吉野由美子の考えていること、していること
tag:yoshino-yumiko.net,://57027
2023-10-23T14:25:57Z
MovableType.net
「高齢視覚障害者や高齢者の見え方を知ることで、本人やご家族、支援者も楽しく!」
tag:movabletype.net,2003:post-2512254
2023-10-23T13:52:00Z
2023-10-23T14:25:57Z
2023年10月7日に「アイラウンジ」で「知ってますか65歳問題」という講演をさ...
吉野由美子
<p> 2023年10月7日に「アイラウンジ」で「知ってますか65歳問題」という講演をさせていただいて、1週間後、東京都杉並区の視覚障害者協会主催の市民向け研修会で「高齢視覚障害者や高齢者の見え方を知ることで、本人やご家族、支援者も楽しく!」と題して、高齢視覚障害者と高齢者の多様な見え方と、その見え方に対する配慮、少しでも見えやすくなるような環境改善や様々な工夫をすると、その方達のQOLが向上するだけでなく、家族も介護者も「楽しくなる」というテーマでの講演を依頼されました。<br> 視覚障害者協会が一般の方もターゲットにしてこのようなテーマで研修を行うというのは、すごく珍しいと思ったので、私は、とても嬉しくて、張り切ってしまって、伝えたいことが山ほどあって、沢山のスライドを作って、講演させていただきました。<br> 当日の参加者は、募集定員の6割ぐらいとのことでしたが、当事者や支援者が入り交じって、熱心に聞いてくださいました。少し張り切りすぎて、いろいろなことを盛り込みすぎてしまったと反省しつつ、頑張って作ったプレゼンが、目にとまったら役に立つこともあるのではないかと思って、PDFで公開させていただきます。見えにくいと言っても、見えにくさがとても多彩であること、少しでも見えやすくなるようにする工夫っていろいろとあること等、少しでも理解していただく参考になれば幸いです。</p>
<p> <span class="asset asset-file at-xid-2942838"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E3%81%8C%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8B.pdf" title="介護が楽しくなる.pdf">介護が楽しくなる.pdfをダウンロード</a> </span> </p>
<p></p>
<p><span style="font-size: 48.0pt; font-family: 'MS Pゴシック'; mso-ascii-font-family: Arial; mso-fareast-font-family: 'MS Pゴシック'; mso-bidi-font-family: +mn-cs; mso-bidi-theme-font: minor-bidi; color: yellow; mso-font-kerning: 12.0pt; language: ja; text-combine: letters; mso-style-textfill-type: solid; mso-style-textfill-fill-color: yellow; mso-style-textfill-fill-alpha: 100.0%;"></span></p>
知ってますか65歳問題(2023年10月7日アイラウンジでの講演)
tag:movabletype.net,2003:post-2510369
2023-10-22T07:27:00Z
2023-10-22T07:52:29Z
ようやく季節が進んで秋らしくなってきた今日この頃です。皆さんいかがお過ごしですか...
吉野由美子
<p><span class="asset asset-file at-xid-2940037"> </span> ようやく季節が進んで秋らしくなってきた今日この頃です。皆さんいかがお過ごしですか。私は、なかなか激しい気候変動に体がついて行きませんが元気でやっています。<br> さて、オンラインで毎月開催されている「アイラウンジ」で高齢の視覚障害者に取って、一つのターニングポイントになる出来事、65歳問題についてお話しさせていただくチャンスを得ました。<br> 約80分の私の講演の後、質疑応答1時間ほど、すごく熱心なやりとりで、講演させていただいた私に取っても、すごく勉強になりました。その時プレゼンで使用した資料を、PDFデータで公開いたします。何かの参考になれば幸いです。</p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2940037"><a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E7%9F%A5%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%81%8B%EF%BC%96%EF%BC%95%E6%AD%B3%E5%95%8F%E9%A1%8C1.pdf" title="知っていますか65歳問題1.pdf">知っていますか65歳問題1.pdfをダウンロード</a></span></p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2940037"><span class="asset asset-file at-xid-2940039"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/2023%E5%B9%B410%E6%9C%887%E6%97%A5%E5%8F%82%E8%80%83%E8%B3%87%E6%96%99.pdf" title="2023年10月7日参考資料.pdf">2023年10月7日参考資料.pdfをダウンロード</a> </span> </span></p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2940037"></span></p>
<p></p>
視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から2022 第12回(最終会)「あったらいいな、こんなサポート」の 振り返りとこれから
tag:movabletype.net,2003:post-2374181
2023-05-11T07:22:00Z
2023-05-11T08:05:42Z
病状が進んで,少しずつ見えにくくなって行く時の心の不安を聞き、サポートしてくれる期間や人材に「こんな物があったら良いな」という現状と,未来へ向けての展望を書いた記事
吉野由美子
<p></p>
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2716416 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/220-2023%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B35%E6%9C%88%E5%8F%B7-320wri.jpg" alt="雑誌「視覚障害」2013年5月号表表紙" width="320" height="447">
<figcaption>雑誌「視覚障害」2023年5月号表紙</figcaption>
</figure>
<p> 2022年6月から連載を続けてきた「視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から」も、2023年5月号で最終会となりました。このテーマでの連載のコーディネートの依頼を編集室からいただいた時、「面白い」「やりがいがある」という思いで引き受けさせていただいた時、1年は長いし,本当に無事続けられるかなと不安でもありました。しかし、執筆を依頼させていただいた皆さんと、編集室の協力で、内容は予想以上の物になり、1年なんてあっという間に過ぎてしまいました。<br> コーディネーターなどという肩書きをいただいた私ですが、このお仕事のおかげで,とても勉強になりました。</p>
<p></p>
<p> 執筆してくださった皆様、編集室の皆様、本当にありがとうございました。<br> もう一つ、皆様の許可をいただいて、この連載の全てを,私のブログで公開させていただき,本当にありがとうございました。そのことで、視覚リハのことを知りたいと思っている多くの方達と情報を共有することが出来ました。感謝いたします。この連載がこれで終わるのかと思うと,ちょっぴり寂しいです。また何か「視覚リハの現場」を皆さんに知っていただく記事を書いて見たいなと思っております。<br> 本当にありがとうございました。</p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2716466"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B32023%E5%B9%B45%E6%9C%88%E5%8F%B7-%E7%94%B0%E4%B8%AD.pdf" title="視覚障害2023年5月号-田中.pdf">視覚障害2023年5月号-田中.pdfをダウンロード</a> </span></p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2716466"> </span></p>
<p><strong>視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から2022</strong><br><strong>最終回 「あったらいいな、こんなサポート」の</strong><br><strong> 振り返りとこれから</strong></p>
<p><strong>神戸市立神戸アイセンター病院</strong><br><strong>公認心理師 田中桂子</strong></p>
<p><strong>はじめに</strong><br> 今回、筆者に与えられた課題は、本誌2014年10月号の連載「視覚障害リハビリテーションの現場から」に寄稿した「あったらいいな、こんなサポート」(以下、前著)について、すでに実現したこと、しつつあることを報告し、その上で、実現できず更に発展が望まれること、新たな視点について考察を加えることです。<br> 筆者は現在、公立の眼科病院、メンタルクリニック、高齢者介護関連企業の3か所で非常勤の心理職として働いています。神戸市立神戸アイセンター病院では、網膜変性外来やロービジョン(以下、LV)外来に同席して、患者さんへ情報提供をしたり、個別の面談などの心理支援をしたりしています。他には、他地域の眼科でLVケアのお手伝いや、支援施設などで行われている当事者や支援者向けの研修、同行援護従業者や盲ろう通訳・介助員養成研修などの講師をしています。</p>
<p><strong>1.2014年10月号で語った「夢」</strong><br> それでは、前著に記しました五つの提案について、現状と考察を述べていきたいと思います。<br><strong>(1)365日・24時間対応している電話相談</strong><br>現状:対面、電話、リモートでの相談は少しずつ充実してきていると思われます。しかし、切れ目なく設置された相談窓口は未だなく、時間外の対応には、個人的な善意や尽力に頼っている状況です。<br> あたりが寝静まった暗闇の中で、不安がコントロールできなくなったとき、誰かに話を聞いてもらえるとどんなに救われることか。そして、相手が視覚障害に関しても理解をもつ人だったら、安心感は更に大きいでしょう。<br> 前著では、365日・24時間、無料で電話相談に応じてくれる「いのちの電話」のような仕組みを取りいれた、「視覚障害者ホットライン」が実現できないだろうか、また、同様の既存の組織と連携して、視覚障害者に特化した相談枠の開設はできないだろうかとの提案をしました。当時は、電話やメールでのやりとりが主流でしたが、この10年弱の間に、LINEなど比較的手軽なコミュニケーションツールがいくつも出現しており、今後は、これらを使用した斬新な相談の仕組みが考えられるかもしれません。<br> たとえば、AIが対話の相手をする仕組みはどうでしょう。昨今、心理学の分野では、AIカウンセリングが開発・試行されています。こうしたツールは、込み入った話は無理にしても、話がしたい時にとりあえずの「応答」を得ることができるかもしれません。また、翻訳機能を搭載して、北半球と南半球、昼夜が逆の国の人に話し相手になってもらうというアプリシステムも作れるかもしれません。相手からの応答を得ることで人は落ち着きを取り戻すと言われています。上記のツールは十分とはいかないまでも、利便性のあるシステムではないでしょうか。<br> また、(1)のテーマに関連して「効率的に話を聞くこと」について書いてみます。筆者は数年前から、ある視覚障害関連団体で相談員の研修を担当しています。そこで学んだことは、「とりあえずの相談事」が済むと、後は全く関係ない話を延々とし続ける相談者が少なからずいるということです。「話を聞いてほしいこと」も当事者のニーズであるなら、「相談」と「話し相手をする」を区分けし、対応するとよいかもしれません。回線数や容量、時間制限がある中で、「話を聞いてほしい」モードには、たとえば、ピアカウンセリングの手法を使って、別枠で対応できるのではないかと考えます。</p>
<p><strong>(2)大きい・小さい、視覚障害者の自助グループ</strong><br>現状:当事者やその支援の組織、また、それぞれの属性を持つ自助グループは少しずつ増えていると実感しています。ただ、患者数が少ない疾患の当事者が集う場所はまだ絶対数が不足しています。<br> 性別、年齢、病名などに関係ない「視覚障害」という大きな括りで構成されているグループに所属することは、「大きな視点で視覚障害を捉え、心の視野の拡がりが期待でき」、その上で、より「わかりえあるという実感を持つために、自分と近い境遇の人たちによるグループで交流を重ねることが有効」です(*1)。たとえば、日本網膜色素変性症協会(JRPS)では、各支部活動の他、会員の属性ごとにアイヤ会(1996年)、ユース部会(2004年)、「親の会」(2017年)、「ミドルの会」(2022年)が順次発足し、小さな括りのグループで会員同士の交流を深めているとお聞きします。<br> また、コロナ禍以降、リモートでのやりとりが増えました。見えない・見えにくい方々がこうしたツールを使うには、手順の面倒さもありますが、今までなら出向くことが難しかった遠方の人たちやグループと交流を持つこともできるようになっています。それを活かすためには、全国にどういう属性の当事者のグループがあるか、その運営や活動などを検索できる仕組みがあればいいなと思います。</p>
<p><strong>(3)視覚障害者が自由にデザインする有償の訓練や生活支援サービス</strong><br>現状:筆者が知る限りでは、残念ながら、このような有償サービス利用者が増えているという実態はないと思われます。<br> 前著執筆後、当事者からのご希望があり、フリーランスの専門職に有償の訓練を依頼したことが幾度かありました。いずれの場合も、今すぐ訓練が必要な事情があるものの、「受給者証がない」、あっても「訓練が数か月待ち」、あるいは、「希望の期間の訓練は受けつけてもらえない」など、フレキシブルな対応ができないケースでした。その結果、どの方も、専門職が提供する対価に見合った訓練にとても満足され、後に公的制度を利用できるようになっても、必要な時には有償サービスを利用されるようになっていかれました。<br> 無償、低料金の国の制度を利用することは、納税者の権利であり、それを否定するものではありません。しかし、その制度では利用できるサービスがなく、その結果、必要な援助が望めない場合には、相応の対価を支払い、目的をかなえることも必要な時代になってきているのではないかと思います。その結果として、自分の力で自由を勝ち取ることができるのならば、その先には、真の自立があるでしょう。</p>
<p><strong>(4)法律・税務・労務のワンストップサービス</strong><br>現状:需要がほとんどなく活動休止となっています。<br> 法律や税務、労務に関わる作業はただでさえ煩雑なものです。2014年当時、筆者自身もチームの一員として「Handicapped person Support Team(HST)」を発足させたばかりでした。主な活動内容は、視覚に障害がある方が無用な心配をせずに、法律・税務・労務の専門家に繋がれることを目指したワンストップサービスです。当初、数ケースのご相談があり、必要な専門家が連携して対応をさせていただきましたが、その後、我々のアピールが弱く、活動を発展させるに至っていません。<br> 見える・見えないに関わりなく、我々の日常には、「自力では片づけるのが困難なやっかいな事柄」が降ってきます。相談案件がないのではなく、必要な方々に届くための我々の工夫が不足しているようです。そのためには、視覚リハビリテーション(以下、視覚リハ)のいろいろな分野からご意見を伺い、情報の発信の仕方を見直すことが必要ではないかと考えます。</p>
<p><strong>(5)支援者のためのトレーニング </strong><br>現状:職能集団ごとの会ができたり、専門性を高めるための研修システムができつつあります。しかし、対人援助者に不可欠である「安心できる場と仲間で自分たちの仕事を振り返る」ことを実現するには、まだ十分とはいえません。<br> 前著では「小さいグループでもいいので有志が集まって、各自が自分の仕事を安心して語れる場を作ってみてはどうでしょうか」と書きました(*1)。筆者は心理臨床の世界で、この「語れる場」の有効性を実感していることから、視覚リハの世界でもこのしくみを紹介し、ぜひ拡げたいと考え、話が通じる仲間に少しずつ実施を持ちかけました。<br> その結果、現在ではいくつかの施設で、継続的に実施する「語れる場」が実現しています。当初は慣れない試みに怯えもあったと思われますが、経験を重ねていくうちに、その場が当事者支援に役立つこと、そして、それが自分たちにとって楽しい時間であることに気づいていただくことができています。今後も、少しずつこの「語れる場」を増やしていきたいと思っています。</p>
<p><strong>2.今後「あるといいな」の事柄</strong><br><strong>(1)巷にあふれる移動支援機器情報の整理</strong><br> 従前から赤外線を用いるなどの移動支援機器は存在していましたが、ここ数年のそれらの開発スピードには目を見張るものがあります。多くの支援機器が出てくると、個別のニーズに応じた対応が期待できます。しかし、その種類が、あまりに急速に増えてきたことで、当事者のみならず支援者でさえ、その情報に追い付けなくなっていると聞きます。<br> 今後もこの傾向は続くと思われ、続々と世に送り込まれる移動支援機器を、機能別に整理し、現時点でのメリット・デメリットをわかりやすく提示したり、当事者の個別のニーズに応じた説明が的確にできたりするような仕組みの構築が望まれるのではないでしょうか。</p>
<p><strong>(2)福祉の専門特化</strong><br> 視覚リハのニーズは年齢や見え方、また、生活状況によって多岐にわたります。特に介護保険と障害者福祉が複雑に絡む65歳以上の高齢者対応、障害者年金受給などは、高度な知識とそのアップデートを必要とします。そういう中で、視覚リハ施設として、また、視覚リハ専門家として、「特にこの分野や年代のことなら任せてください!」という仕組みができるといいのではと思います。<br> つまり、支援者同士、組織同士で連携・協働して、得意分野の支援を行うのです。我々心理職の多くは、自分の専門分野を持っています。たとえば医療、教育、福祉などで、さらには、子ども、青年、高齢者といった世代別にもあります。ジェネラリストであると同時に、ある分野のスペシャリストでもある…そのようなあり方が、支援者に無用な負担を強いず、かつ利用者に対し、より貢献できる支援の枠組みを作り出すのではないかと考えます。</p>
<p><strong>(3)家族支援のあり方</strong><br> 当事者家族の集いでよく出る話題は、「親亡き後の子どもの行く末」についてです。「障害がある」、さらに「配偶者がいない」子どもともなれば、心配の種が尽きないのは想像に難くありません。親が元気なうちに、「不便はあっても、我が子はちゃんと日常をこなしていけるんだ」と確認できることは、家族の安心、落ち着きに繋がり、ひいては子どもを支えることに繋がると思います。<br> そのために親が生前にしておくべきことは何か、また、日常で親がサポートする必要があること、逆に直接手を出さず見守るのがよいことは何か、それらを少しずつ学べるフランクな勉強会があるとよいかもしれません。</p>
<p><strong>(4)ECLO</strong><br> 最後に、昨今、日本でも注目を集めている患者支援のワンストップサービス「ECLO」について柏倉論文(*2)を引用しながら概説します。<br> ECLOとは、Eye Clinic/Care Liaison Officerの略で、イギリスの眼科に配置されている眼科連携職員を指します。日本では「失明時アドバイザー」と訳されることもあります。ECLOの資格を得るには、ロンドン市立大学に設置された眼科サポート研究コースで、眼の病理・生理・心理に関する専門知識、LVケア、視覚リハ、LVエイド等の支援機器、視覚障害認定にかかる申請手続き、福祉サービス受給のための法的手続き、病院外の社会資源との連携業務、カウンセリングをはじめとする精神面の支援、特別支援教育などの研修を修了する必要があります。<br> また、その役割は、①医師の診断内容を患者が理解できるよう助言する、②患者を必要な社会資源に結び付ける、③治療を受けながら送る生活を患者自身が自己管理できるように支援する、④地域における自立生活や治療に関する情報を提供することによって、患者が自己決定、自己選択できるよう後押しする、などがあります。<br> ECLOがその機能を充分発揮するためには、眼科医療におけるチームの一員として認知されることが前提です。視覚障害当事者のECLOは1サポーターとしてではなく、資格を取得した専門職として支援に関わっており、このシステムは、彼らの職域開発としても機能しています。<br> 2022年度、日本視覚障害者団体連合において、「失明の可能性の告知を受けた人の早期相談支援体制の構築に向けた調査研究(日本版ECLOの検討会)」が実施されました。<br>日本ではこのような支援は、医師、視能訓練士、歩行訓練士、盲学校教員、相談支援員などが、それぞれ個別に、また専門外でも知識のある分野を担当して関わっているのが現状です。したがって、ECLOの導入にあたっては、この制度を「そのまま日本に持って来られるか」について、慎重な検討が必要になってくるでしょう。<br> 医療の現状では、国家資格者以外をチームに入れること、また、情報を共有することの制限があり、その部分をどう整えるか、またECLOのような専門職を、どういう機関で誰が養成するかも課題です。<br> イギリスでは、視覚障害者協会(RNIB)が、初年度は配置にかかる人件費の全額を負担しているということです。養成や配置に関するこうした財政的基盤を整えることも必要になるでしょう。</p>
<p><strong>おわりに</strong><br> 前著で挙げた項目について見直し、また、新たな視点を加えて筆を進めました。読者のみなさまへ、未来に向けての問題提起となれば幸いです。昨今の目を見張るSNSやITの進化は、見え方に困難がある方々にとって、大きな福音ではあります。一方で、その恩恵を受けにくい方々が、取り残されていく、両極化の傾向も出てきています。<br> 支援を必要としている方が自分のニーズをきちんと他者に伝えるためには、ハード面だけでなく、ソフト面での支援が、より細かく要求される時代になってきつつあるのではないでしょうか。<br> リアル・バーチャルの両面から、支援者が、当事者それぞれに応じたニーズを拾いあげていく。そういう仕組みが、今後はますます必要になってくると考えます。<br>筆者の専門である心理臨床のフィールドから何ができるのか常に考えながら、視覚リハの現場に身を置きたいと思っています。</p>
<p><strong>【引用文献】</strong><br>(*1)「あったらいいな、こんなサポート」田中桂子 『月刊視覚障害』pp.42-49 2014年10月<br>(*2)「イギリスにおける中途視覚障害者支援の動向-RNIBが推進するECLOの役割を中心に-」柏倉 秀克 日本福祉大学社会福祉学部『日本福祉大学社会福祉論集』第136号 pp.1-14 2017年3月</p>
<p></p>
私1年ぶりにプールに行けました。そして水泳を続けられるかもしれません。
tag:movabletype.net,2003:post-2369977
2023-05-03T05:25:00Z
2023-05-03T07:37:53Z
体重が足にかからないのでプールでの運動が良いが、ブールサイドを安全に歩行できるようにしたいと言う当事者のニーズが、どのようにかなったかについての記述
吉野由美子
