も段鼻にコントラストを付けたたいへん利用しやすいものとなっている。
 階段の降り口には、ざらざら感のある素材を用い白杖等で判別できるようにしている。
 
エレベーターの写真
エレベーターボタンの写真
階段手前の写真
エレベーター
エレベーターボタン
階段手前

 自分の行きたい場所を知らせるシステムとして、白黒反転による大きな文字のサイン、浮きだし文字と点字による触覚サイン、リハビリテーションによるポジショニング、音声によるサインを 用いている。Lighthouse Internationalでは男性は△、女性は○にシンボル化しており、トイレサインもその考え方を用いている(触地図上にも○、△での表示を行っている。)
 
女性トイレの写真
男性トイレの写真
女性トイレ
男性トイレ

 最後に前日に寄ったショップへ案内してもらう。ユニバーサルデザインに配慮した一般的な商品も数多く置かれている。拡大読書器やルーペという福祉機器のすぐ横に、お洒落なメガネケースや割れない食器などが自然においてある。周りのショップとなんの違和感のない店構えは、一般への啓発効果も大変大きいとのことであった。
 
ショップ入口の写真
ショップ内部の写真
ショップ入口
 ショップ内部

 
 

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