<p> <strong>最近の私</strong><br> このブログでも何回か書かせていただいたのですが、私、病的近視による網脈絡の新生血管増殖という病気が2年前から始まって、治療を続けていますが、なかなか新生血管の活動が収まってくれなくて、少し視機能が落ちてしまったことなどで、精神的に後ろ向きになっていました。そんな中で、私の足の障害も悪化して、特に左足の変形性関節症がひどくなって、歩くとき痛みが出るようになりました。<br> 私の整形外科の主治医の先生曰く「元々のX脚を矯正するために約60年前に金具を入れているし、変形性関節症の手術も非常に難しいし、もし,転んで骨折などしたら<br>その手術などもとても難しいから、温存を心がけて,大切に付き合って行くしかない」とのこと。「足に負担をかけないように,あまり歩かないように」とのことで、今年に入ってから。家の中の伝い歩きと、本当に短い距離を右側に杖をついて<br>歩き程度になっていました。電動車いすに乗って,買い物とか外出とかにはあまり不自由はなく過ごせていましたが、足の筋力は衰えているなと感じていました。</p>
<p> 主治医は,プールでの水中歩行とか,泳ぎとかは、足の負担が軽くて良いのだが都言っていたし、私も,水の中のあの感覚が好きでしたから、プールに行きたいと思っていましたが。ブールサイドは,とても滑りやすい、だから怖くて,プールに行くことが出来ませんでした。</p>
<p> そんな私が1年ぶりにプールに行くことが出来ました。どうして行けるようになったかを、FBに書いていたのですが、ここにまとめておこうと思います。</p>
<p></p>
<p> </p>
<p></p>
<p></p>
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<div class="xu06os2 x1ok221b">
<div class="xdj266r x11i5rnm xat24cr x1mh8g0r x1vvkbs x126k92a">
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 1 <strong>3月28日に私のFBに書いた記事を元に</strong></div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"><strong>「変形性関節症と杖とリハと保険の話し」</strong></div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 長文になります。興味のある方は読んでください。</div>
</div>
<div class="x11i5rnm xat24cr x1mh8g0r x1vvkbs xtlvy1s x126k92a">
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 私は、眼の他に足の障害も持っています。原因は良く分からないのですが、3歳ぐらいから、大腿骨がXの形に曲がってきて、両膝がぶつかるようになって、良く転ぶようになりました。それで、5歳の時から、大腿骨の所に金具を入れて、O脚の形にする手術を17歳までに3回受けて、そして、右側に杖をついて、他の人の半分ぐらいの速度で歩いていました。</div>
</div>
<div class="x11i5rnm xat24cr x1mh8g0r x1vvkbs xtlvy1s x126k92a">
<div dir="auto" style="text-align: start;"><span><a></a></span> 68歳の時に、第5腰椎の圧迫骨折をしてから、その痛みなどで、今まで通り杖をついての歩行が10分も出来なくなったので、介護保険でリハビリ中心のデーサービス施設に通うようになり、日常は、電動車いすを使うようになりました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 現在75歳になった私は、この3ヶ月ほど、左膝を地面について歩くと痛みが出るようになり、主治医が変形性関節症の悪化と診断し、元々障害のあるので、この変形性膝関節症は、手術適応ではなく、無理に沢山の距離を歩いたりしないで、温存して大切に使うようにと言われました。</div>
</div>
<div class="x11i5rnm xat24cr x1mh8g0r x1vvkbs xtlvy1s x126k92a">
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 電動車いすは、とても便利なので、外出や買い物などでは大活躍してくれるのですが、家の中のちょっとした移動や家事などは、伝い歩きで行っています。この自分で歩けることは、とても重要で、3段ぐらいの階段があるような美味しい飲み屋さんなどにも入れるし、私の生活の幅を広げてくれる大切な要素です。だから、私のリハビリの目標は、この能力を落とさないことなのです。でも、この関節症のおかげで、歩くという運動がしにくくなり、足の筋肉が落ちてきています。無理に左足に体重をかけると痛みが出ますし、いつまで膝が持つのか心配でたまらなくなります。</div>
</div>
<div class="x11i5rnm xat24cr x1mh8g0r x1vvkbs xtlvy1s x126k92a">
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 主治医やデイサービスの担当者の意見では、両杖歩行にすると、左膝にかかる負担が少なくて済むと言うことになり、装具の業者にお願いして、右側で使っている杖と、同じタイプの杖をオーダーメイドで作って、使って見ることにしました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 昨日、その打ち合わせで業者の方に会い、見本に持ってきていただいた杖を今使っている杖と高さは合わないのですが、左側にに持って試して見たりしてみました。その内に「本当に両杖にすると効果があるのかしら」、「8年前に作った今の杖の長さは、これで良いのかしら」、「両杖歩行は、どんな風にするのかしら」などと次々に疑問が出て、それを業者の方に聞いていただいていたら、「それでは主治医にお願いして、理学療法士の意見を先に聞いて見たらどうでしょう」と言ってくださって、主治医の予約日ではなかったのですが、主治医の診察を受けられるように段取りをしてくれました。</div>
</div>
<div class="x11i5rnm xat24cr x1mh8g0r x1vvkbs xtlvy1s x126k92a">
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 主治医に私の疑問を具体的にぶつけたら、「それでは理学療法士の方に紹介するから、診てもらったら良いよ」と言ってくださり、午前中の診察が終わる頃に、理学療法士の方と会うことが出来ました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> そこで、その方が「介護保険を利用していると外来でのリハの依頼は受けられない(リハに関して介護保険と医療保険での診療は、外来に関しては出来ない-入院すると介護保険の使用は入院期間中は、停止なので医療保険でのリハが受けられる)」と説明されて「だけど相談に乗りますよ」と言ってくださって、リハ室に案内してくださいました。</div>
</div>
<div class="x11i5rnm xat24cr x1mh8g0r x1vvkbs xtlvy1s x126k92a">
<div dir="auto" style="text-align: start;"> リハ室に入ってびっくりしたのは、壁一面に、様々な杖が収納されている棚があったこと、そして、既に私が今使っている杖の長さに合わせて、もう一つ杖を準備してくださっていて、早速それを左側に持って、両杖で歩行が出来ました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 私が歩くところを、その方見ていてすぐに「方杖だと、左右に揺れて不安定な歩き方になるが、両杖だと、体が揺れずに安定して歩けるから、両杖にする効果があります」と言われました。両杖で歩いて見た私も、楽に歩けたことを実感しました。もう一つの疑問、杖の長さについても、「今のままで大丈夫、低くしてしまうと、姿勢が悪くなる」と即答してくれました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> このやりとりで、私は両杖にすることを決断して、安心してオーダーメードの杖を注文することが出来ました。</div>
</div>
<div class="x11i5rnm xat24cr x1mh8g0r x1vvkbs xtlvy1s x126k92a">
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 介護保険サービスを利用していると医療保険との重複になり、外来でのリハは受けられないということは、前から知っていましたが、昨日のやりとりの中で、私の中に疑問が一杯になりました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 介護保険でもデイサービスなどでリハが受けられますし、最近は、リハ特化型のデイサービス施設も増えているのは知っています。スタッフの中にPTがいるところも増えているようです。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> でも、デイサービスでのリハは、急性期の物ではないと思うのです。今の状態を維持し、より良くする物です。それに、ドクターの細かい指示で動く病院のリハとは違います。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 介護保険でデイサービスに通っていても、私のように病状が悪化したり、入院に至らない軽い怪我をしたりして、その状態に対応する医学的な意味でのリハが必要なのではないかと思います。長く通い続けると言うのではなく、専門家のアドバイスを受けて、基本的なやり方を教わって、そして、それを生かして日常生活を送ること、デイサービスにも、その病院でのリハの方法が伝えられて引き継がれることは、とても大切なのではないかと思います。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> この外来でのリハは、介護保険を受けていると、全て受けられないというのは、とてもおかしい気がしました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 今医療と介護の連携と言うことが盛んに言われていますが、このような制度の壁があったら、連携は阻まれると思います。連携には、財政的な保障が必要ですから、 </div>
</div>
<div class="x11i5rnm xat24cr x1mh8g0r x1vvkbs xtlvy1s x126k92a">
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 私は、運良く、良い主治医に恵まれ、親切な業者の方や、リハの専門家の方に巡り会えました。それは幸いですが、このままでは、とてもおかしいと感じたのです。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> </div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> <strong>2 4月24のFBの記録から</strong>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 3月28日の私のFBで、「変形性関節症と杖とリハと保険の話し」を掲載しましたが、その時に、整形外科の外来で理学療法士のアドバイスを受けることができることの大切さを述べました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> その時、主治医や理学療法士の方や,補装具の業者の方と綿密に打ち合わせをして作っていただいた杖を、一昨日試して見ました。右の片方の杖だけで歩いている時と違い、歩幅が広くなり、左右に揺れなくなり、歩く速度も倍近く速くなりました。そして主治医からは、痛みが出ない範囲で,歩いて見たらとお墨付きをいただいて、わくわくしています。昨日は,デーサービスのプログラムの中に,本当に短い距離ですが,外歩きが入って、たった50メートルほど外を歩けて,心がウキウキしました。やっぱり自分の足で歩けるって良いですね。(後略)<br> 写真を撮っていないのが残念ですが。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> </div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> <strong>3 滑らない杖のゴムのことを聞いて</strong><br> 両杖歩行にする際に、主治医と補装具の業者の方がいる前で、「プールでの歩行を再会したいけれど、プールサイドで滑ったらと思うと怖くてと」という話しをしました。そうしたら業者の方が「両足義足だったり,片足切断の方がサッカー競技をやるときに、滑らなくて安定する杖のゴムがありますよ」と教えてくれて、そのゴムを取り寄せてもらうことにしました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 両杖で歩行も安定し、滑らない杖のゴムをつけたら、プールサイドを歩くことも</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;">出来るかもしれないという可能性が出てきました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> そこで、5月1日に、1年ぶりにプールに行って、本当に滑らないか,安定して歩けるか、恐る恐る試して見ました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 本当に水があっても滑らないし、両杖で安定して歩けるので、これなら,プールで水中歩行をしたり,水泳をしたり出来そうです。<br> それと,温泉やスーパー銭湯にも行けそうです。水とお風呂が好きな私、夢がどんどん膨らんで来ています。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> </div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 4 <strong>どうして障害者の使う器具と高齢者が使う器具は違うんだろう?</strong></div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> ここまで書いて来て、ふと気づきました。そういえば,デーサービスで杖を使っている人は、いわゆる高齢者用の杖で,肘の上に支えがなく,細いタイプの物ばかり、私のような医療用の杖を使っている人を見たことがないのです。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 確かに医療用の杖(障害者用)は、病院のリハの所や,医療器具屋さんに行かないと買えないようです。高齢の方が使っている杖は、ネットでも良く見かける物で、医療用とは明らかに違います。勿論,高齢者用の杖も安全だとか利便性を追求しているとは思うのですが、その方の体の状況とか、杖を使う目的などによっては、医療用(障害者用)の杖の方が使いやすいのではないかと思いました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> でも、高齢者の介護(リハ)の世界には,障害者用の杖などの情報はあまり入ってこない用なのです。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> ここでも、医療用(障害者用)の装具と,介護用の装具、いつの間にか区別があるように思えて、とても気になりました。</div>
<div dir="auto" style="text-align: start;"> 高齢者用とされている物も、医療用(障害者用)とされている物も、どちらの情報も、関係者が広く知っていて、利用者のニーズに合わせて、選べると良いのにと思った次第です。
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視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から2022 第11回 東北地方での視覚リハと防災
tag:movabletype.net,2003:post-2347279
2023-04-05T05:35:00Z
2023-04-05T06:51:54Z
東日本大震災の発災後、その後の視覚障害者の支援を基礎として、今後の災害に備えて、どのように防災・減災に取り組むべきかについて
吉野由美子
<p></p>
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2683085 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/218-2023%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B34%E6%9C%88%E5%8F%B7-320wri.jpg" alt="雑誌視覚障害2023年4月号表紙" width="320" height="240">
<figcaption>雑誌「視覚障害」2023年4月号表紙</figcaption>
</figure>
<p> 今年の春は,とても暖かい春で、東京では,3月の半ばに桜か開花、でも、桜の季節は,花冷えになり、雨も降りましたが,今年は,激しい風が吹き荒れることもなかったせいか、ずいぶん長く満開の桜を楽しむことが出来ました。<br> そんなとても良い季節なのですが,私の住んでいるマンションでは、大規模修繕工事で、バルコニーに何も置けず,そして毎日タイルの補修や塗装のために、騒音,作業の方達がベランダに入ってくるので,窓も開けて置けず、ちょっぴり憂鬱です。<br> かわいそうなのは、ベランダで育てていた植木達、工事期間中は,部屋で、私と同居することになりました。そんな中ですが、今シクラメンが満開。植物たちもそれなりに頑張ってくれています。</p>
<p></p>
<p></p>
<p></p>
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2683108 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/219-%E9%83%A8%E5%B1%8B%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%81%AE%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%81%9F%E3%81%A1-320wri.jpg" alt="窓際に並べておかれているシクラメンの鉢と,名前も知らない慣用植物の写真、手前のシクラメンは,真っ赤な花が今咲き誇っています。" width="320" height="240">
<figcaption>部屋の窓際に置かれたシクラメンと慣用植物の鉢</figcaption>
</figure>
<p>さて,前置きが長くなりましたが、私がコーデネートさせていただいているシリーズ「視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から」の4月号の内容を、月刊視覚障害と著者の金井さんの許可を得て,私のブログでも公開させていただきます。今回は、かつて視覚リハの空白地帯と呼ばれていた東北地方で、3.11東日本大震災の発災後、視覚障害者の支援に携わった貴重な経験を踏まえての、現在、そしてこれからの災害時の支援についての貴重な記事です。</p>
<p></p>
<p></p>
<p></p>
<p><strong><span class="asset asset-file at-xid-2683160"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B32023%E5%B9%B44%E6%9C%88%E5%8F%B7.pdf" title="視覚障害2023年4月号.pdf">視覚障害2023年4月号.pdfをダウンロード</a> </span></strong></p>
<p><strong><span class="asset asset-file at-xid-2683160">視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から2022<br>第11回 東北地方での視覚リハと防災<br>~かつて視覚リハ空白地帯だった東北での役割<br>公益財団法人 日本盲導犬協会<br></span><span class="asset asset-file at-xid-2683160">視覚障害サポート部 管理長 金井 政紀(かない まさのり)</span><span class="asset asset-file at-xid-2683160"><br><br></span></strong></p>
<p><strong>はじめに</strong><br> 東日本大震災から12年が過ぎました。その後も熊本地震や西日本豪雨など日本全国で災害は起こっています。東日本大震災が発生した2011年当時、私は仙台市にいましたが、今は横浜で勤務をしています。当時の記憶が薄れていく中で、被災者として、支援者として、見たもの、感じたものから、「防災・減災と視覚障害リハビリテーション(以下、視覚リハ)の役割」について、東北での自らの経験を通して考えてみました。</p>
<p><strong>1.東北唯一の盲導犬育成施設</strong><br> 日本盲導犬協会では、「東北に盲導犬育成施設を」という志のもと、「東北福祉あったか計画」を掲げ、仙台市へ施設建設の支援要請を行ったところ、1995年に仙台市交通局の一角を提供いただき、仙台事務所を開設。1997年には、市職員用のグラウンドを仙台市から無償貸与されることも決まり、2001年、ついに「東北唯一の視覚リハ施設」として「日本盲導犬協会 仙台訓練センター(以下、センター)」が誕生しました。<br> センターの特徴として、開設当初から盲導犬育成事業だけでなく、視覚リハ事業にも重点を置いた施設となっています。</p>
<p><strong>2.視覚リハを身近に</strong><br> 開設当時は、東北地方の目の見えない・見えにくい人(以下、視覚障害者)が、視覚リハ訓練を受けるためには、盲学校へ入学をするか、栃木県那須塩原市、埼玉県所沢市、北海道函館市にある国立障害者リハビリテーションセンターへ入所をして、訓練を受けることが主流でした。しかし、「長期間、家を空け入所をして訓練は受けられない」「視覚リハ訓練は何をするの?」「訓練は厳しいですよね」という声が少なくありませんでした。また、「盲導犬協会に相談をしたら、盲導犬を持たされてしまうのでは」という声も聞こえていました。<br> 当時の訓練部長は当協会の特性を活かして、訓練士が自宅に伺う「在宅生活訓練」や1週間の宿泊型の「視覚障害短期リハビリテーション(以下、短期リハ)」、視覚障害児とその家族を対象とした「ワン!ぱくっ子サマースクール(以下、障害児キャンプ)」と、次々と新たな形の事業を行っていきました。このような事業展開に、当時は協会内外から「1週間で何ができるのか」など賛否の意見がありました。しかし、協会の「短期リハ」に参加をして、白杖歩行や点字を知り、その後に入所施設での訓練を受けた人もいました。「障害児キャンプ」に参加した時は小学生で、その後、「短期リハ」に参加し、成人して盲導犬ユーザーになった人もいます。偉そうに聞こえるかもしれませんが、視覚リハ訓練の垣根を下げ、身近なものとして協会の存在を知ってもらうことができたのではないかと感じています。<br> センターは盲導犬育成施設ですから、盲導犬ユーザーを増やすことも大切です。しかし、実際は目が見えにくくなってすぐに盲導犬を持つという流れは多くありません。その中でセンターが関わった盲導犬ユーザーは、白杖歩行訓練を受けて盲導犬協会を知り、その後に盲導犬ユーザーになる人が少なくありませんでした。センターは開設して20年以上が経ちますが、現在も「在宅訓練」「短期リハ」「障害児キャンプ」を継続して行っています。</p>
<p><strong>3.東日本大震災発生</strong><br> 2011年3月11日午後2時46分、東日本大震災が発生しました。仙台市内で震度6強の揺れとなりましたが、センター内にいた訓練生や来場者、職員や犬も幸いにけがもなく、施設自体の大きな損壊は免れました。そして、発生直後から盲導犬ユーザーや視覚リハ事業利用者の安否確認作業を行いましたが、被災地のセンターからはほとんど繋がらない状況でした。当協会は、仙台市の他に神奈川県横浜市、静岡県富士宮市、島根県浜田市に訓練センターがありますので、他センターから安否確認を行うことができ、次第に状況が分かり始めました。<br> 震災当日にドッグフードが入荷されていたので、犬たちの食事は確保でき、人の食料はセンター隣のコンビニエンスストアから分けていただいたり、職員が持ち寄り、皆で分け合ったりしました。また、震災直後でガソリン確保の保障もない状況にもかかわらず、栃木県から食料や水などの支援物資を届けてくださった人もいました。そのような多くの温かいご支援に職員は励まされ、盲導犬ユーザー宅訪問や安否確認作業を行いました。</p>
<p><strong>4.支援対策本部が立ち上がる</strong><br> 震災当日から約2週間後の3月28日に社会福祉法人日本盲人福祉委員会(以下、日盲委)のもとに「東日本大震災視覚障害者支援対策本部(以下、対策本部)」が設立され、4月1日に当協会は、対策本部への施設提供、職員の派遣、資金確保などの全面支援を決めました。そして、センター内に対策本部宮城県支部が置かれました。ここを足がかりに、被災した視覚障害者が必要としている支援を把握し、必要物資を直接に届けるという対応を始めました。<br> しかし、ここで問題となったのは、支援に不可欠な視覚障害者の居住地情報が無いということです。そのために、まず視覚障害当事者の会員リスト、点字図書館などの利用者リスト、盲学校の卒業生名簿などから、被害の大きな沿岸地域の視覚障害者リスト作りを始めました。<br> 白杖や音声時計などの支援物資の集積と並行して、全国から視覚リハの専門家が集結して、岩手・宮城・福島3県を訪問し、支援する活動も始まりました。各避難所を回り、視覚障害者がいないかを探しましたが、なかなか見つからず、名乗り出られることもほとんどありませんでした。<br> 行政へ依頼をしても個人情報保護という理由から、視覚障害者の名簿はもらえませんでしたが、同年6月になってようやく「県から郵送する方式」で被災地域の視覚障害者へハガキを送ることができ、困りごとや要望を聞くことができました。被災地域全体で約4,000人に送り、要望があった1,455人の視覚障害者に支援を行いました。</p>
<p><strong>5.震災後も続く支援</strong><br> ハガキを返信した人、電話が繋がった人とは、震災後も繋がりを持ち続けることができました。日盲委では、被災者へ向けて毎年、電話かけを行い、近況確認を行うなどの支援を継続しました。数年経った後に、災害支援員のメンバーとともに現地の訪問も行いました。<br> しかし広範囲のため、皆さんに行き渡る継続的な支援ができたかというと、そうではないと思います。しかし、細く長く続けること、今でも繋がっているということが大切だと思います。<br> 1年後、2年後、3年後に、住環境や生活が変わる人もいます。被災者に対して白杖歩行訓練やスマホなどのコミュニケーション訓練なども実施しました。また、被災者の方は、避難所から仮設住宅、そして復興住宅へ移り住むことで、周りに住んでいるのは知らない人ばかり、知らない場所での生活が始まります。そこで、医療機関や地域のコミュニティセンターなどで「見えない・見えにくい方の相談とすぐに役立つ生活講習会」を開催しました。視覚障害当事者には、白杖歩行やパソコンやスマートフォンの操作体験や便利グッズの紹介などを、家族や支援者には、手引き歩行やサポートの仕方を説明させていただきました。<br> 会を重ねるごとに参加者も増えていき、当事者のみならず、医療支援者や施設スタッフなどの参加もありました。内容も視覚障害全般の一般的なものから、鉄道利用講習会というようにテーマを絞った講習会も開催しました。正しい情報を当事者に伝えることはもちろんですが、病院スタッフなどの支援者にも視覚リハに関する情報を伝えることで、通院する視覚障害当事者へ、その情報が早く届けられることに繋がるのではと考えました。しかし、コロナ禍になり、病院での講習会開催が困難となってしまいました。</p>
<p><strong>6.新型コロナウイルス感染拡大の中で</strong><br> コロナ禍になり、生活や行動に制限が多くなりましたが、オンラインシステムを利用したコミュニケーション手段が広がりました。「Zoom講習会」を企画し、Zoomの使い方を知っていただきました。そして、オンライン交流会を開き、当事者同士のコミュニケーションの場を提供するほか、オンラインによる「盲導犬情報セミナー」を開催。集団での講習会やイベントはできませんでしたが、コミュニケーションが取れる機会は作ることができました。一方で、在宅訓練はマンツーマンで行うことが多く、コロナ禍においても感染対策を取り、各種訓練を継続しました。</p>
<p><strong>7.震災やコロナ禍を通して</strong><br> ここまで東日本大震災からコロナ禍におけるセンターの活動を書いてきましたが、センターだけの力ではここまでできていなかったでしょう。当協会は東北以外に三つの訓練センターがあったことで、盲導犬ユーザーの安否確認のフォローをスムーズに行うことができました。被災地の視覚障害者支援では、県内の関係団体はもちろんですが、対策本部の活動を知り、全国から歩行訓練士をはじめ、視覚リハに関わる多くの人が支援に駆けつけてくれました。また、当事者や当事者団体、視覚リハ施設、盲学校、眼科医、点字図書館、眼鏡店、機器業者、そして行政との連携も不可欠でした。平時はもちろんですが、災害などの有事の際に他団体と連携できることほど心強いことはありません。<br> 大災害時には、全国からの支援者が集まり一緒に活動することになりますが、時間が経ち、平時に戻っていく中で、最後はその地域で支援を完結することになります。現在47都道府県すべてにスマートサイトがあり、そこへ情報や相談が集約されることが望ましいと考えます。<br> 一方で視覚障害当事者は、まずはご自身で自分の身を守る「自助」を考えることが重要です。災害時に家族がいないかもしれません。次に「共助」です。地域で開催される避難訓練に白杖を持ち、盲導犬を連れて参加しましょう。地域や町内の方々に「地域に視覚障害者がいる」ということを知っておいてもらわなければいけません。国や市区町村の支援となる「公助」は最後になります。</p>
<p><strong>8.地方と都市部の両方を知って</strong><br> 私は東日本大震災時は仙台で、現在は横浜で仕事をしています。時々、「首都圏に大地震が起きたらどうなるのか。どう動くのか」を考えることがあります。仙台のようにすぐに盲導犬ユーザーの支援に当たることはできるのだろうか。仙台では、カバーをする地域に対して現地にいる人だけでは人手が不足していましたが、関係団体が少ない分、情報収集や連携が早くできました。<br> 一方、横浜では支援団体が多く、人手の確保はできそうですが、反対に人の多さが混乱を招く原因にもなりかねません。また、被災状況の悪化の影響を大きく受け、道路状況も悪く、交通機関で動くことも容易ではなくなるといったことも想定されます。スマートサイトに関係する団体も多く、情報収集が困難になる可能性が高いので、平時から災害に備えたシミュレーションをしておく必要があると思います。地方と都市部ではそれぞれに良い面と悪い面を持ち合わせているのかもしれません。</p>
<p><strong>9.正確な情報提供の大切さ</strong><br> 東日本大震災で避難所回りをしていく中で、「音声時計を知らない」視覚障害者が少なくありませんでした。私たちは、「持っていなくても知っているだろう」という思い込みがありました。震災当時と比べ、今はSNSが発達して、たくさんの情報が飛び交い、誰でも簡単に情報を手に入れることができます。だからこそ、発信する側は「正確な情報提供」が必要で大切なのです。ましてや、それが災害時となれば、情報が錯綜しますので「絶対に正確な情報提供」でなければいけません。<br> 少し話は変わりますが、盲導犬に関する情報が意外と世間に知られていないこともあります。「盲導犬は無償貸与」「全盲でなくても取得可能」「仕事をしていなくても持てる」という正しい情報が社会に伝わっていません。「盲導犬は購入する」「全盲でないと持てない」と間違った情報として信じ込んでいる人もいらっしゃいます。<br> 「正確な情報」だけでなく、早いタイミングで情報を届けることも大切です。協会の発信だけでは視覚障害当事者に届きませんので、最近の協会の一つの動きとして、行政へのアプローチを積極的に行っています。窓口に尋ねてきた視覚障害者へ正確な情報を伝えてもらうためです(本件の詳細は本誌2022年8月号の連載第3回を参照)。</p>
<p><strong>10.地域での広がり</strong><br> センターの在宅訓練は、宮城県や仙台市内だけでなく近隣県でも実施しています。しかし、仙台市から通うため、頻繁に行うこともできず、回数も限られてしまいます。訓練を受けられた方から「もっと、やってほしい」という声がたくさんありました。<br> その声が大きくなり、県内の視覚障害者をはじめ、スマートサイト団体が行動を起こし、結果として、行政で歩行訓練士を採用するケースも出てきました。それが福島県の実例です。当事者からの要望、それを支援する眼科医、盲学校、点字図書館などスマートサイト関係者の皆様の熱意が伝わり、必要性を行政が理解し汲み取られたのでしょう。かつて視覚リハの空白地帯と言われた東北で実現したことの意味はとても大きいと思います。</p>
<p><strong>おわりに</strong><br> 一人では、或いは一団体ではできることは限られますが、それが複数となることで大きな力になり、大きな花を咲かせることができると思います。災害は起こらないでほしいですが、避けて通れないことかもしれません。しかし、今の日本の視覚リハの連携力があれば、災害後の支援は東日本大震災時よりも、熊本地震の時よりも、心強いものになるのではと信じています。それを実現するためにも、個人も団体も、日頃の備えと準備を決して忘れてはいけないのではないでしょうか。</p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2683160"></span></p>
視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から 第10回 ロービジョンケアのその先へ
tag:movabletype.net,2003:post-2319572
2023-03-06T12:02:00Z
2023-03-06T12:51:33Z
開業医として地域に密着して診療をしておられる眼科医のロービジョンケアの様子と、地域の中で視覚障害者の健康や暮らしを考える中で生まれた「ロービションケアのその先」についての考え方
吉野由美子
<p></p>
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2652896 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/216-2023%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B33%E6%9C%88%E5%8F%B7-320wri.jpg" alt="雑誌視覚障害3月号の表紙" width="320" height="240">
<figcaption>雑誌視覚障害2023年3月号の表紙</figcaption>
</figure>
<p>3月に入って、暖かい日が増えてきて、私の腰の痛みや、左膝の関節の痛みも、ずいぶん楽になってきました。それに連れて、私の気持ちも、少し前向きになってきたようです。<br> ベランダの鉢植えに水をあげるために、朝外に出ると、ジンチョウゲの香りが漂って来て、嬉しく思いながら、足下を見ると、育て初めて4年目になるシクラメンの赤いつぼみが、なぜか1輪だけ葉の陰から顔を出していて、嬉しい驚きでした。<br> いつもいつも決まり文句になってしまいましたが、1ヶ月なんてアッという間。雑誌視覚障害3月号が発行されました。<br> 私がコーディネートさせていただいているシリーズ「視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から」も10回目。いつものように、月刊視覚障害編集部と著者の許可を得て、私のブログに掲載いたします。是非お読みください。</p>
<p></p>
<figure class="mt-figure mt-figure-center"><img class="asset asset-image at-xid-2652899 mt-image-center" style="display: block; margin-left: auto; margin-right: auto;" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/217-%E3%82%B7%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%B3-320wri.jpg" alt="こんもりとした緑の葉の間から、たった1厘だけ赤い花が顔を出しているシクラメンの鉢植え" width="320" height="240">
<figcaption>シクラメン 気の早いつぼみが、葉っぱの上に顔を出している。</figcaption>
</figure>
<p></p>
<p></p>
<p></p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2652915"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B32023%E5%B9%B43%E6%9C%88%E5%8F%B7.pdf" title="視覚障害2023年3月号.pdf">視覚障害2023年3月号.pdfをダウンロード</a> </span></p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2652915"><strong>視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から2022</strong><br><strong>第10回 ロービジョンケアのその先へ</strong><br><strong>いけがみ眼科整形外科副院長 眼科専門医</strong><br><strong>澤崎 弘美(さわざき ひろみ)</strong><br><br></span></p>
<p><strong>はじめに</strong><br> 私は現在、神奈川県横須賀市の診療所で眼科の開業医をしております。日々の診療をする中で、視覚障害をきっかけに健康を損ねたと思われる事例をしばしば経験し、私はそれを「視覚障害の二次障害」と考えるようになりました。特に比較的高齢の視覚障害者においてはとても深刻な問題であると感じています。<br> 今回は視覚障害者の健康について、考えていることや取り組んでいることを気ままに書いてみたいと思います。</p>
<p><strong>1.ロービジョンケアに取り組むようになった経緯</strong><br> 開業する以前は他県で勤務医をしておりました。はじめての赴任先で、歩行訓練士の資格を持つ眼科外来看護師が、視覚障害のある入院患者に院内で白杖歩行の指導をしているのを見かけました。思い返してみれば、それが私にとって最初のロービジョンケア、視覚リハビリテーション(以下、視覚リハ)との出会いでした。ただし、その白杖歩行の練習は、眼科のロービジョンケアとして行っていたわけではなく、歩行訓練士である看護師が非公式に行っていたものだったと思います。したがって、私はその患者さんと関わることはなかったですし、当時はむしろ「自分には関係無い」という印象の方が強かったほどです。そのころの私は、眼科医療従事者が視覚障害者のリハビリに関わることなどないと本気で考えていました。30年近く前の話です。<br> その考えが少しずつ変化していったのは、2003年に現在の眼科診療所を開業してからです。地域医療に飛び込んでみると、福祉的な業務や患者さんの日常生活にまで踏み込まないと解決できないことが、考えていた以上に多いことに気付きました。「地域のお医者さん」である私の仕事は、患者さんの命や生活を守ることであり、眼を治療することはその手段の一つであると考えるようになったのです。同じ場所で長く診療していると、進行性の病気で見えにくくなったり失明に至ったりする患者さんも少なからず出てきます。目が見えにくいために生活が困難になっていく患者さんに対して、治療以外にもできること、やるべきことはあるのではないかと思いました。<br> そのような中、大きなきっかけとなった男性がいます。もともとフルマラソンを完走するほどの体力の持ち主でしたが、眼の見えにくさから外を歩くことが困難になり、家族からも外出を禁じられて家に引きこもった結果、あるとき気付いたら、椅子から立ち上がることも大変なくらい足腰が衰えてしまったというのです。目が見えにくいことが原因で、本来元気であるはずの人の健康が損なわれるとなると、眼科医である以前に医師として何もしないというわけにはいきません。視覚障害のある患者さんの健康と生活を守らなくてはと思うようになりました。</p>
<p><strong>2.視覚障害とフレイルについて</strong><br> 「フレイル」とは、虚弱を表す英語のFrailtyが語源で、加齢によって心身が衰弱し、社会とのつながりが減少した状態を指すとして、2014年に日本老年医学会が提唱した概念です。高齢者に限らず若年であっても、条件がそろえば誰でもフレイルに陥る可能性があるとされます。私は、このフレイル、すなわち「心身が衰弱し社会とのつながりが減少すること」が、視覚障害の深刻な二次障害、健康被害ととらえています。<br> フレイルについて少し解説をしましょう。フレイルは三つの要素「身体的要素」「精神的要素」「社会的要素」から構成されます(図1)。フレイルは単に身体的な衰えを指すものではなく、精神的な脆弱性や社会性低下を含む全般的な健康の喪失であるということが重要です。健康とは、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病がない状態や病弱でないことではないとWHOが定義しています(注1)。<br> そしてこの三つの要素は別々に存在するのではなく、お互いに影響し合い、相乗的にフレイルを悪化させるといわれています。これがフレイルの悪循環です(図2)。一度この悪循環に陥ると非常に厄介なのですが、その一方で、フレイルは適切な介入によって予防もできるし改善もできる、ということも大切なポイントです。高齢になるほどフレイルの進行は早く改善も難しくなるので、予防が何より大事になってきます。<br> さて、フレイルの悪循環の図を眺めていると、視覚障害者がこの悪循環に飲み込まれる入り口が、そこかしこにあることに気が付きます。安全に歩行できなければ活動が制限されます。人の顔が見分けにくければコミュニケーションがとりづらく、ひきこもりがちになります。視覚の喪失という悲しみや絶望は心をむしばみます。私は直感的に視覚障害がフレイルの原因の一つになると思いましたが、最近では「視力低下を自覚する高齢者は、そうでない高齢者に比べて4年後にフレイルに陥る率が倍になる」という報告(注2)も出ています。<br> 高齢化に伴い、視覚障害者に占める高齢者の割合も総数も増加しています。人生の半ばを過ぎてからの中途視覚障害者ほど、二次障害であるフレイルに陥らないよう気を付けなければなりません。そのためには、比較的高齢の視覚障害者にも、積極的なロービジョンケアや視覚リハが必要であることは言うまでもありません。が、私は、これらの視覚障害者には、従来の形のロービジョンケアや視覚リハだけでは十分に対応できないのではないかという気がしています。高齢の方の場合、「支援機器を紹介しても学校や職場といったそれらを活躍させる場が少ないこと」、「歩行訓練や同行援護サービスなどを利用してもそもそも外出先が少ないこと」などを考えると、「ロービジョンケアのその先」まで視野に入れた支援が必要ではないかと思っています。次節より、私が関わっているいくつかの取り組みを紹介します。</p>
<p><strong>3.外出機会と運動機会を作る取り組み</strong><br>(1)チャレンジド・ヨガ<br> 「チャレンジド・ヨガ~視覚障がいの方のヨガ」は、視覚障害者の外出機会・運動機会を提供し、当事者同士やサポーターとのつながりから地域コミュニティを創出し、当事者の力を引き出して共に生きる社会を目指す活動をしています。現在は全国26か所の対面クラスや10か所のオンラインクラスが展開されています。神奈川県横須賀クラスは2016年に立ち上げ、月に一度の定期クラスを開催しています。<br> ヨガは畳1畳ほどのスペースで移動せずにできること、複雑な身体の動きが無く比較的安全にできること、人と競わず自分のペースで身体を動かすことができることから、視覚障害者と相性が良い運動と思います。また、呼吸によって心身の緊張をほぐし、心の安らぎを得ることもできるので、障害のために心の不安や葛藤を抱えた方にもお勧めです。高齢であっても、ほかの障害を持ち合わせていても参加できます。<br> 視覚障害者を対象としたヨガ教室は他にもありますが、チャレンジド・ヨガは前述のとおり地域コミュニティの創出を大きな目的の一つとしています。視覚障害者がヨガを教わるという一方通行ではなく、参加者(視覚障害者など)とサポーター(ヨガインストラクターなどの支援者)双方の関わりによって、視覚障害の良き理解者が育成され、地域全体にその理解の輪が広がるといった現象が確認されています(注3)。その結果、サポーターであるインストラクターが、自身のヨガクラスでも自信をもって視覚障害者を受け入れることができ、また、ヨガ以外にも視覚障害者が参加できる場が創出されることもあります。チャレンジド・ヨガのような取り組みが、「ロービジョンケアのその先」の社会資源としてますます活用されると良いと思います(注4)。<br>(2)ラン&ウォーク<br> 年齢に関わらず、視覚障害者の「歩きたい、走りたい」というニーズは多く、2018年から月に一度「ラン&ウォーク」という取り組みをしています。ランニングやウォーキングは、運動器の障害や内臓の疾患さえ無ければ誰でも行える手軽な運動の一つですが、移動に困難がある視覚障害者にとってはなかなかハードルが高いものです。全国各地に伴走伴歩の会はありますが、伴走者の確保が難所となるようです。そこで私たちは、視覚障害者に限らず、だれでも走りたい人や歩きたい人が集まれる場を作りました。視覚障害者や健常者、視覚障害者と同じように外出や運動機会が不足している知的障害者など多様な人が集まります。当日参加した人の中で障害者と晴眼者がペアを作って歩いたり走ったりしています。<br> ここに参加する晴眼者は、視覚障害者と接するのは初めてという人がほとんどです。そのような方には、視覚障害について知っておいてほしい基本事項と手引き誘導方法について、その場で簡単な講習を行います。さらに、希望者にはアイマスクで伴走の体験練習をしたうえで、実際に視覚障害者と歩いたり走ったりしていただいています。こちらから過剰な説明をしなくても、わからないことは直接当事者に聞くなどお互いにコミュニケーションをとることで、初めての人でも問題なく伴走伴歩できます。視覚障害者と一緒に歩くとなれば状況説明が必須ですし、向かい合わせにならないことも緊張をほぐすのでしょうか、初対面でも不思議と会話が弾むようです。お陰さまで、自然な形で市民が視覚障害について理解を深める場になっています。この「ラン&ウォーク」をきっかけに、他の場面でも視覚障害者の支援に関わったり、同行援護従事者になったりする方もいます。<br> ところで、この「ラン&ウォーク」に集う人たちで、一般のランニングやウォーキングのイベントにも参加することがあります。過去には、例えば認知症啓発のためのウォーキングイベントなどに参加しました。視覚障害当事者にとっては、社会活動に参加するということで歩くモチベーションがさらに上がります。また、一般の参加者が、白杖を持って歩いている参加者に気が付いて、「私にもお手伝いできますか?」、「誘導の仕方を教えてください」などと声をかけてくださることもあります。そのようなときは視覚障害を知ってもらうまたとないチャンスととらえ、すかさず声かけや誘導の仕方のリーフレットを渡します。安全に歩けそうなら、その場で視覚障害者と一緒に歩いていただくこともあります。</p>
<p><strong>4.介護の現場に視覚障害への理解を促す取り組み</strong><br> 社会保障制度の原則として、視覚障害者も65歳(特定疾病のある方は40歳)を迎えると、支援の主体が障害福祉制度から介護保険制度優先になります。介護職はフレイル対策や自立支援の専門家です。ロービジョンケアのその先を担う専門家と言えるかもしれません。視覚リハに関わる人は視覚障害者が二次障害に陥るのを予防するために、もっと積極的に介護の専門家と連携するとよいと私は考えています。<br> ところが、介護関係者が目の病気や視覚障害について学ぶ機会はとても少ないのです。そればかりか、介護現場は他の障害についてはそれぞれリハビリテーションの専門家と相談連携できる仕組みが整っているのに、視覚リハに限ってはその仕組みが抜け落ちています。連携しようにも現状では接点すらなかなか持てません。そこで、介護関係者に視覚障害について正しく知っていただくための啓発を行っています。特に視覚リハがフレイルの予防と改善に効果があることを伝えるようにしています。介護の現場でできる正しい配慮と簡単なロービジョンケア、相談先の施設や専門家などを紹介し、ケアプラン作成にあたっては必要に応じて視覚リハ専門家の助言を得るよう提案しています。<br> 介護保険制度は社会の実情に応じて改正が加えられ刻々と変化しています。「地域包括支援システム」は、当初高齢者ケアを念頭に置いた理念として提唱されましたが、2015年には「地域共生社会の実現に向けて、高齢者だけでなく、障害者、子供などへの支援、複合課題にも広げた包括的支援体制の構築を目指す」と改変されています。個々の温度差はあると思いますが、総じて介護関係者の間では、障害者も含めた全市民に対する福祉や共生社会への意識が高まっていると私は感じています。介護の領域では、地域のインフォーマルな資源を積極的に活用することはもちろん、地域に新たな資源を生み出す役割も担っています。高齢視覚障害者は、視覚障害の他にも健康問題や経済的な問題など複合的な困難を抱えていることが多いので、そのような点からも視覚リハ分野と介護分野との連携が進むことが望まれます。</p>
<p><strong>おわりに</strong><br> 視覚障害者の健康維持のために外出機会や運動機会の場を提供することは大切です。しかし、それを「視覚障害者のための特別な場」と考えると、提供できる資源に限界があることは容易に想像できます。専門性の高い視覚リハビリテーションや専門家による支援はとても大切ですし、安心して集える視覚障害当事者同士の仲間づくりも必要です。が、それだけでは地域の中で視覚障害者がますます孤立しがちにならないでしょうか。地域には市民の居場所や活躍の場がたくさんあります。眼が見えないから行けない、参加できないと思っていたそれらの場所に、誰もが当たり前に行けるようになれば、視覚障害者の外出機会や運動機会の選択肢は一気に広がるでしょう。そのためにはそれらへの参加を阻んでいる「壁」を取り除かねばなりません。物理的な壁、制度の壁、心理的な壁、それは社会のほうにも当事者のほうにも、両方にあると思います。その壁を取り除くために、ロービジョンケアのその先として、当事者を意識的に地域の活動につなげたり地域の人を巻き込んだりする支援をしたいものです。<br> 考えてみれば、視覚障害者だけに理解のある地域などありえません。視覚障害者だけではなく、様々な障害や困難を抱えた人が誰でも当たり前のように社会参加できる地域こそが、視覚障害者にとっても自立と健康維持につながるものだと思います。<br> 誰にでも優しい地域づくりは究極のロービジョンケア、と信じて、これからも活動を続けたいと思います。</p>
<p>(注1)Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.<br>世界保健機関(WHO)憲章前文から<br>(注2)Liljas AEM, et al.: Self-reported vision impairment and incident prefrailty and frailty in English community-dwelling older adults: findings from a 4-year follow-up study.<br>J Epidemiol Community Health. 2017;71(11):1053-1058. <br>(注3)当事者とサポーター双方に現れる変化は社会が目指すものの縮図である。(﨑元宏美 2018年 第27回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 活動報告)<br>(注4)チャレンジド・ヨガはインフォーマルな社会資源としての役割を持つ。(高平千世 2019年 第28回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 活動報告)</p>
<p>(図の説明)<br>図1.フレイルは三つの要素から構成される。<br> 身体的要素…(例)サルコペニア、 ロコモティブシンドローム<br> 精神的要素…(例)うつ、認知症<br> 社会的要素…(例)引きこもり、孤独</p>
<p>図2.フレイルの悪循環<br> 以下の1.~5.は1.→2.→3.→4.→5→3.→1.の順に矢印で結ばれており、五つの要素が循環していることを示している。<br> 1.体力・筋力低下<br> 2.活動の制限<br> 3.外出機会の減少、閉じこもり<br> 4.社会参加減少、コミュニケーション不足<br> 5.認知機能低下、意欲の低下、うつ</p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2652915"></span></p>
病的近視における脈絡膜新生血管の活動が再開してしまった-経過報告と今の私の思い
tag:movabletype.net,2003:post-2301200
2023-02-13T02:01:00Z
2023-02-13T07:42:25Z
一度収束したという判断がされても、それで収まってくれない難しい病気だけれど、私は、眼科医療とロービジョンケアと、仲間と知識とを駆使して、より良く見えることに拘り続けたいと思っています。それを可能にするために、異変の早期発見と、最新治療を受けられた背景には、見えにくくて治療の見通しが今はなくても、常に医療から離れないことが大切であることを伝えたい。
吉野由美子
<p><strong>はじめに</strong><br> 2022年9月3日に、この私のブログ上で「病的近視における脈絡膜新生血管増殖が収まった-眼科医療から離れないことの大切さを実感!!」という記事を書いたのですが、そのすぐ後に、新生血管の活動が再び活発になり、その影響で、私の眼の見え方(視力だけでなく、視野や暗い所での色の見分け)が微妙に落ちてきてしまいました。この4ヶ月、その対応に振り回されて、「もっと見えなくなるのではないかという不安」に、精神的にも振り回されて、「増殖が収まりました」という記事を書いたことも振り返るゆとりがなかったのですが、少し自分の気持ちを整理するために、前の記事を読み返して、今について書いておく必要があると感じて、この記事を書くことにしました。<br> 進行性のある眼科の疾患の進み方は、とても大きな個人差があるという知識を持っているので、この記事は、あくまでま、自分の記録ですし、私の一つの例として見ていただきたいと思っていますが、同時に、眼にハンディを持っているロービジョンのある方達に、何かの手がかりになってくれたらなとも思っております。</p>
<h2 class="asset-name entry-title"> </h2>
<p></p>
<p></p>
<p><strong>1 再び新生血管の活動が活発になって5回目の注射を受けた</strong><br> 2022年9月の初めに、4回目の注射で新生血管の活動が収束したらしいという主治医の判断があって2週間ほど経った頃から、左眼の見え方が、またおかしくなってきました。今度は、歪みが出るというのではなくて、視界の右上の方に、ビニールをかぶせたようなモヤモヤが出たり、文字を読んでいると、文字列の一文字・二文字が抜け落ちて見えるようになったのです。<br> 明らかに今までの見え方の異常とは違っていましたが、「何か異常を感じたらすぐに連絡するように」という主治医の指示に従って、9月30日に受診し、検査を受けたところ、新生血管の活動がまたはじまっていました。</p>
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2626639 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/213-2022%E5%B9%B49%E6%9C%8830%E6%97%A5OCTAGON-320wri.jpg" alt="9月30日のocr画像 はっきりと盛り上がった山が写っている。" width="320" height="240">
<figcaption>9月30日のOCT写真</figcaption>
</figure>
<p>それで、10月4日に5回目の注射をして、10月7日に、注射後の状態の検査をした所、幸いな事に、盛り上がった新生血管の山は、収まってくれていました。</p>
<p><strong>2 残念見え方に影響が</strong><br> 5回目の注射で、新生血管の活動は収まったのですが、視力検査では、今まで0.15出た視力が0.1しか出なくなり、暗い所での色の見分けがつきにくくなったり、マンションの郵便ポストのダイヤル鍵の番号が、電動車いすに座ったままでは合わせられなくなる等、日常生活の困りごとが沢山出てきてしまうようになりました。(その困りごとに対するケアについては、また次の機会にまとめて書こうと思っています。)</p>
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2626660 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/214-2022%E5%B9%B410%E6%9C%887%E6%97%A5%EF%BC%AF%EF%BC%A3%EF%BC%B4-320wri.jpg" alt="10月7日のOCT画像。向かって左側に10月7日の結果(新生血管の山が消えている画像、右に9月30日の画像と比較できるように並べている。)" width="320" height="240">
<figcaption>10月7日のOCT画像</figcaption>
</figure>
<p><strong>3 見えにくくなった原因は</strong><br> 新生血管の活動は、収まったのに、見えにくさが増した原因は何なのか、主治医に伺ったり、仕事仲間にいろいろと聞いたりしたところ、新生血管の活動等で、黄斑部にある視細胞が傷ついて、それで見えにくくなっているのだろうということでした。視細胞が完全に死んでしまえば、その回復は望めないのだそうですが、傷ついた程度によって、視力等の回復が望めることもあるとのことでした。新生血管の活動が収まって、視細胞の回復までには時間がかかるのだということでした。<br> 5回目の注射を打ってからは、ほぼ1ヶ月おきに病院に通い、検査を受けながら様子を見ていました。5回目の注射から約14週間経った2023年1月6日の検査でも、新生血管の活動は認められず、私の視力も何とか0.15まで出るようになっていました。それで、今度こそ収束したのかなと、私は期待していましたが、主治医は慎重で、次の検査は、2023年1月30日に設定されました。</p>
<p> <strong>4 またまた見え方に異常が、そして6回目の注射</strong><br> 1月30日の検査日の1週間ぐらい前から、また、左眼の視界の右上の方に、もやがかかった部分が出てきたり、少し歪みも出てくるようになって、「もしかしたら」と、私の中では不安が高まりました。検査日、主治医から、再びの新生血管の活動再会を告げられ、画像も見せられ、2月の7日に6回目の注射を打ちました。注射は無事終わりましたが、3日後に行った視力検査では、視力は0.1しか</p>
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2626836 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/215-2023%E5%B9%B41%E6%9C%8830%E6%97%A5%EF%BC%AF%EF%BC%A3%EF%BC%B4-320wri.jpg" alt="2023年1月30日のOCT画像、再びこんもりとした山が見えている。" width="320" height="240">
<figcaption>2023年1月30日のOCT画像</figcaption>
</figure>
<p>でなくて、新生血管の活動部位に、本当に少量だが出血が見られると主治医から告げられました。<br> 今までは、注射を打つと、新生血管の山は、割に早く収まっていたのですが、今回は、あまり反応が良くないとのことでした。<br> どちらにしても、もう少し時間をかけて様子を見る必要があること、新たに注射を打つとしても、1ヶ月は間を開けないといけないということで、次の診察は、3月10日になりました。</p>
<p> <strong>5 募る不安とどう付き合えば良いのだろう</strong>。<br> 最初に病的近視による網脈絡膜の新生血管増殖という診断がされたのは、2021年の10月、それから1年4ヶ月経ちました。その間、治療という意味では、今できることが充分になされたと思っていますし、主治医との信頼関係もしっかりあると思っています。<br> これは、前から言われていましたが、私の75歳という年齢から考えて、私の症状は、病的近視による新生血管の増殖ではなくて、加齢黄斑変性による可能性もあるのではないかと言うことを主治医もいっていました。が、簡単には判断できる状態ではないようです。もし、加齢黄斑変性からきているものとすれば、今違う注射薬も開発されているので、それを試して見ることもできるとも言われています。<br> どちらにしても、今すぐには動けないようです。それらのことを、私なりに頭では理解しているつもりですが、毎日朝起きる度に、「今日は見えているのか」「見え方に異常はないか」、ふと気づくとそんな事ばかり考えている自分がいます。</p>
<p> 私は、長いこと視覚リハ(ロービジョンケア)の普及活動や、支援活動をしてきましたが、今回の経験を通して、見えにくくなる不安、そしてもしかしたらいずれ見えなくなってしまうのではないかという不安に直面しました。<br> この経験を踏まえて、今までの支援の在り方では不十分なのだと強く考えるようになりました。<br>今は、自分の気持ちが整理出来ない状態ですが、その状態を記録しておき、さらに深く考えられればと思っています。<br> また、状況がどのように進むのかを報告したいですし、整理出来た所から書いて行きたいと思っております。<br> ここまで読んでいただいてありがと宇ございました。</p>
<p> </p>
<p><br> </p>
<p></p>
<p></p>
<p></p>
視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から 第9回 視覚障害者情報提供施設(点字図書館)での視覚リハ
tag:movabletype.net,2003:post-2295327
2023-02-04T05:37:00Z
2023-02-04T06:22:36Z
情報提供施設で行われている視覚リハビリテーションの現状と課題について分析した内容
吉野由美子
<p></p>
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2617911 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/211-%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B32%E6%9C%88%E5%8F%B7-320wri.jpg" alt="雑誌「視覚障害」2023年2月号表紙" width="320" height="240">
<figcaption>雑誌視覚障害2023年2月号表紙</figcaption>
</figure>
<p>昨日節分、私も最近の流行に従って、恵方巻きを買ってきて、お酒を飲みながら美味しくいただきました。まだまだ世の中寒くて、外に出るのもつらいのですが、私の部屋の胡蝶蘭、早くも満開になり、毎日私を楽しませてくれています。<br>さて、雑誌「視覚障害」に、私がコーディネートさせていただいている「視覚リハ(ロービジョンケア)の現場からも、速いもので10回目を迎えました。今回は、情報提供施設で行われている視覚リハサービスについて、ライトハウスライブラリー(島根県)の庄司さんが原稿を寄せてくださっています。</p>
<p></p>
<p> 現場のお仕事で忙しい中、全国の情報提供施設(点字図書館)に調査を試みてくださり、全国の状況が分かる記事です。</p>
<figure class="mt-figure mt-figure-right" style="display: inline-block; float: right;"><img class="asset asset-image at-xid-2617914 mt-image-right" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/212-%E8%83%A1%E8%9D%B6%E8%98%AD2023%EF%BC%8E2-320wri.jpg" alt="白い花弁が際立っている胡蝶蘭。ちょうど今満開です。" width="320" height="240">
<figcaption>窓辺の胡蝶蘭</figcaption>
</figure>
<p>この記事をきっかけに、情報提供施設で行われている視覚リハについて、みんなが感心を持って、より良い方向に発展したらと思いながら読ませていただきました。</p>
<p></p>
<p></p>
<p></p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2617926"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B32023%E5%B9%B42%E6%9C%88%E5%8F%B7.pdf" title="視覚障害2023年2月号.pdf">視覚障害2023年2月号.pdfをダウンロード</a><br><br></span></p>
<p><strong>視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から2022</strong><br><strong>第9回 視覚障害者情報提供施設(点字図書館)での視覚リハ</strong><br><strong>ライトハウスライブラリー(島根県) </strong><br><strong>視覚障害生活訓練等指導者 庄司 健(しょうじ たけし)</strong></p>
<p><br><strong>はじめに</strong></p>
<p> 本稿では、視覚障害者関係施設の一つである「視覚障害者情報提供施設(点字図書館)」における視覚リハについて、普段「何となく感じてはいるけど実際どうなのだろう」という部分を、法律や各種調査結果を基にして確認し、その良さ・難しさについても考えます。私自身も、視覚障害者情報提供施設の中で視覚リハを担当するひとりですので、実感も交えつつお伝えできればと思います。</p>
<p>◎今回用いる主な用語・略称について<br> 視覚障害者情報提供施設は、法律では後述の通り「視聴覚障害者情報提供施設」と表記され、点字図書館とも呼ばれます。本稿ではこれらを「情報提供施設」、視覚リハビリテーションを「視覚リハ」、その視覚リハ関係の有資格者を「視覚リハ職」と表記します(一部「有資格者」と表記しますが同義です)。なお有資格者の定義は、後述の「視覚障害者の生活訓練施設の現状」調査対象と同一とします。</p>
<p>◎資料として用いる調査・アンケートについて<br> 本稿では三つの調査結果を用います。<br>(1)「日本盲人社会福祉施設協議会情報サービス部会 実態調査プロジェクト」による、情報提供施設84施設を対象にした令和2年度の調査「日本の点字図書館37」。本稿では「日本の点字図書館」と表記します。<br>(2)日本ライトハウス養成部調査「視覚障害者の生活訓練施設の現状」の令和4年版。調査対象は「視覚障害生活訓練等指導者養成課程修了者(厚生労働省委託)、国立障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科卒業生と各種研修会修了生、海外養成機関での修了者」。本稿ではそのまま調査名で表記します。<br>(3)本稿執筆にあたり、(2)の「視覚障害者の生活訓練施設の現状」で情報提供施設となっている施設、及び在籍の視覚リハ職を対象に行った独自アンケートの結果。対象20施設中14施設、37人中19人の視覚リハ職が回答。施設単位での回収率は70%、視覚リハ職個人は51.4%ということで、特に個人の方は数値的な精度には欠けるかと思いますが、全体的な傾向を表すことはできると考え、今回結果を利用します。本稿では「独自アンケート」と表記します。</p>
<p><strong>1.法律上での「情報提供施設での視覚リハ」</strong><br> 初めに法律面に触れます。少々硬い話ではありますが、情報提供施設での視覚リハ実施の根拠となる部分です。<br> 「情報提供施設」は身体障害者福祉法第34条で位置付けられており、その条文には「視聴覚障害者情報提供施設は、無料又は低額な料金で、点字刊行物、視覚障害者用の録音物、聴覚障害者用の録画物その他各種情報を記録した物であつて専ら視聴覚障害者が利用するものを製作し、若しくはこれらを視聴覚障害者の利用に供し、又は点訳(文字を点字に訳すことをいう。)…(中略)…その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する施設とする。」とあります。「全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)」の加盟施設・団体数は、2023年1月現在で100、うち情報提供施設は84です。全都道府県に最低1か所設置されていることは、視覚障害者福祉の分野における特徴の一つかと思います。設置・運営は、都道府県・市町村・社会福祉法人等様々です。<br> その情報提供施設における視覚リハは、どう位置付けられているでしょうか。身体障害者福祉法第34条に出てくる「厚生労働省令」では「第34条に規定する厚生労働省令で定める便宜は、点訳又は手話通訳等を行う者の養成又は派遣、点字刊行物等の普及の促進、視聴覚障害者に対する情報機器の貸し出し、視聴覚障害者に関する相談等とする」とあるように、単なる視覚障害者の図書館としてだけでなく、視覚リハの一つとも言える「情報機器への対応」や、「相談対応機能」が謳われる一方、歩行訓練や ADLなど情報系以外の視覚リハについては触れられていません。人員基準も「施設長・司書・点字指導員・貸出閲覧員又は情報支援員・校正員又は音声訳指導員」となっており、直接的に視覚リハ職を示す人員は出てきません。</p>
<p><strong>2.「情報提供施設での視覚リハ」の実施状況</strong><br> 「日本の点字図書館」による情報提供施設全体での内容別実施率を見ると、デイジー機器関係77.4%・点字訓練60.2%・パソコン講習55.0%・スマホ操作説明講習63.9%・ICT操作説明講習67.5%・歩行訓練33.7%です。これに、「独自アンケート」で調査した、視覚リハ職による内容別実施割合を重ねると、視覚リハ職のみが実施する割合が高い内容ほど、施設での実施率が低いという傾向が示唆されました(図1)。<br>(図表説明 図1)「情報提供施設での各視覚リハ実施率と視覚リハ職のみでの実施割合」の図。棒グラフで表されている「情報提供施設での実施率」は次のとおり。デイジー機器関係77.4%・点字訓練60.2%・パソコン講習55.0%・スマホ操作説明講習63.9%・ICT操作説明講習67.5%・歩行訓練33.7%。折れ線グラフで表されている「視覚リハ職のみでの実施割合」は次のとおり(数字は概数)。デイジー機器関係22%・点字訓練50%・パソコン講習28%・スマホ操作説明講習28%・ICT操作説明講習28%・歩行訓練94%。<br> ※ 独自アンケートでは「読書関係の機器等」と「それ以外の機器等」で質問しましたので「パソコン・スマホ・ICT」に「それ以外の機器等」を対応させています。</p>
<p><strong>3.情報提供施設での視覚リハ人材確保の財源</strong><br> このように「情報提供施設での視覚リハ」は、特に情報系以外の内容について、施設の機能として明記はなく、及び人員基準に視覚リハ職は出てきません。そのような中にあって、3割強の施設が歩行訓練を実施し、その9割以上を視覚リハ職が実施していました。独自アンケートでは、この視覚リハ職の雇用財源を質問しました。<br> 結果ですが、指定管理者制度における「指定管理料」と「それ以外」に分けます。<br> 「指定管理料」を財源としているのは6施設(42.9%)で、そのうち5施設では、情報提供業務とは別に視覚リハ事業のための人件費を確保されていましたが、1施設に関しては事業費のみで人件費は含まれていないとのことでした。<br> 「それ以外」の8施設(57.1%)のうち7施設は「行政からの事業委託費(以下、事業委託費)を財源としていましたが、「事業委託費のみ」は1施設で、残り6施設は、併せて各種助成金や自己財源などを利用していました。残り1施設は「自己財源のみ」でした。<br> 今回の調査では明確にできませんでしたが、指定管理の場合より、行政からの委託事業や助成事業の場合の方が、人件費が含まれていない傾向が強いように見えます。</p>
<p><strong>4.情報提供施設での視覚リハ職の働き方</strong><br> 次に、独自アンケートによる視覚リハ職個人への質問結果からです(施設名・氏名は無記名)。<br> 「視覚リハ以外の担当業務」について、視覚リハや相談支援のみという方は3人(15.8%)、兼務ありは16人(84.2%)でした。兼務内容(複数回答可)の回答数は、ボランティア養成8(42.1%)、その他(施設管理業務・事務等)8(42.1%)、製作5(26.3%)、貸出2(10.5%)でした。回答数の構成比を見るために回答数の割合の合計(136.8%)を基に算出したのが図2のグラフです。<br>(図表説明 図2)「視覚リハ・相談支援以外の担当業務」の円グラフ。ボランティア養成30.8%、製作19.2%、貸出7.7%、その他30.8%、なし11.5%。<br> 「情報提供業務と視覚リハ・相談業務の比率」については、情報提供業務の比率が高い方が4人(25.0%)、同比率の方が3人(18.8%)、視覚リハ・相談支援業務の比率が高い方が9人(56.3%)でした(図3)。<br>(図表説明 図3)「視覚リハ・相談支援業務の比率」の円グラフ。3割6.3%、4割18.8%、5割18.8%、6割6.3%、7割6.3%、8割18.8%、9割25.0%。<br> 併せて「理想の比率」を質問しましたが、現状と同じ方が7人(46.7%)、視覚リハ・相談支援の比率を高めたい方が6人(40.0%)、情報提供業務の比率を高めたい方が2人(13.3%)でした。<br> 「情報提供施設の業務に視覚リハ職が関わる意義」を質問した項目では、肯定的な回答が15人(78.9%)、否定的な回答が1人(5.3%)、どちらとも言えないが3人(15.8%)でした(図4)。<br>(図表説明 図4)「情報提供施設業務に視覚リハ職が関わる意義」の円グラフ。感じる52.6%、やや感じる26.3%、どちらとも言えない15.8%、あまり感じない5.3%。<br> 「情報提供施設において視覚リハ・相談支援業務を実施する意義」については、肯定的な回答が17人(94.4%)、否定的な回答が0人、どちらとも言えないが1人(5.6%)でした(図5)。<br>(図表説明 図5)「情報提供施設で視覚リハをする意義」の円グラフ。感じる83.3%、やや感じる11.1%、どちらとも言えない5.6%。</p>
<p><strong>5.情報提供施設で視覚リハを行う「良さ」と「難しさ」</strong><br> ここまでの結果を踏まえて、情報提供施設で視覚リハを行う「良さ」と「難しさ」を挙げてみます。なお各項での括弧内の数は、独自アンケートの自由記述欄で、その内容に言及している方の人数です。<br>――良さ――<br>①地域格差を埋める一助に:各都道府県に最低一つはある情報提供施設で実施することで、視覚リハの地域間格差を縮められる可能性があります。(3人)<br>②地域に近いこと:都道府県や市町村単位の組織と連携しやすいことは大きなメリットです。私も地元の地域包括支援センターやケアマネなど介護分野との連携を始めていますが、互いが対象者の住む地域の中で活動しているというのは、顔が見える関係を築きやすく、円滑なコミュニケーションを生み出しやすいと実感しています。<br>③情報提供業務との相補的関係:今回の独自アンケート結果を見ると、情報提供施設在籍の視覚リハ職の多くが、「情報提供施設業務に視覚リハ職が関わる意義」、「情報提供施設で視覚リハをする意義」を感じていました(4節及び図4・5参照)。「情報」という共通のキーワードや、情報提供と視覚リハという二つの入口が互いを補う関係となり有機的に結び付けば、補うだけでなくより相乗的な効果も生まれると考えます。(15人)<br>――難しさ――<br>①視覚リハの位置付けと予算の確保:情報提供施設の機能(人員基準)としても、地域生活支援事業における必須事業としても位置付けられていない中、視覚リハ(特に情報系以外)実現のために、事業更新の都度、必要性を訴えて予算を確保しなければならないのが現状です。地域間格差を指摘する意見がありましたが(2人)、原因の一端はそこにもありそうです。視覚リハのニーズが高まる中、人員や予算の増強を求めたいところですが、現状維持すら難しいのではと危惧しています。予算確保の努力だけでなく、根本的には「基本的な社会資源として位置付けられる」ための努力が必要と言えそうです。<br>②情報提供施設業務との兼務:「読書バリアフリー法」の成立などもあり、情報提供施設での業務量は増している状況です。人件費確保の難しさ等のため、情報提供業務と兼務状態である視覚リハ職からは、「負担増から視覚リハに時間を回せない」、「それぞれが中途半端になっている」、「視覚リハ専任スタッフ配置が必要」という声がありました。(7人)<br>③対象エリア:全都道府県にある情報提供施設ですが、地方においては1施設で県内の半分~全域を対象としているところもあります。「地域に近いこと」を良さとして挙げましたが、対象エリアの広さから、遠隔地への視覚リハの提供に困難を抱える施設もあります。</p>
<p><strong>終わりに</strong><br> 以前より「情報提供施設での視覚リハは多様だ」という印象を持っていましたが、本稿の執筆を通して、情報提供施設が「位置付けが明確でない中、状況の異なる各地域で、何とか視覚リハに取り組まれている」ことがその理由の一つだと分かりました。情報提供施設での視覚リハには、地域の中で課題を解決していける可能性があります。困難な状況の中、その可能性を現実のものとし、持続かつ広げていける方法は何なのか…と模索する日々です。</p>
<p>【謝辞】短い期間でアンケートにご協力いただきました施設・視覚リハ職の皆様に、心よりお礼申し上げます。</p>
視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から 第8回 医療から始まる視覚リハビリテーション
tag:movabletype.net,2003:post-2264404
2023-01-03T07:17:00Z
2023-01-03T08:22:39Z
病院の中からはじめる「視覚リハビリテーション」の必要性と効果について、分かりやすいタッチで述べている。
吉野由美子
<p><span style="color: rgb(230, 126, 35);"><strong> 開けましておめでとうございます。旧年中は、大変お世話になりました。</strong></span><br><span style="color: rgb(230, 126, 35);"><strong>本年もどうぞよろしくお願いいたします。</strong></span></p>
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2570768 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/209-%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B31%E6%9C%88%E5%8F%B7-320wri.jpg" alt="視覚障害2023年1月号表紙" width="320" height="427">
<figcaption>雑誌視覚障害2023年1月号教師</figcaption>
</figure>
<p>あっという間に、2022年が過ぎて行き、今日は、2023年1月3日になり、私が月刊視覚障害の依頼を受けて企画させていただいているシリーズ「視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から」も8回目となりました。今回執筆を依頼した別府さんとは、まだ視覚リハのことなどほとんど世の中に知られていない高知で、その普及活動を一緒に初め、「ルミエールサロン」の立ち上げに奔走した同士です。人生の半ばで何らかの理由で「見えない・見えにくい」状態になり困っている方達に視覚障害リハビリテーションという物が存在し、それに携わる歩行訓練士と言う専門職があることを、とにかく知ってもらうことを目指して、眼科の先生方への理解啓発、そして連携をあらゆる機会に目指してきた私たち。その時の貴重な経験を土台にした、今の別府さんの熱い思いが確固とした信念になって行く、その思いが満ち満ちているこの文章を、2023年の念頭に皆さんにお送り出来ること、私に取っても大変嬉しいことです。</p>
<figure class="mt-figure mt-figure-right" style="display: inline-block; float: right;"><img class="asset asset-image at-xid-2570784 mt-image-right" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/210-%E8%83%A1%E8%9D%B6%E8%98%AD2023%EF%BC%8E1-320wri.jpg" alt="思う存分根を伸ばし、小さなつぼみをつけた胡蝶蘭。花屋では決して見られない野生の姿です。" width="320" height="240">
<figcaption>私の部屋で3年目を迎えた胡蝶蘭</figcaption>
</figure>
<p> 高齢視覚障害者への正しい支援の方法や、リハビリテーションの可能性を自分ごととして普及活動に力を入れて4年目、少しずつ理解者は増えてきていますが、とても沢山課題があって、簡単には進まない中、とにかく出来るところから、コツコツとやって行けば、きっといつかは実りがあることを信じて、今年も頑張ろうと思っています。皆さん、今年もこんな私とお付き合い下さい。そして、是非この文章読んで見て下さい。</p>
<p><br><br></p>
<p></p>
<p><span style="color: rgb(186, 55, 42);"> </span></p>
<p></p>
<p></p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2570796"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B32023%E5%B9%B41%E6%9C%88%E5%8F%B7-%E5%88%A5%E5%BA%9C.pdf" title="視覚障害2023年1月号-別府.pdf">視覚障害2023年1月号-別府.pdfをダウンロード</a> </span></p>
<p style="text-align: center;"><span class="asset asset-file at-xid-2570796"><strong>視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から2022 </strong><br><strong>第8回 医療から始まる視覚リハビリテーション</strong><br><strong>岡本石井病院 視能訓練士・歩行訓練士</strong><br><strong>別府 あかね</strong></span></p>
<p style="text-align: left;"><span class="asset asset-file at-xid-2570796"><strong> </strong> </span></p>
<p><strong>1.医療現場での視覚リハを目指した理由</strong><br> 私は、1999年から歩行訓練士(視覚障害生活訓練指導員)として、高知県の視覚障害者の生活相談・訓練事業に携わってきました。以前の高知県では視覚リハビリテーション(以下、視覚リハ)についてはほとんど知られておらず、啓発をしながら日々奮闘をしていました。当時の高知県には視覚障害に関わる専門施設は、点字図書館と盲学校と盲老人ホームの3か所のみで、視覚リハに必要な支援機器の展示や販売をしているような場所はありませんでした。<br> 目の見えない・見えにくい方にカタログで機器の紹介をするしかない状況を解決するために、2001年に高知県立盲学校に「視覚障害者向け機器展示室ルミエールサロン」(以下、ルミエールサロン)が開設されました。常設の機器展示室ですが出張機器展示も行っており、協力関係にあった眼科医の勤務する病院でも機器展示と相談会を実施させてもらいました。<br> 保健所や福祉センター等で実施する機器展示では、拡大読書器を使って「何年かぶりに新聞の文字が読めた!」と喜ばれる一方で、「もう新聞を取るのも止めたから」と日常生活に機器を取り入れることを諦めてしまう事例もたくさんありました。ところが、初めて病院で機器展示をした時は、「拡大鏡を使えば見えるけど、編み物する時にはこれを手に持っていたらできない」といった機器に対する不満など、「見ること」や「やりたいこと」を諦めていないからこその患者さんの声が聞けました。<br> この時、やりたいことのニーズをたくさん持っている患者さんたちが諦めてしまう前に、支援機器や制度の情報を届けることの効果を実感しました。それが、医療で視覚リハをやりたいと思った私の原点でもあります。<br> ルミエールサロンでは、「中間型アウトリーチ」として眼科に出向いての相談も当時から実施してはいたのですが、「もっと早く知りたかった」「あと少し早く知っていたら仕事を辞めなかったのに」という声をたくさんいただきました。「視覚リハの情報を必要としているロービジョンの方に早く伝えるために医療で働きたい」という思いが年々強くなった私は、歩行訓練士は認定資格のため医療で働くには難しいと考え、眼科の視機能検査やロービジョンケア等を行う視能訓練士の国家資格を取り、医療現場に飛び込みました。<br> その後、ご縁があって神戸アイセンターの立ち上げに関わらせていただきました。神戸アイセンターは再生医療の研究施設、最先端の眼科医療施設、リハビリ・社会復帰支援施設をトータルで運営するセンターです。<br> 公益社団法人NEXT VISIONの情報コンシェルジュとして、神戸アイセンター2階のビジョンパークでの仕事は、「医療と福祉の間」のようなポジションでした。福祉の時には出会うことのなかった比較的軽度のロービジョンの方にもたくさんお会いし、ルミエールサロンと同様のケアや支援に対しても、今まで以上に喜ばれる方が多く、対象者が変わると同じ情報でもこんなに喜んでもらえるんだということを知りました。<br> 「早期に情報を伝えるために医療で視覚リハをやりたい」という自分の方向性は間違っていないことを確信した私は、ビジョンパークを経た後、高知県の町田病院での3年間と、現在勤務している静岡県焼津市の岡本石井病院にて、医療の中で視覚リハの実践を行っています。その経験から、歩行訓練士が医療現場で仕事をする意味やその効果について述べたいと思います。</p>
<p><strong>2.医療で視覚リハを実践するメリット</strong><br> 医療で視覚リハを実践するメリットとして私が感じたことはたくさんありますが、その中の六つのメリットをお伝えします。<br>(1)福祉で出会えない若い層・超高齢層の方に出会える<br> 眼科で働くようになって、下は0歳から上は102歳と福祉では出会うことが少なかった子どもや超高齢者のロービジョンケアに関わりました。入学前の子どもさんに関われることや、諦めている超高齢者にも情報を伝えられるということは大きなメリットです。<br>(2)ご家族や支援者にも会える<br> 福祉で訪問をしていたときは、同居のご家族は仕事で不在ということも多かったのですが、受診時はご家族も仕事を休んで同行されることがあります。また、ケアマネジャーなどの支援者が同行している場合もあり、サービス利用の手続きなどもスムーズに行うことができます。身近な支援者に視力や視野などの見え方、見えにくさを伝えることは、適切な支援を受けることにも役立ちます。<br>(3)困り始めたタイミングでの視覚リハの導入<br> 福祉の現場では仕事を辞めている方に出会うことがほとんどでしたが、医療では辞める前に会えるので就労継続支援に繋げるケースがたくさんあります。これについては、見えにくくて困っていることが辞める前に解決できるというタイミングがポイントです。また、手帳申請時にも必ず関わるので、手帳取得後すぐに遮光眼鏡など必要なケアをすることができます。困り始めたらすぐにスタートできるのも医療ならではのメリットです。<br>(4)継続的に関われること<br> 福祉の訪問では1回の訪問で終わってしまいがちですが、病院では継続的に関われます。そのため、高齢者には少しずつ繰り返し視覚リハを実践することができます。また、初回の面談時には気持ちが乗らなくても、再診時に相談室を訪ねてきてくれるというケースもあり、患者さんが自分の知りたいタイミングで情報にアクセスしやすいというメリットもあります。<br>(5)効率的に関われること<br> 医療で視覚リハを実践することは、初期支援にとても有効だと感じています。ルミエールサロンでは高知県下が対象のため遠方への訪問も多く、1日1件の訪問が基本でした。歩行訓練士1名あたりの相談・訓練は年間約130回が平均です。一方、町田病院では1年間に平均約600回の実績でした。関わる内容やレベルが異なるので、この数字をそのまま比較することはできませんが、医療の中で行うロービジョンケアを中心とする視覚リハと、訪問での視覚リハが連携することで、「誰一人取り残さない視覚リハ」を実現できるのではないかと考えます。<br>(6)視機能を把握、屈折矯正してからの視覚リハの実践<br> 視機能を把握し、視機能評価を行うことや、屈折矯正をしてから視覚リハを行うことは視覚リハの基本であり、とても重要な部分です。例えば、眼科で拡大読書器を選定する時は、近用度数を入れた眼鏡をかけて見ていただきます。据え置き型と携帯型では読書器の画面までの距離が異なるため、それぞれの距離に合わせた近用眼鏡の度数で拡大読書器を体験することで、必要に応じて眼鏡処方も行うことができます。<br> 以上、視覚リハを医療で実践するメリットについてお伝えしましたが、医療から始まる視覚リハは、「あるべき姿」だと感じています。理学療法士や作業療法士など身体のリハビリと同じように、病院でリハビリが始まり、訪問リハへという流れが、今後、視覚リハでも当たり前になってほしいと願っています。<br> <br><strong>3.医療現場での実践事例</strong><br> 病院の中に歩行訓練士がいることの意義を証明する事例はたくさんありますが、今回は「歩行」にスポットを当てて紹介したいと思います。<br> ロービジョンの患者さんの歩行に関する困りごとは、「見えにくくて躓くことが増えた」「信号が見えにくい」「縁石の段差が見えない」「車にぶつかりそうになった」「下り階段が見えなくて怖い」「溝に片足を落とした」など、日常生活においてさまざまです。それらに対し、ロービジョン外来を行っている多くの眼科では、歩行訓練士の紹介や福祉施設などの情報提供をされると思います。もちろん、それが最善の選択で福祉との連携になります。<br> しかし、多くの患者さんは、すぐには福祉に繋がっていきません。全く見えないわけではないので「福祉施設に行くにはまだ早いのではないか」と考えたり、抵抗感があったりするためでしょう。<br> そんな時に歩行訓練士が病院にいると、その場で解決策や白杖の紹介をすることができます。白杖を紹介する場合、患者さんが情報提供のあった福祉施設に自ら連絡をして、足を運んで説明を受けるよりも、病院の中ですぐ説明を受ける方が、患者さんの負担は大きく軽減されます。一方、すぐに歩行訓練が必要ではないロービジョンの患者さんには、折り畳み式のシンボルケーンを、お守り代わりにカバンの中に入れて携帯するところからスタートをするという提案もできます。<br> 白杖は必要ないと思われた患者さんでも、情報さえ得られていれば、必要になったタイミングで患者さんの方から「白杖をもう一度見せてほしい」と相談に来られます。患者さんから情報に再びアクセスできるということも、病院の中に歩行訓練士がいるメリットです。<br> また、白杖の石突き(白杖の先端部。チップともいう)がすり減っているもの、石突きが抜けてしまったもの、反射テープの貼られている先端の赤い部分が摩耗しているものなど、メンテナンスを必要としている白杖を携帯している患者さんには、その場で情報提供を行い、歩行訓練士の再訪問に繋げるなどしています。メンテナンスについては、歩行訓練で訪問した際に、時々白杖の先を触って確認するように説明をしますが、歩行訓練が終わった後に訪問することはあまりありません。こうして眼科で再会し、白杖のメンテナンスができるということも、継続性のある医療ならではのメリットだと思います。<br> 急な視力低下で歩行が困難になった患者さんに、早期に歩行訓練士が関わることができるのも大きなメリットです。急な視力低下が起こった場合の多くは、入院中の移動に車いすを使用します。見えなくなったばかりの患者さんは誘導を受けることに慣れていませんので、視覚障害者の誘導方法を知っているスタッフでも、安全に誘導をすることが難しい場合があるためです。しかし、車いすの移動が続くと「何もできなくなった」と本人もご家族も感じ、気持ちも落ち込んでしまいます。そんな時に歩行訓練士がいれば、誘導を受ける方法(屋内歩行訓練)を実践することができます。<br> 入院中は病室が生活の場です。枕元の保護眼鏡の保管方法、点眼薬の管理や時間の確認、歯磨き粉のつけ方など、入院生活の中で視覚リハの導入がスムーズにできます。見えなくても工夫をすればできるということを体験していただければ、退院後の在宅生活にも希望を持っていただくことができます。<br> <br><strong>4.医療との連携で必要なこと</strong><br> 2021年6月にはすべての都道府県でスマートサイト(ロービジョンケア紹介リーフレット)が作成され、医療から福祉・教育への連携の基盤が整備されました。今まで以上に連携の場面は増えてくるでしょうが、リーフレットを渡すだけでは、福祉・教育に繋がっていない患者さんもいるはずです。それは、「そこでどんな情報が得られるのか」が伝わっていない可能性があるためです。そうした背景も踏まえて、私が考える医療と福祉の連携の課題を四つお伝えしたいと思います。<br>(1)啓発活動<br> 歩行訓練士は、白杖の歩行訓練のみやっているというイメージが強いかもしれませんが、実際には歩行以外のさまざまな日常生活の視覚リハに関わっています。眼科関係者には、歩行訓練士ができること・できないことを正しく知ってもらうための働きかけが必要だと思います。<br> また、一般社会に対しても、私たち歩行訓練士のやっていることをわかりやすく情報発信し、患者さんにとって有益な情報が得られる場所であることが伝われば、「行きたい場所」に変わると思います。<br>(2)医療と福祉の違いや状況をお互いに知ること<br> 連携する中で、私が一番感じた違いは時間の感覚です。以前、「相談の際の記録が遅い」と言われたことがあります。その後、医療で仕事をするようになって、初めてその時に眼科医の言っていた意味が理解できました。眼科では検査結果はすぐにカルテに記載されます。医療でのスピード感と福祉のスピード感は少し違います。<br> また、福祉ではプロセスを重要としますが、医療では結果が大切です。「カルテの記録が長いからもっと簡潔に書いて」と言われたことがありました。しかし、拡大鏡の選定一つをとっても、選定した理由やデモ中の感想などは私にとっては重要な情報で、次回のロービジョンケアに繋げるプロセスとして理解していただきました。<br> このように、分野の違いによるそれぞれの「当たり前」を知るということも大切だと感じています。<br>(3)視力や視野の検査結果を読み取る力<br> これは私自身の反省でもありますが、福祉で働いている時に、視力や視野の検査結果などを添付してくれる眼科もありましたが、十分に読み取ることができず、活かしきれていませんでした。検査結果には訓練に活かせる有益な情報がたくさんあります。スマートサイトの運用が広がり、福祉関係者が検査結果を見ることが増えたのを機に、歩行訓練士を始め、福祉・教育の支援者も検査結果を理解するための勉強が必要だと思います。<br>(4)共通の言葉の概念<br> 「ロービジョン」という言葉は福祉や教育の分野で浸透しつつありますが、まだまだ「弱視」という言葉が使われることもあります。「弱視」は、医学的には「幼少時の視力発達が障害されておきた低視力(amblyopia)」を指し、病気や事故が原因で視機能が低下した状態を「ロービジョン (low vision)」といいます。そこを混同させないためにも、一般社会にもロービジョンという言葉をもっと広く知っていただく必要があると思います。もしくは、もっと一般の方も分かりやすい表現を検討するのも一つの方法かもしれません。<br> 最近は「視覚リハ」も「ロービジョンケア」も同じような意味合いで使われることもありますし、ロービジョンケアは「光学的なケア」を中心とした狭義の意味で使われる場合もあります。こうした概念が異なると、会話は成立しているのに噛み合わないということも出てくるので、言葉の整理も必要だと感じています。<br> <br><strong>5.未来への展望</strong><br> 医療から始まる視覚リハは、「誰一人取り残さない視覚リハ」を実践するために必要不可欠だと私は思います。各都道府県のロービジョンケアの核となる眼科に歩行訓練士が配置されることで、医療から福祉へ途切れることなくスムーズに繋ぐことができると思います。<br> そうしたロービジョンケアの拠点を強化しつつ、かかりつけ医ではロービジョンケア紹介リーフレットの配布や、中間型アウトリーチで歩行訓練士が眼科に出向くようにコーディネートを行うことで、見えない・見えにくい方に必要な視覚リハを提供できることを期待します。<br> 最後に、日本のリハビリテーションの中に視覚リハは抜け落ちています。理学療法士や作業療法士など他のリハ職との連携をとることで、幅広く視覚リハを知ってもらう機会が増えると思います。今の職場にはリハ職のスタッフもたくさんいるので、多職種連携にも取り組んでみたいと思います。「誰一人取り残さない視覚リハ」を実現する一歩として、歩行訓練士として医療現場にいる私の挑戦を続けていきたいと思います。<span class="asset asset-file at-xid-2570796"></span></p>
「学んで見よう高齢者の視機能について、視覚リハビリテーションとはなにかについて」講義資料
tag:movabletype.net,2003:post-2254599
2022-12-18T07:25:00Z
2022-12-18T09:18:09Z
東京都町田市医療と介護の連携支援センターでおこなった3回シリーズの講演内容をpdfデータとして公開したもの。
吉野由美子
<p><strong>1 はじめに</strong><br> 視覚障害者の約8割は、高齢者であり、高齢になってからの中途視覚視覚障害者も多いのですが、その高齢視覚障害者を支援する家族や介護関係者の方達、そして社会一般の方達も、その正しい支援の仕方について、ほとんど知らないのが実情です。<br> 私自身が68歳の時に圧迫骨折のリハビリのために、初めて介護保険で運営されているリハ特化型のデイサービス施設の利用者となって、見えない・見えにくい高齢利用者に対して、家族やケアマネージャー、介護に当たる現場の方達が、ほとんど学ぶ機会がなく、それで正しい知識を持てないでいる実態を知りました。<br> そこで、同じようにこの状況はおかしいと思って動いておられる眼科医の方と、チャンスある毎に、医療関係者や介護関係者に向かって啓発活動をさせて頂くようになりました。そんな時に「町田市医療と介護の連携支援センター主催のセミンー」で講演するチャンスを頂きました。<br> その時のプレゼン内容を、一緒にお話しさせて頂いた眼科医の澤崎先生と、主催者の町田市医療と介護の連携支援センターの許可を得て、公開できることになりました。<br> これから、高齢視覚障害者に対する早期の治療やリハビリテーションの重要性は、どんどんまして行きますので、私たちがおこなった、このプレゼンが、支援に携わる皆さんの参考になれば幸いです。 </p>
<p><strong>2 町田市医療と介護の連携支援センターについて</strong><br> 東京都町田市では、「町田・安心して暮らせる町作りプロジェクト」という取り組みをしていて、町田市医療と介護の連携支援センター(在宅医療介護連携機能強化型地域包括支援センター)は、その重要な一つの柱になっているようで、そのセンターが、2020年から年1回「多職種連携強化セミナー」を実施しています。その第3回目のテーマに「高齢者の視機能」のことが取り入れられ、3回シリーズのセミナーが実現したのです。</p>
<p>全国的にも大変先進的と思われる町田市の取り組みの詳しいことは下記のURL参照<br><a href="https://machidapj.com/" title="町田・安心して暮らせる町づくりプロジェクト" target="_blank" rel="noopener">https://machidapj.com/</a></p>
<p>町田市医療と介護の連携支援センターの動きについては、以下のFB参照<br><a href="https://www.facebook.com/kiso.communitybase/" target="_blank" rel="noopener">https://www.facebook.com/kiso.communitybase/</a></p>
<p> <strong>3 3回シリーズのプレゼンテーションの内容<br></strong><strong> 2022年8月・10月・12月の3回、各2時間にわたるセミナーの<br>内容は、以下をご覧下さい。</strong></p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2553235"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E5%AD%A6%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%BF%E3%82%88%E3%81%86%EF%BC%81-%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%AE%E8%A6%96%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E2%91%A0-PDF.pdf" title="学んでみよう!-高齢者の視機能について①-PDF.pdf">学んでみよう!-高齢者の視機能について①-PDF.pdfをダウンロード</a> </span> </p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2553240"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E5%AD%A6%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%BF%E3%82%88%E3%81%86%EF%BC%81%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%AE%E8%A6%96%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E2%91%A1-PDF.pdf" title="学んでみよう!高齢者の視機能について②-PDF.pdf">学んでみよう!高齢者の視機能について②-PDF.pdfをダウンロード</a> </span></p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2553241"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E5%AD%A6%E3%82%93%E3%81%A7%E8%A6%8B%E3%82%88%E3%81%86%E8%A6%96%E8%A6%9A%E3%83%AA%E3%83%8F%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B.pdf" title="学んで見よう視覚リハビリテーションとは何か.pdf">学んで見よう視覚リハビリテーションとは何か.pdfをダウンロード</a> </span></p>
<p></p>
第54回高知県リハビリテーション研究大会で奨励賞をいただきました。
tag:movabletype.net,2003:post-2246989
2022-12-07T07:46:00Z
2022-12-07T08:59:20Z
第54回高知県リハビリテーション研究大会での発表をPDFデータで、記録した。
吉野由美子
<p><strong>高知県リハビリテーション研究会は、「地域リハビリテーションの理念に基づき、高知県下の保健・医療・福祉の向上に寄与する」を目的として、リハビリテーションに関わる様々な職種の方達が集い、いろいろな勉強会をやっています。そして、年1回</strong><br><strong>大きな研究大会をおこなって、地域のリハ活動について、発表の機会を作っています。今年度の第54回大会は、新型コロナの感染拡大防止のためにオンデマンドの大会として開催されました。、</strong></p>
<p><strong>テーマ:生きづらさに寄り添い、多様性を認め合う当事者主体の地域づくり<br> </strong><strong>催日時:第1部 2022年11月8日(火)~2022年11月30日(水) ※動画視聴(URLは開催初日にお知らせします。)</strong><br><strong>第2部 2022年11月27日(日)10時~15時 ※ZOOM開催<br>詳しくは、下記HPで見て下さい。<br></strong><a href="http://rihaken.sakura.ne.jp/rihab/news/54.shtml" target="_blank" rel="noopener"><strong>ttp://rihaken.sakura.ne.jp/rihab/news/54.shtml</strong></a></p>
<p><strong>整形外科医や内科医、PTやOT等、多職種が参加している会で、初めて<br>第43回の全体テーマが「視覚障害リハビリテーション」で、そのことで、とても<br>感激して、その時は、既に高知を離れていましたが、視覚リハについて、講演<br>させていただきました。<br> 43回大会の様子も、私のブログにあります。<br><a href="https://yoshino-yumiko.net/2014/08/post-282.html" target="_blank" rel="noopener">https://yoshino-yumiko.net/2014/08/post-282.html</a><br> </strong></p>
<p><strong> そんな思い出で深い会で、今年視覚リハに関連して、2題の発表をさせていただきました。<br> その内の1題が、奨励賞をいただいたこともあり、私のブログに掲載したいと<br>思います。</strong></p>
<p><strong>1 演題名「あるデイサービス施設(リハ特化型)における見えにくい高齢利用者に対する環境改善の取り組み過程とその効果、今後の課題についての一考察」</strong></p>
<p><strong> 見えにくい高齢者が利用している介護保険で運用されているデーサービス施設における、見えにくさに配慮した環境改善の取り組みについて、発表した物が、奨励賞(第3位)をいただきました。見えにくさに対する気づきと、環境改善のために施設全体が取り組んだことに対して評価していただきました。</strong></p>
<p><strong><span class="asset asset-file at-xid-2539014"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%81%AB%E3%81%8F%E3%81%95%E3%81%AB%E9%85%8D%E6%85%AE%E3%81%97%E3%81%9F%E7%92%B0%E5%A2%83%E6%94%B9%E5%96%84%E6%9C%80%E7%B5%82%E7%89%88.pdf" title="見えにくさに配慮した環境改善最終版.pdf">見えにくさに配慮した環境改善最終版.pdfをダウンロード</a> </span> </strong></p>
<p><strong>2 演題名 「障害者施設や介護施設を利用している視覚障害のある高齢者の多様性と、その多様性に起因する多様なニーズを理解するために知っておくべき基礎知識について」</strong></p>
<p><strong> 高知県リハビリテーション研究会は、発表について、非常に自由な考え方を持っていて、発表のオリジナリティーとかを問うよりも、その発表が高知の地域リハビリに有用な意味を持てば良いと言うことで、2題の発表を認めていただきました。<br> 上記の演題は、見え方の多様性についての啓発を目的とした物で、奨励賞をいただいた、「見えにくさに配慮した環境改善」について、より良く理解していただくことが目的でした。</strong></p>
<p><strong><span class="asset asset-file at-xid-2539028"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%81%AE%E5%A4%9A%E6%A7%98%E6%80%A7%E3%81%AE%E7%90%86%E8%A7%A3%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E7%9F%A5%E8%AD%98Ver%E9%87%91%E5%B9%B3%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E5%A4%89%E6%9B%B4.pdf" title="ニーズの多様性の理解のための基礎知識Ver金平レイアウト変更.pdf">ニーズの多様性の理解のための基礎知識Ver金平レイアウト変更.pdfをダウンロード</a> </span> </strong></p>
<p><strong><span class="asset asset-file at-xid-2539028"> 発表2本はきつかったけれど、大変充実した時を過ごせました。<br> 共同演者になっていただいて、支えていただいたお二人に感謝しています。</span></strong></p>
<p></p>
視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から 第7回 高知の片隅から繋げるロービジョンケア ~小さな診療所から福祉へ~
tag:movabletype.net,2003:post-2245493
2022-12-05T08:53:00Z
2022-12-05T09:47:01Z
今、現在の医療では治療することが難しい眼の病気を抱えた方達を、医療から素早くロービジョンケア(視覚リハビリテーション)につなげる取り組みがおこなわれています。この記事は、高知の片隅で、周りに他の眼科もなく、ロービジョンケアをおこなうためのスタッフもいない中で、様々な資源と連携して、医療から福祉や教育につなげようと奮闘しておられる眼科医が書かれた記事です。
吉野由美子
<p></p>
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2536401 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/208-%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B312%E6%9C%88%E5%8F%B7-320wri.jpg" alt="雑誌「視覚障害」2022年12月号表表紙の写真" width="320" height="240">
<figcaption>雑誌「視覚障害」12月号表表紙</figcaption>
</figure>
<p> 今年の気候は、本当に不純ですね。つい最近まで、秋とも思えないような暖かい日が続いていたのに、今日の東京は、凍えそうな寒さです。そんな気候に振り回させて、私は、少し体調を崩してしまった見たいですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。どうぞお体に気を付けて下さい。<br> さて、私が「雑誌視覚障害」でコーディネートさせていただいているシリーズ、「視覚リハ(ローピジョンケア)の現場から」も今月で7回目の連載となりました。月刊視覚障害の許可をと執筆者の許可を得て、私のブログに掲載いたします。多くの皆さんに読んでいただければ幸いです。</p>
<p></p>
<p></p>
<p></p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2536410"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/2022%E5%B9%B412%E6%9C%88%E5%8F%B7-%E9%AB%98%E7%9F%A5%E3%81%AE%E7%89%87%E9%9A%85%E3%81%8B%E3%82%89.pdf" title="2022年12月号-高知の片隅から.pdf" target="_blank" rel="noopener">2022年12月号-高知の片隅から.pdfをダウンロード</a> </span></p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2536410"> <strong>タイトル 高知の片隅から繋げるロービジョンケア</strong><br><strong>~小さな診療所から福祉へ~</strong><br><strong>すぎもと眼科副院長 高知県眼科医会副会長</strong><br><strong>濱田 佳世</strong></span></p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2536410"> </span></p>
<p style="text-align: left;"><strong>1.私のこと</strong><br> 初めまして。ゆずの生産量が日本一の高知県安芸市にあります「すぎもと眼科」(以下、当院)で、副院長をしております濱田佳世と申します。当院は私の実家で、父が院長を務めています。その昔、曽祖父が内科医、祖父は耳鼻科医、そして祖母は眼科医をしていました。そんな環境でしたが、医師を目指そうと思ったのは遅く、高校生になってからでした。小学校時代は安芸市で過ごし、中学高校は高知市、大学は愛知県、眼科医としては東京の大学病院で修行しました。その後、茨城県や沖縄県の眼科病院での勤務、大学院での研究を行いつつ、様々な医療機関での非常勤勤務を経て高知に戻りました。しばらくは地元の大学病院に所属しましたが、平成16年より当院で診療をしています。<br> 主な資格などは次のとおりです。眼科専門医、医学博士、ボトックス認定医、視覚障害者用補装具適合判定医、障害者スポーツ医、健康スポーツ医、難病指定医、身体障害者福祉法第15条指定医。高知県眼科医会副会長、日本眼科医会中国四国ブロック公衆衛生委員。</p>
<p><strong>2.なぜロービジョン? </strong><br> なぜ、私がロービジョンケアに興味を持ったのかをお話しします。眼科医は…というよりも、医師は目の前にいる患者さんの治療に一生懸命になります。痛みがあれば痛みを取りたいですし、見えにくさがあれば、見えるように手助けをしようとありとあらゆる手を考えます。ところが、残念なことに現代の医療をもってしても、治せない病気がたくさんあります。その一つが皆さんもご存知の網膜色素変性です。その網膜色素変性の患者さんとの出会いがきっかけになりました。<br> 最初に申しましたように、様々な医療機関で診療してまいりましたので、何人もの網膜色素変性の患者さんにも携わりました。しかし、私自身が数か月から数年で異動してしまうため、1人の患者さんと長く関わることはありませんでした。当院に戻ってきてからは異動がありませんから、受診した患者さんとは一生関わる覚悟を持って診療に当たっています。<br> そんな中で10年が経とうとした頃、網膜色素変性の症状が進行していく患者さんを目の当たりにしたのです。「車の運転をしていたのにできなくなる」、「すんなり診察室に入ってきていたのに、入る動作がゆっくりになってくる」、「視線が変わってくる」などの変化を感じるようになるぐらい、時間を共有するようになりました。患者さんは1、2か月ごとに受診されますが、正直なす術がありません。白内障手術もとうに済んでいます。そうなると、毎回何も言えない自分が情けなくなり、敗北感に苛まれます。<br> 医師として苦しくなってしまったそんな時に、ロービジョンケアの存在を知りました。今ある視機能を最大限に活かして、諦めることなく少しでも明るく楽しく生活を送れるようにアドバイスをする、社会で活躍できるよう支援をする、あるいは支援する機関に繋げる…「これを目の前にいる患者さんに伝えられたら!」。そう思うと、患者さんと同じように、マイナスのことばかりを考えがちだった私の心も前向きになりました。また、全国のロービジョンケアに長けている眼科医や歩行訓練士、福祉の方から得られる情報は、常に新鮮な刺激となり、モチベーションを保つことができるようにもなりました。<br> <br><strong>3.当院でのロービジョンケア</strong><br> 当院には視能訓練士はもちろん、なんと看護師もいません(田舎では「眼科」と聞くだけで敬遠されてしまうのです…)。幸い医師は2名いますから、白内障手術も行っています。その中で行うロービジョンケアには限りがありますが、ナイナイづくしの当院でのロービジョンケアをご紹介します。<br>(1)身体障害者手帳該当者を探す<br> まず始めたことは、身体障害者手帳に該当する方が埋もれていないかどうかを見つけることでした。これはカルテベースで行えます。ロービジョンケアを意識するまでは、4級や5級、6級に相当する方には積極的に手帳の取得を奨めていませんでした。なぜなら、メリットがないと勝手に思い込んでいたからです。医療費が安くなるわけでもなく、電車(JR)は100km以上でなければ割引にはなりません。<br> 目に見えるメリットは少ないのですが、障害者控除で所得税や住民税が減税されます。また、手帳はあらゆる公的福祉サービスの入り口であり、行政には視覚障害のある人の存在を認知させることができます。他にもまだメリットはあるのですが、これらを知らないことで、患者さんから手帳取得の機会を奪っているのは「医療現場だ」ということに気付かされました。わざわざ断っていたぐらいで、白杖をどのような経緯で持つようになるかもわかっていなかったのです。<br> 視覚障害の等級は視力障害と視野障害の合わせ技で決まります。そして、他の身体障害があれば、それも含めて等級が決まります。また逆に、例えば「心臓疾患で1級を持っていて、医療費控除もあるので視覚障害の手帳はいりません」となると、視覚障害に特化したサービスは受けられません。患者さんの家族はもちろん担当ケアマネジャーに、「なぜ眼科でまた申請する必要があるのか?」と取得の理由を尋ねられたことがあります。眼科医にも「視覚障害の福祉サービスを受けるには視覚障害者手帳が必要」ということを再認識してもらう必要があります。<br>(2)ニーズを聞き出す<br> 次に行ったのは、「困っていること」、「やりたいこと」を聞き出すことです。<br> 常連の患者さんで時間をかけた方が良さそうな場合には、改めてロービジョン外来の予約を取り、じっくり話を聞く時間を確保しますが、実はこのパターンはあまり多くありません。と言うのも、通常の診察中にロービジョンケアに該当するようなキーワードが出てくることが多いからです。つまり、日頃の会話にヒントがあるのですが、患者さんが自ら発信することは多くありませんので、こちらから引き出す質問をする必要があります。<br> 再診の患者さんには、「お変わりありませんか?」と問いかけることが一般的だと思います。しかし、このように聞かれると、反射的に「特にありません…」で終わってしまいがちです。一方、具体的に聞くと話してくれることがあります。例えば、「時間はどうやって確認していますか?」、「病院に来るまでに困ることはなかったですか?」などと聞くと、様々な答えが返ってきて患者さんの背景がわかり、そこからスマートフォンの使い方や白杖の話、家族の話になったりしていきます。<br> スマートフォンはなかなか使いこなせていないようで、待ち受け専用になっていたり、読み上げ機能が設定されていなかったりすることも多いです。簡単に教えられることであれば、その場で設定することもありますが、機種によっては難しい場合もあります。その際は、設定してもらいたい内容をメモに書いて患者さんに渡し、携帯ショップへ持って行ってもらっています。後日、患者さん経由で、「設定しました」、「これはできません」など、ショップの店員さんがチェックしたメモが返ってくることもあります。こういうことも、「他人任せではダメで、自分が動けば応えてくれる」と実感するところです。<br> 白杖についてお話しするときは、それまでに何度となく種まきが必要で、少しずつ嫌がられない程度に、小出しにしながら必要性をお伝えしていきます。ただし、毎回時間をかけるわけにもいかないのが現実ですので、その塩梅が診療の腕の見せ所かもしれません。逃したくないキーワードが出たら、他の患者さんを多少お待たせしてでも対応するようにしています。<br>(3)クイック・ロービジョンケア<br> 今、日本眼科医会では全国の眼科医にクイック・ロービジョンケアを取り入れるように働きかけています。これは、ロービジョンに馴染みの少ない眼科医でも、「これだけ知っていれば、少なくとも目の前のロービジョンの方を、必要とするロービジョンケアまで繋げる」ということを目的にしています。<br> 私のお気に入りのクイック・ロービジョンケアは、タイポスコープやルーペ、お手軽遮光眼鏡の紹介です。<br> タイポスコープは手作りをしていて、「最近新聞や本が見えにくくなって諦めた」という方に、使い方を説明し差し上げています。その場ですぐ渡すことで、笑顔で帰ってもらうことができているように思います。<br> ルーペは100円ショップのものを紹介することもありますが、おすすめはスタンプルーペです。ネットショップでも買えるので、家族に手伝ってもらえるよう検索のキーワードなどをメモにして渡します。<br> お手軽遮光眼鏡は、白内障手術後に使う保護用眼鏡を利用します。これは白内障手術後の患者さんで、指定の期間を終了しても、かけると眩しくなくて楽だからと長期間愛用していることがヒントになりました。本格的な遮光眼鏡は値段も高く、補装具申請をしてからだと時間もかかります。この保護用眼鏡であれば、その場ですぐに試すことができ、「欲しい!」と思ったらすぐに購入できます。この「~をしたい」、「~が欲しい」と思ったときにすぐ叶えられること、タイミングを逃さないことが大事だと考えます。<br>(4)書類の作成<br> 医療機関でしかできないロービジョンケアの一つに書類の作成があります。前述した身体障害者手帳のほかに、指定難病の臨床調査個人票、介護保険の主治医意見書、障害年金診断書などの作成があります。<br> 特に、主治医意見書作成の依頼が眼科にあるということは、他の身体や心身には異常がなく、眼科以外は受診していないということになります。実はこの書類には、「傷病に関する意見」という欄以外に、身体や行動・精神の状態、サービス利用に関する意見、特別な医療などの欄がありますが、そこで挙げられている項目は、視覚障害に関係しないものばかりなのです。そのため、「その他の特記事項」の欄に視覚障害でいかに不自由しているかを作文する必要があるのです。しかし、見えにくい患者が少しでも生活しやすくなるように、患者とともに考えるという「ロービジョンケアマインド」がないと、なかなかしっかり書けないかもしれません。そもそも、「うちでは書けないから内科で書いてもらって」ということもあり得ます。行政が判断し眼科に依頼してくるのですから、できるだけ事細かに書くようにしています。<br>(5)スマートサイトと中間型アウトリーチ支援<br> 現在、ロービジョンケアが必要な方には、眼科医療機関からスマートサイト(ロービジョンケア紹介リーフレット)を手渡し、できるだけ早く視覚障害リハビリテーション(以下、視覚リハ)に繋がるようにするシステムが運用されています。高知県には相談窓口として、「オーテピア高知声と点字の図書館」(以下、オーテピア)や視覚障害者向け機器展示室「ルミエールサロン」、「高知市障がい福祉課」、「高知県立盲学校」の4か所があります。<br> 高知県は東西に長く東端と西端の間の距離は約190km(全国8位)、主な社会資源は高知市内に集中しています。眼科医療機関でさえも、安芸市から東には常勤医のいる眼科はありません。安芸市は高知市から約40km東に位置し、公共交通機関は乏しく当然ながら車での移動が主になります。そのため、安芸市在住のロービジョンの方が高知市内の福祉機関に出向くのは難しいことです。<br> そこで、ルミエールサロンに所属する歩行訓練士が訪問で視覚リハを行ってくれます。これは高知県が行っている事業で、高知市以外の患者さんが無料で利用することができます(高知市では高知市障がい福祉課が行っています)。他には、オーテピアが音声図書の案内を訪問で行ってくれます。<br> 一方で、自宅訪問には抵抗があるという患者さんもいらっしゃいます。そのため、かかりつけである当院に患者さんと視覚リハの専門家に来てもらい、ロービジョンケアを行うという中間型アウトリーチ支援にも取り組んでいます。<br> 患者さんがスマートサイトを利用して自分で連絡を取ることは、簡単なようで実はハードルが高く、患者さん任せではなかなか繋がりにくいのが現状です。そこで、早く繋がって欲しい場合には、スマートサイトを渡しつつ、その場で私が相談窓口の施設に電話をかけるようにしています。そして、歩行訓練士と直接話をし、その後に歩行訓練士から改めて患者さんに連絡をしてもらい、中間型アウトリーチ支援か自宅訪問をセッティングします。やはり、医療機関でひと手間をかけることが、より繋がりやすくなるコツだと感じています。<br> 以上、当院で行っているロービジョンケアを紹介しました。専門スタッフもいない、道具もない、必要最低限の中で行っているロービジョンケアです。「こんなことでもロービジョンケアと言えるのか」という内容だと思いますが、ロービジョンケアマインドさえあれば、全ての眼科医がいつでもどこでもできる内容です。</p>
<p><strong>4.高知のロービジョンケアの今後</strong><br> 私がロービジョンケアに関わるようになってしばらくして、高知県眼科医会の理事を拝命しました。ちょうど、日本眼科医会がスマートサイトの作成に力を入れていた時期で、高知県でも改訂版スマートサイト(初版は2010年作成)を作成することになり、一任されました。これを機に、高知県の他職種(福祉、医療、教育)の方と顔の見える関係を築こうと、「高知家ロービジョンケア勉強会(現・高知家ロービジョンケアネットワーク)」を立ち上げ、定期的に勉強会を行っています。眼科医にもロービジョンケアを知ってもらうように、勉強会の告知や報告を会報誌に掲載するようにしました。少なくとも高知県には、「ロービジョンケアなんか聞いたこともない!」という眼科医はいないと思います(ロービジョンケアマインドを持って診療しているかどうかは別にして)。<br> 私が次に広めたいのは、眼科以外の医師や医療機関です。ロービジョンの方は眼科だけを受診されるわけではありません。先日、高知県女医会でロービジョンケアのことを講演する機会をいただきました。「初めて聞いた」と興味深く聞いていただけて安心したと同時に、さらなるロービジョンケアの啓発の必要性を感じました。</p>
視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から 第6回 つなぐ! つながる! 主体的視覚リハビリテーション ~当事者活動と視覚リハの連携から生まれる力~
tag:movabletype.net,2003:post-2223011
2022-11-06T12:05:00Z
2022-11-06T13:24:31Z
京都ライトハウス「鳥居寮」で、当事者であることを生かして、視覚リハに取り組んでいる
石川さんの活動を通して、視覚リハの在り方を考える
吉野由美子
<p></p>
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2505224 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/206-%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B311%E6%9C%88%E5%8F%B7-320wri.jpg" alt="雑誌「視覚障害」2022年11月号表紙" width="320" height="240">
<figcaption>雑誌「視覚障害」2022年11月号表紙</figcaption>
</figure>
<p> あっという間に1ヶ月が経ち、秋晴れの日が続くようになってきました。鉢植えを育てるのが好きなくせに、旨く世話が出来ず、すぐ枯らしてしまう私ですが、3年前に買ったシクラメンは、奇跡的に3回目の休眠から無事復活、立派な葉が出てきました。これで、来年の春の開花が楽しみになりました。</p>
<p></p>
<p> さて、私がコーディネートさせていただいている雑誌「月刊視覚障害」のシリーズ「視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から」は、連載6回目を迎えて、当事者の立場を生かして「寄り添う」視覚リハを実践しておられる石川さんに、その活動ぶりを執筆していただきました。いつものように、執筆者と月刊視覚障害の編集部の許可を得て、私のブログに転載させていただきます。</p>
<p></p>
<figure class="mt-figure mt-figure-right" style="display: inline-block; float: right;"><img class="asset asset-image at-xid-2505251 mt-image-right" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/207-%E3%82%B7%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%B3-320wri.jpg" alt="3年目の休眠から復活、1ヶ月半経って立派に葉が出そろったシクラメン" width="320" height="427">
<figcaption>11月5日のシクラメンの姿</figcaption>
</figure>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2505254"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B32022%E5%B9%B411%E6%9C%88%E5%8F%B7-%E7%9F%B3%E5%B7%9D.pdf" title="視覚障害2022年11月号-石川.pdf">視覚障害2022年11月号-石川.pdfをダウンロード</a> </span></p>
<p></p>
<p></p>
<p><strong>視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から2022</strong><br><strong>第6回 つなぐ! つながる! 主体的視覚リハビリテーション</strong><br><strong> ~当事者活動と視覚リハの連携から生まれる力~</strong><br><strong>京都ライトハウス鳥居寮 石川 佳子</strong></p>
<p><strong>1.はじめに</strong></p>
<p> 私は2014年の4月より、京都ライトハウス鳥居寮の生活支援員として、週5日のパート勤務をしています。鳥居寮は、主に中途で視覚障害になられた方々に通所、入所、訪問などで視覚リハビリテーションを提供する障害者支援施設です。私の担当業務は点字、パソコン訓練、文章・教養・アビリンピック(全国障害者技能競技大会)対策講座、外部講師を招いての講座運営、利用者さんの支援計画作成、同法人内の他部署との連携による点字普及イベントの運営などです。<br> 先天弱視の私は32歳の時、わが子を膝にのせて絵本を読めるようになりたくて鳥居寮で訓練を受けました。障害者手帳を取得して20年余り、視力は0.1から0.01に、視野は中心からその少し外側のわずかな部分のみになっていましたので、さまざまな見え方を体感できたことはロービジョンケアのヒントになっています。また、障害の有無に関係なく、人生の過程で子育て、介護、仕事と家事のライフバランスなど、私もその困難に直面します。<br> その際、見えない・見えにくいことで本当に困ることは何なのかを考えます。また、多くの見えない・見えにくい人たちとの出会いから、いくつかの当事者活動を立ち上げました。これが必要ではないかと掲げた課題をオフの当事者活動で、仕事である視覚リハで、それぞれを連携させて実りある力につなぐ、そんな私の取り組みについてお話します。</p>
<p><strong>2.「知ってさえいれば」をなくしたい</strong><br> 私は先天弱視でしたが31歳まで何の情報もなく、支援にもつながれませんでした。自分が障害者手帳に該当するほどの病気であることすら知りませんでした。3歳の時点で「視野が狭い」、「小さいものが見えない」、「暗いと見えない」、「色がわかりにくい」、「いつか失明するかもしれない」という診断を受けていました。網膜色素変性症という疾患名を告げられたのは17歳、説明は「治療法はない」ということだけでした。<br> 31歳ではじめて京都ライトハウスを訪れた時、私が小学校に入学する時点ですでに拡大文字の辞書や教科書があったことを知りました。同世代で私と同じように生まれつき見えにくい人が、適切な配慮を受け高い学問を修めていることを知った時、「私にもやりたい勉強があったのに」と、悔しい気持ちになりました。「マークシートが正確にチェックできない」、「辞書がまともに使えない」、「読むのに時間がかかる」、「授業が指示代名詞だらけで理解できない」、そんな時間を過ごしてきた自分との情報格差に愕然としました。「知らなかったがために夢が描けなかった」、「知っていたら違った人生だった」とさえ感じました。<br> でも、今となれば虫メガネ一つと根性だけで必死だった頃の自分も愛しいです。それは、見える人の中で生きるための工夫や、折り合いのつけ方を学ぶ時間であったのかもしれません。何も知らずにいたことと、知ってひろがる可能性、その両方を体感したことから「知ってさえいればをなくしたい」という思いが生まれ、プライベートでの当事者活動と、職場である視覚リハでの取り組みにつながっていきました。</p>
<p><strong>3. 人と情報につながることからはじまる一歩がある 医療から福祉へ早期連携を</strong><br><strong> ~『メルマガ色鉛筆』・ 書籍『見えない地球の暮らし方』~</strong><br> 私は31歳の時、眼科できちんと疾患に関する説明を受け、ロービジョンケアにたどり着くことができ、人と情報につながることができました。そこで、まだ見ぬ仲間に「あなたはひとりぼっちじゃない」と声をかけたいと思いました。「人は見えにくさを感じたら眼科には行くから、そこでさっと渡せる情報がいい」、「メルマガという軽さから口コミでひろげられるかもしれない」と考え、医療現場から早期にリアルなヒント集を届けるために、2013年、京都府視覚障害者協会より『メルマガ色鉛筆』を創刊し、眼科や施設にチラシを配布しました。<br> 『メルマガ色鉛筆』は視覚障害を持った120人のライターが、それぞれの暮らしの一コマをあるがままにレポートしています。月3回の発行で、歩行、制度、工夫、恋愛、結婚、子育て、家事、就学、就労、趣味、スポーツ、共生、家族、心の風景、川柳などのレポートを無料で全国にお届けしています。『メルマガ色鉛筆』はさまざまなネットワークや機関紙、教育相談のニュースレターなどに転載されています。「色鉛筆をヒントにあきらめていた障害年金受給につながった」、「便利グッズに出会えた」、「急に見えなくなったばかりの人に転送した」など、当事者の体験がまだ見ぬ誰かの小さなヒントとして活用されています。<br> また、色鉛筆から生まれた書籍『見えない地球の暮らし方』は、福祉やITの外側にいる方々にも情報を届けるために作成しました。全国から約300人の方に活動協力金を賜り、3000部を制作し、医療、福祉、教育などさまざまな場面で配布していただきました。電子書籍、テキストデータ、ホームページ掲載、デイジー、点字と幅広い読書スタイルに対応しました。現在、クイックロービジョンケアをテーマに第2巻発行の準備中です。<br> オフでの活動であるメルマガ・書籍は仕事である視覚リハで大活躍です。当事者が運営する京都府視覚障害者協会のホームページはレイアウトがシンプルなので、ネット検索の練習に活用しています。継続的な情報入手手段の一つとして『メルマガ色鉛筆』の読者登録を提案したり、書籍『見えない地球の暮らし方』にて、見え方・見えにくさ体験や多様な読書スタイル体験につなげています。</p>
<p><strong>4.「働く」をテーマにした取り組み</strong><br> 鳥居寮は職業訓練校ではありませんが、就活対策や働きながらの就労スキル獲得を目的に利用される方も増えています。就活準備のためのスキル獲得として、履歴書や職務経歴書の作成、面接対策、電話応対でのメモ実践、正確で速いタイピングスキル獲得のための訓練など、働くために必要な最低限のスキルが何かを考慮して、訓練課題を提供しています。アビリンピック対策講座や公的機関との連携でのビジネスセミナーも実施しています。<br> オフの当事者活動としては、2001年に発足した視覚障害者ネットワーク「きららの会」、2012年より毎年4回開催している「仕事サロン」、2017年に発足した「視覚障害者就労相談人材バンク」に携わっています。また、書籍『あまねく届け! 光』(視覚障害者就労相談人材バンク有志著、読書日和発行)の編集を担当しました。働く仲間の生の声から具体的に困ることが何かを知ることができます。<br> 職場内で活用するオリジナルの表を訓練の中でご本人と相談し、作成することもあります。職場で実践されている工夫を拝聴し、演習テキスト作成の参考にしています。また、鳥居寮での就労ニーズへの取り組みを動画発信し、求職中・在職中の方へ「まずは相談」を呼びかけています。視覚障害就労のチーム支援の実現を目指して、他機関との連携を深める狙いもあります。<br> 一方、利用者さんに仕事サロンを案内し、社会人の先輩と交流することも提案しています。特に中途障害で新卒就活という方にとっては、どんなスキルが必要なのかイメージすることが大切です。仲間との出会いは訓練のより具体的な課題を考える機会にもなります。仕事サロンスタッフで支援者でもある私が、サロンに同席できることで初対面での配慮も可能です。一人で二つの立場、オンオフ共存の強みととらえています。</p>
<p><strong>5. 仲間との交流から生まれた自分ごとの取り組み </strong><br><strong> ~カラーコーディネート・メイク・同世代交流~</strong><br> リハビリテーションは相談に始まり相談に終わり、「訓練後の連携=人と情報につながること」が大切だと私は考えています。そのためには、自分自身の社会資源の引き出しを充実させる必要性を感じ、勤務時間外にはアンテナを立てる時間を持つようにしています。支援者としてではなく仲間の一人として、私が見えない・見えにくい人生模様にふれることで気づくことがあります。<br> 特に、若い世代のネットワーク「きららの会」での活動の中で、同世代ならではや同じテーマならではのいろんな講座が生まれました。見えなくても色を楽しむカラーコーディネート、鏡がなくても大丈夫なメイク、スマホやマッサージ、お出かけ、子育て会など、同世代の思いを分かち合う交流です。当事者活動の中で立ち上げたり、アドバイザーとして企業と連携したり、活動の中で生まれたセミナーを、外部講師を招いての講座として視覚リハに導入しています。フランクな仲間との交流で、プライベートと仕事両方のエネルギーチャージです。</p>
<p><strong>6. 視覚リハ 心とスキルの 両輪で </strong><br> ~文章講座の試み~<br> QOLアップには心とスキルの両輪が必要との思いから、通年、週1回の文章講座に取り組んでいます。「言葉による質問力・説明力を向上させることでコミュニケーション力アップを目指す」、「文章作成を通して心と対話することで自己受容の一助となる機会を獲得する」、この二つを柱に支援しています。川柳や大喜利、物語、体験談など、訓練から生まれた作品は点字やパソコンの訓練素材になることもあります。「OBさんの文章なんですよ」とお声かけして読み進めると、「あるある」の共感のひとときが生まれます。<br> また、訓練で作成された文章が『メルマガ色鉛筆』に寄稿され、読者から感想コメントが届くことがあります。自分の思いや経験が遠くの誰かの心に響き、文章を通してつながる体験が生まれています。情報を求める側から発信する自分へ、思いを共有することはセルフメンタルケアにもなるようです。視覚リハから全国へ当事者のリアルを届ける、まさに当事者活動と視覚リハの連携「心とスキルの両輪」の実践です。</p>
<p><strong>7.支える人に出会って元気アップ</strong><br> 医療・福祉・教育現場の方、研究者の方、ボランティアさんなど、私たちの周りにはいろんな人の情熱があります。でも、その情熱の声にふれる機会は案外少ないものです。教養訓練の中では制度やサービス、工夫などをお伝えするだけでなく、なかなか直接出会うことのない企業や研究者の方にご講演いただいています。自分たちの知らないところで、「人生をかけて見えない・見えにくい人の暮らしを支えたいという人がいる」、「その人と出会うことはシンプルにうれしい」、「元気のもとになる」、そんな体験を私は幾度も重ねてきました。アプリ開発、芸術鑑賞サポート、アロマ、カウンセリング、海外の福祉など、それぞれの専門家の皆様からの講演はいつもサロン形式で実施し、双方向で考える時間になっています。支える人にとっても、支えられる私たちにとっても刺激的で熱い時間です。</p>
<p><strong>8.主体的リハビリテーション 伴走から協奏へ</strong><br> 訓練終了後も、主体的につながりリハを持続可能にする活動が生まれています。文章講座修了者の会「あおいとり」では、季節ごとに文章テーマを募集し、メーリングリストを活用して文章を投稿しながらつながっておられます。「あおいとり」で提案された文章課題に訓練中の皆様も挑戦され、現役さんとOBさんが感想コメントをやりとりされています。訓練中に現役さんとOBさんが課題を共有すること、それは文章を通してつながる居場所づくりへのサポート、つまり私の役割は伴走です。文章を通して持続可能な交流へ、文章から始まる主体的リハはいつしか協奏へとつながっています。<br> また、見えない・見えにくい人のための外出支援ナビ「天使の杖でおいでやす」のホームページを、訓練 OBさんが運営されています。小説の舞台をめぐるレポートを掲載するなど、訓練で獲得したスキルを存分に発揮された活動です。文章講座の課題として言葉の道案内やおすすめスポット紹介に取り組み、天使の杖のお出かけレポート集のコーナーに寄稿しています。<br> 鳥居寮修了者の会「フェニックス会」は発足32年となりました。OBさんとボランティアさんで組織され、訓練中の皆さんとの体験交流会で先輩とのつながりの場を重ねておられます。訓練中から伴走し、活動そのものには協奏する、さまざまな活動とともに手を携え生まれるハーモニーを楽しんでいます。</p>
<p><strong>9.視覚リハにおけるリクリエーションの役割</strong><br> 視覚障害リハビリテーション研究発表大会に、私は第23回から参加し、第24回から当事者活動、または職場での取り組み、いずれかの発表をしてきました。2022年度よりは、視覚障害リハビリテーション協会余暇活動分科会の世話人を担当し、第30回視覚リハ大会では、リハビリテーションとリクリエーションについて考えるワークショップを実施しました。多職種が参加する大会で集う仲間とともに汗をかき活動することで、専門家同士でありながら気軽に対話できる仲間が増えます。時に、日常の取り組みの中では挑戦できないことを出し合って課題を提起したり、解決法をともに考えたりとワイワイやっています。<br> 「レクとリハはなかよし」という仮説のもとに、今年度は、「ITと点字」、「言葉で伝える」、「視覚リハのスキル」をミックスしながら、オンオフともにウクレレ演奏のサポートをしています。「好きなことから自己実現」「やり、たいをできるに」、「リクリエーションとリハビリテーションについて」、「レクが与えるリハの効果」、「リハにおけるレクの役割」など、これからも多面的にレクリハについて探求していきます。<br> 石川的 ADLは「当たり前にできる life」。当事者活動と視覚リハの連携でどんな化学反応が起きるか、想定外も楽しみながらの挑戦です。</p>
<p>【参考情報】<br>京都ライトハウス鳥居寮 就労ニーズへの取り組み動画 <br><a href="https://www.kyoto-lighthouse.or.jp/news/news-8763/">https://www.kyoto-lighthouse.or.jp/news/news-8763/</a><br>京都ライトハウス 点字とともに点字となかよし <br><a href="https://www.youtube.com/watch?v=l3jEHLfjRa4">https://www.youtube.com/watch?v=l3jEHLfjRa4</a><br>京都ライトハウス 文集『点字と私』 <br><a href="https://www.kyoto-lighthouse.or.jp/column/column-6505/">https://www.kyoto-lighthouse.or.jp/column/column-6505/</a><br><br>公益社団法人京都府視覚障害者協会『メルマガ色鉛筆』 <br>書籍『見えない地球の暮らし方』のページ <br><a href="http://kyosikyo.sakura.ne.jp/contents/read/id/33">http://kyosikyo.sakura.ne.jp/contents/read/id/33</a><br>仕事サロンのページ <br><a href="http://kyosikyo.sakura.ne.jp/contents/read/id/112">http://kyosikyo.sakura.ne.jp/contents/read/id/112</a><br>就労相談人材バンク・書籍『あまねく届け! 光』 <br><a href="https://shurojinzaibank.com/">https://shurojinzaibank.com/</a><br>視覚障害者ネットワーク「きららの会」 <br><a href="http://kilala.ciao.jp/">http://kilala.ciao.jp/ </a></p>
<p>(写真説)<br>『見えない地球の暮らし方』本文中の文字の見え方体験ページの写真。10.5ポイントから48ポイントまで、12種類の文字の大きさの川柳が掲載されている。例えば48ポイントの川柳は「つえさばき かっこよく決め ごっつんこ」。左のページは白地に墨字、右ページは黒地に白抜き文字。</p>
視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から2022 第5回 地域における視覚リハの展望 ~訪問訓練の現場から~
tag:movabletype.net,2003:post-2203817
2022-10-10T11:58:00Z
2022-10-10T13:20:33Z
地域の実情に即した訪問での視覚リハビリテーションの展望と今後の課題
吉野由美子
<p><span class="asset asset-file at-xid-2473865"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B32022%E5%B9%B410%E6%9C%88%E5%8F%B7-%E5%89%8D%E5%B7%9D.pdf" title="視覚障害2022年10月号-前川.pdf"></a> </span></p>
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2473853 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/205-%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B310%E6%9C%88%E5%8F%B7-320wri.jpg" alt="月刊視覚障害10月号の表紙" width="320" height="240">
<figcaption>月刊視覚障害10月号の表紙</figcaption>
</figure>
<p> ようやく秋風が吹いて、過ごしやすい季節になったと思ったら、突然暑くなったり、寒くなったり、連休のごとに、雨が降ったり、全く人騒がせな寄稿ですが、そんな事にはお構いなく、月日はどんどん経って行きます。私がコーディネートさせていただいているシリーズ「視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から」も第5回になりました。今回は、地域の実情に合ったやり方で、視覚障害者の一人一人のニーズに沿ったきめ細かい方針を立てて、、訪問訓練を行っているNPO法人アイパートナーの前川さんに、その現状と課題について書いていただきました。今までと同様に、執筆者の同意を得て、このブログでもPDFデータとテキスト形式で、紹介させていただいています。</p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2473865"><a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B32022%E5%B9%B410%E6%9C%88%E5%8F%B7-%E5%89%8D%E5%B7%9D.pdf" title="視覚障害2022年10月号-前川.pdf">視覚障害2022年10月号-前川.pdfをダウンロード</a></span></p>
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<p><strong>地域における視覚リハの展望~訪問訓練の現場から~</strong><br><strong>視覚障害者生活訓練等指導員(歩行訓練士)</strong><br><strong>前川 賢</strong>一</p>
<p><strong>はじめに</strong><br> 地域における視覚障害児・者への訪問型ハビリテーション・リハビリテーション(以下、視覚リハ)の内容は、多岐にわたります。三重県では約四半世紀をかけ、視覚障害者生活訓練等指導員(歩行訓練士。以下、訓練士)による訪問訓練事業を成立させてきました。これまでの経緯と、見えてきた課題にふれ、今後の地域訪問型視覚リハの展望について述べてみたいと思います。<br> <br><strong>1.NPO法人としての訪問訓練状況と事業形態</strong><br> 筆者は、一般企業、知的障害者福祉、重度肢体不自由者福祉、児童福祉のキャリアを経て、現在、視覚障害児・者福祉に携わっています。2000(平成12)年に三重県でNPO法人アイパートナー(以下、アイパートナー)を立ち上げました。設立以来、訓練士として、県下在住の視覚障害児・者に対し、日常生活用具、補装具、ロービジョンエイドなどを使用しながら、歩行や生活訓練を訪問形式で実施しています。2022(令和4)年現在、スタッフは8名で、年間の訓練受講者数は約260名、1か月あたりの訪問訓練回数は約380回で推移しています。<br> 設立当初は、1時間3000円という損益分岐点といえる実費を設定し、個人契約で訓練を開始しました。現在は、県や市町の公的事業契約、個人契約、寄付金などの形態で運営し、公的事業での訪問訓練が全体の約90%を占めるという状況です。市町が主体の訪問訓練は、三重県下29市町中23市町で事業化され、アイパートナーと契約をしています。<br> 当事者団体が県の委託を受けて運営する三重県視覚障害者支援センターで実施される相談事業を、我々訓練士が担当することで、視覚障害児・者の各種相談に対応しています。必要なら市町の訪問訓練事業につなげるのが典型的な流れの1つになっています。医療、教育、福祉、当事者団体との連絡連携は当初から有し、拡大深化させてきました。医療との連絡連携は、現在ではスマートサイトを採用しています。教育関係では、週に1回、訓練士が盲学校の在学生への歩行訓練に赴き、福祉関係では施設などを利用する視覚障害児・者についての各種相談から訓練につなげています。<br> 市町に事業がない地域や、緊急性を伴う訓練については、三重県視覚障害者支援センターの「緊急訓練」と称する事業で訓練士が訪問できるようにもなりました。これら公的事業による訓練回数に不足がある場合は、個人契約や寄付金で回数を確保します。県、市町、個人の契約分担を構築し、全てに同じ訓練士が携わっているのが三重県の特徴になります。<br> <br><strong>2.活動の3段構え</strong><br> 訪問訓練に携わる現場での活動の実際は、3つの内容を常態化させながら進める日々です。 <br> 1つめは訪問訓練そのものです。訪問訓練の内容は、歩行訓練、生活訓練、デジタル機器の活用を含めたコミュニケーション訓練など多岐にわたります。本人と訓練士双方の努力で、自立生活技術の習得を目指すのが各種訓練です。因みに、訓練という用語にナーバスな人、立場の人もおられます。そのため、現場で練習という用語も使用しますが、提供する内容に違いはありません。<br> 2つめは、環境の整備について管轄機関に直接働きかけることです。現場において、訓練で解決できない事柄に遭遇することがあります。例えば、努力して習得した白杖歩行を駆使しても歩行困難な道路環境などです。いわゆるICF(国際生活機能分類)の「環境因子」に該当する内容です。ICFは、2001年にWHO総会で採択されました。「全ての人に対する健康の構成要素に関する分類」で、「健康状態」、3つの「生活機能」、2つの「背景因子」の分類で構成されています。「背景因子」の1つが「環境因子」で、物的・人的なものを含めた全ての環境を指します。本人の努力だけでは解決できない、社会の側に改善すべき環境整備を見つけた場合、直接管轄機関に働きかけ解決を目指していきます。 例えば、「この場所にはどうしても点字ブロックの敷設を要する」と判断した場合の働きかけなどです。 <br> 3つめは、環境整備してもなお解決しない事柄に対するアプローチです。例えば、歩道上に違反して路上駐車する車両に白杖が接触し、車体を傷つけた場合に視覚障害者に責任が発生するなど、道路交通法の改正を要する内容に思えます。これらの事柄を放置すると、やっていることが全て対処療法的な内容に終始し続けることになってしまいます。「本来どうあるべきか」の追求と訴求を継続することで、ユニバーサルデザインに根ざした社会の基盤を醸成させていくことに貢献していかなくてはなりません。これらは、訓練士会、関係団体、学術団体、研究会などに働きかけながら、全体で啓発していかなければならない事柄です。啓発は、現場に直接携わり続ける者から発信する継続性を求められます。<br> <br><strong>3.マニュアルの形骸化による弊害</strong><br> 公的機関の慣習やマニュアルが、訪問訓練の事業化に支障を及ぼす場合があります。理由があってマニュアル化されたものが、時を経て時代にそぐわない内容のものになったり、時間の経過とともに取り扱う人が変わり続けたりする中で、マニュアルだけが形骸化して残ります。「なぜそうなっているか」を踏襲せずに、慣習化したものをそのまま運用していることがあるのです。<br> 形骸化されたマニュアルは事業化の弊害になります。訪問訓練を市町予算で事業化し、実施できるよう契約を進める場合など、なかなか進展しないことがあります。「前例がない」「他の市町ではどうか?」「マニュアルではこうなっているから」など、よく聞いてきた言葉です。契約後においても、担当の交代によってマニュアルの取り扱いが変わってしまうこともあります。マニュアルの運用を硬直化させてしまうこともあれば、弾力的な運用に積極的で、必要なら契約内容そのものを改善できたりもします。<br> 担当や窓口の要員交代によって取り扱いが流動的なこと自体は問題だとも思います。しかし、人次第であるというのが現状で、理解ある人と結びついていくか、啓発により理解者を増やしていく必要があります。経験上、事業の必要性を本気で理解し、進めてくれる担当者であれば、新規事業はつくれるということを実感しています。<br> マニュアルの形骸化を防ぐために、事業契約のある市町などの担当者と連絡をとり続けることが、重要な業務の1つになっています。加えて、関わる視覚障害児・者が活用している障害福祉サービス、介護保険サービス、教育機関との連絡と連携に要する時間も、増え続けています。<br> 増え続ける理由は、視覚障害児・者の活動制限について、理解を促すための啓発的な取り組みや説明に時間を要するからです。そのため、啓発の一環として、訓練現場を様々な関連機関、関連領域の方に積極的に見学してもらおうと思いもしました。しかし、訓練中に同行して見学者に説明する熟練訓練士がいない見学では、専門性の理解が全く的外れなものになってしまい、効果が期待できないばかりか、逆効果になってしまいます。例えば、歩行訓練など、見学するだけでは白杖操作技術を教えるのが訓練士の主たる専門性と勘違いされやすいのです。それは、視覚障害の活動制限への無理解、低理解に起因するもので、啓発の難しさに直結しています。<br> <br><strong>4.活動制限の無理解、低理解は地域リハを停滞させる</strong><br> 視覚障害児・者の大きな活動制限として、「移動」と「読み書き(情報の制限)」の2つがあげられます。視覚障害の状態によって、移動と読み書きはそれぞれ活動制限の程度が異なり、逆転したりもします。移動はできても読み書きに重篤な困難をもたらすケースもあれば、読み書きはできても移動困難なケースもあります。<br> 移動、読み書きに代表される活動制限の内容は多様です。眼球構造上のアクシデントだけではなく、眼球付属器、視神経、脳のアクシデント、あるいはその複合アクシデントによる結果としての視覚障害があるため、個人差を生じるのです。<br> 視力と視野だけをとっても、時間帯、場所、環境、天気、体調などの違いによって、1日の中でさえ見え方、感じ方が異なることも理解してもらいづらい事柄になります。<br> 多様な個別性、個人差を理解せずに、晴眼者に対しアイマスクなどによる障害体験を安易に実施すると、視覚障害の活動制限について、実際とはかけ離れた画一的で主観的な理解を与えてしまうことになります。視覚障害児・者の活動制限について誤ったリードをしてしまいがちな啓発が、視覚障害関係の講習会などでもあると感じます。<br> また、視覚障害者自身が他の視覚障害児・者の活動制限を理解しにくいという点も、視覚障害児・者の活動制限の1つといえると思います。<br> これらの結果、多くの視覚障害児・者に寄与できるバリアフリーな環境構築とはほど遠い整備になったり、他の障害特性を持つ人にはバリアーとなる環境構築になったりする場合があります。<br> 現場においては、視覚障害児・者にとって、既知の場所と未知の場所とで全くパフォーマンスが異なる点も、活動制限を誤解されやすい点です。自宅訪問で面接に赴く福祉関係者の前では、視覚障害児・者のパフォーマンスは自立度の高いものに見えてしまうことがあります。自宅内では難なく移動できるからです。ところが、未知の場所に行けば全く自力移動できなかったりするなど、困難を生じます。<br> 活動制限の無理解、低理解は、視覚リハの展開や市町など公的機関との事業契約の運用にも影響を及ぼします。多くの視覚障害児・者の場合、白杖歩行は練習したコースにおいて安全性を確保した自立度の高い歩行になります。一方、未知の場所では歩行困難か安全性が著しく損なわれるため、単に白杖の操作技術を習得すれば訓練終了ということにはなりません。新しい目的地への自立歩行を実現するためには、訓練の継続を要するのです。その理解がないと訓練が期間で区切られてしまったり、翌年度は受けられなかったりするなどの非現実的なルールが設けられてしまいます。<br> 市町行政の申請主義的な窓口対応は、視覚障害児・者の活動制限に対する無理解の1つです。視覚障害児・者に対しては、特に初期段階において、さらには継続的にも行政側から積極的な情報の伝達、連絡を必要とします。視覚障害児・者は、申請したくても「窓口に行くことができない」「連絡ができない」「申請できるサービスを調べることができない」など、できづらい活動制限におかれているからです。<br> コロナワクチン接種の案内をするため、単身生活をしている視覚障害者宅に電話連絡を実施した市町があります。市町の担当者が、電話のやり取りの中でその方の生活状況が分かり、市町の生活訓練事業を紹介し、訪問訓練実施につながったケースがありました。これなど、申請主義的な対応ではなく、視覚障害児・者の活動制限に適切な対応を実施できた好例だと思います。<br> 活動制限の無理解、低理解は、地域における視覚リハを停滞させる大きな要因の1つです。</p>
<p><strong>5.訪問訓練から見えてきた今後の展望と喫緊の課題</strong><br> 訓練先として、自宅以外に介護施設などへの訪問が徐々に増えてきています。視覚障害者が入通所する介護施設などで、活動制限の無理解から環境整備がなされず、老化以外の諸能力低下を招いている現場に遭遇することがあります。訓練士が直接関わることで、環境整備を提案し、施設内での移動や生活の自立度を上げていく連携について、今後もますます強化していく必要があります。<br> 自宅以外への訪問先の増加とともに、他の疾患や障害の重複化もますます増加傾向にあります。筆者が視覚障害以外の障害福祉サービスについて職歴を有していた点や、介護福祉士などの職歴を有する訓練士を配置していることで、対応を可能とする範囲は広めですが、他の専門領域との連携強化を、ここでも求められます。<br> なお、超重症児と呼ばれる人たちが背負う重複障害内容の1つである視覚障害に対しては、現在のところ訓練士は全くの無力です。また、訓練士のみならず、視覚リハを称する職域の者は、ほとんど無関心で職域の対象外になっているのではないかと思います。視覚障害である以上、訓練士として何ができるのかを考えていくべき対象であるはずなのですが、筆者も、現在のところ直接的な関わり事例を持たないままです。 <br> 訪問訓練の限界も見えてきています。視覚障害者同士のコミュニティ形成をすることに課題を有するのが弱点です。例えば、同じマンションに住んでいる視覚障害者宅を数件訪問していても、個人情報の観点からお互いを紹介することができかねるからです。先の入通所者施設で取り上げた課題も含め、対応していくために、視覚障害者に特化した生活基盤となる入通所施設をつくる必要性を検討中です。視覚障害の活動制限を理解して環境構築した住空間の実例と、自立生活の実現を示す必要性があります。訪問訓練だけでは解決できない、生活空間の構築に迫られているのです。<br> 活動制限の無理解、あるいは低理解という土壌の上に視覚リハを定着、発展させていかなくてはならない現状は、訪問訓練以外の啓発的取り組みに相当な労力を要求される実態を続けることになります。<br> 不思議なことに、視覚障害を取り巻く様々な支援サービスが充実すればするほど、その労力に費やす時間が増えていく傾向にあります。行政、医療、教育、福祉の関連機関との実質的な連携は、ますます全方位的に求められています。時間をかけて蓄積してきた連絡連携は全体的に充実したものになりつつありますが、各所でみれば、まだ凸凹している現状もあります。<br> 連絡連携を維持発展させつつ、視覚障害児・者の活動制限について理解を促す啓発をいかに継続させていくのかは、時間の確保も含めて喫緊に対応を要する課題になっています。</p>
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視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から2022 第4回 就労継続支援B型事業と生活訓練事業での視覚リハの取り組みと課題~地方都市における視覚リハの取り組み~
tag:movabletype.net,2003:post-2174867
2022-09-05T06:24:00Z
2022-09-05T07:13:00Z
就労継続支援B型事業所を中心とした、地域の特性に根ざした視覚障害リハビリテーションシステムの構築を目指す試みと、その課題、将来像について
吉野由美子
<figure class="mt-figure mt-figure-left" style="display: inline-block; float: left;"><img class="asset asset-image at-xid-2426464 mt-image-left" src="https://yoshino-yumiko.net/.assets/thumbnail/204-%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B3%EF%BC%99%E6%9C%88%E5%8F%B7-320wri.jpg" alt="雑誌「視覚障害2022年9月号表紙」" width="320" height="240">
<figcaption>雑誌「視覚障害2022年9月号」表紙</figcaption>
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<p> 9月の声を聞くようになって、朝夕は少し過ごしやすくなり、夜ベランダに出ると、秋になく虫の声が聞こえるようになってきました。けれども、今日は、朝から猛暑、広報車が「水分の補給とエアコンの使用で熱中症の予防をしてください」と言いながら町を流していました。<br> さて、雑誌「視覚障害」に私がコーディネートさせていただいているシリーズ「視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から」も4回目を迎えて、浜松のウイズ蜆塚の施設長古橋さんに依頼をして、「就労継続支援B型事業」を広く活用して、生活訓練事業も拡張し、地域の実情に即した視覚リハシステムの構築を模索している様子を書いていただきました。<br> このユニークな試みを多くの方に知っていただきたくて、執筆者古橋さんと月刊視覚障害編集室の許可を得て、私のブログでも公開させていただきます。公開は、PDFデータと、テキスト形式で行います。</p>
<p><span class="asset asset-file at-xid-2426537"> <a href="https://yoshino-yumiko.net/.assets/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B3-2022%E5%B9%B49%E6%9C%88%E5%8F%B7-%E5%8F%A4%E6%A9%8B.pdf" title="視覚障害-2022年9月号-古橋.pdf">視覚障害-2022年9月号-古橋.pdfをダウンロード</a> </span></p>
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<p><strong>視覚リハ(ロービジョンケア)の現場から2022</strong><br><strong>第4回 就労継続支援B型事業と生活訓練事業での視覚リハの取り組みと課題</strong><br><strong> ~地方都市における視覚リハの取り組み~</strong><br><strong>NPO法人六星 ウイズ蜆塚施設長</strong><br><strong>古橋 友則</strong></p>
<p><strong>はじめに</strong><br> COVID-19による生活様式の変化は、テレワークをはじめとした世の中の働き方にも多様性を生み、一層のデジタル化が進んでいます。一方、障害のある方を取り巻くデジタル環境はどうでしょうか? とりわけ視覚障害者が、世の中のデジタル化による恩恵を十分に受けているかといえば、まだまだ課題は多くあると思います。<br> 総務省のウェブサイト(政策「高齢者・障害者のICT利活用支援」)では、「高齢者や障害者がICT機器・サービスを活用し、デジタル活用の恩恵を受け、活き活きとより豊かな生活を送ることができるようにするため、高齢者等が、身近な場所で身近な人からICTを学べる環境づくりを推進する事業に取り組んでいる」と言っています。もちろん、その中には視覚障害者も含まれています。「身近な場所で身近な人からICTを学べる環境づくり」はまさに理想的な形であり、そこを求めていくことに疑いはありませんが、情報は一方通行では成り立ちません。発信する側の手段や情報量は増えても、それを受け取る側の知識、技術が伴っていなければ、せっかくの有益な情報も届くことはありません。<br> 私の働いている浜松市は人口80万人の政令指定都市ですが、中山間地域も多く、都市部のような福祉サービスも社会資源も充実しているとは言えません。そのような地方都市においても、視覚に障害を負った方が、自らの居場所を確保し、必要な情報を得るための知識技術を身につけることができるために、就労継続支援B型(以下、就B)事業と生活訓練事業の多機能事業の取り組みが、一つのヒントになり得ると思います。<br> <br><strong>1. 設立当初からの思い</strong><br> 障害者自立支援法が施行される10年前、平成8(1996)年4月に、ウイズは視覚障害者中心の小規模授産所として、静岡県浜松市の郊外で開所しました。<br> 当時はまだ措置制度の時代であり、更生施設や授産施設等の第一種社会福祉事業の運営は、地方自治体か社会福祉法人に限られていましたので、法人格のないウイズは無認可施設といわれる小規模授産所として、市から年間数百万円の補助金を受け、職員4名、利用者6名でスタートしました。<br> 当時全国には同様の小規模授産所が5,000か所以上ありましたが、視覚障害者を対象にした小規模授産所はなく、開所当時は「視覚障害者が働けるのか」といった厳しい声もあったそうです。私は開所4年目の1999年に入職しましたが、その時にはすでに浜松市の広報誌や名刺、トランプ等への点字印刷、白杖製作等に取り組み、視覚障害者が使う物を視覚障害者自身が製作することで、県内の小規模授産所でもトップクラスの工賃を稼ぐまでに至り、開所当初の周囲の不安は払拭されていきました。<br> また、希望する方には白杖歩行の練習をして自力で通所することを通して、「視覚障害者が街に出れば街が変わる」を合言葉に、利用者自らが社会を変える気概を持って通所していました。当時、JRと私鉄の電車を乗り継ぎ、1時間半かけて通所していた中途視覚障害の男性が、「白杖を持って駅を歩き始めた時は周囲の“目”が気になって辛かったが、通い続けているうちに同じ電車に乗った方が声をかけてくれたり、いつもと違うルートを歩いていると声をかけてくれる方がいて、自分は見られているのではなくて、見守られているんだと気づいた」とおっしゃっていたのを、今でも鮮明に覚えています。<br> ウイズのような小さな作業所が地域にあることで、視覚障害のある方だけでなく、社会の考えや見方も変えることができる、これは今もウイズにとって大事な視点となっています。 </p>
<p><strong>2. ウイズにおける就B事業の目的と役割</strong><br> 平成18年に障害者自立支援法が施行され、小規模授産所だったウイズも、平成20年に就B事業所として法定福祉サービス事業所となりました。そのころには利用者も20名を超え、盲学校卒業の20歳代から、中途で視覚障害者になった70歳代の方まで幅広く在籍し、また、知的や精神、肢体との重複障害の方も増えていました。<br> 現在も視覚障害をベースに様々な重複障害のある方が在籍していますが、とりわけ、当時は高齢の中途障害の方たちから「自分たちの居場所が欲しい」という声が高まり、平成20年に第2ウイズとして「ウイズ蜆塚」が開所され、それに伴い、もともとのウイズも「ウイズ半田」と名称変更しました。以来、二つの就B事業所を50名以上の方が利用されていますが、主にウイズ蜆塚では、65歳以上の介護保険対象の中途視覚障害者も増え、単に働く場としてだけでなく、作業を通して障害に対する受容や共感を利用者同士が行うピアサポートの場として、また、様々な福祉機器や制度を知り、情報を得る場所としても役割を担ってきました。<br> 一方、訪問による歩行訓練等は訓練回数に限度を設けている自治体も多く、せっかく訓練によって前向きになっても、訓練終了後にまた在宅での生活に戻ってしまう場合もあるようですが、ウイズでは訪問訓練をきっかけに利用を始める方も多くおられます。介護保険にはない障害分野独自のサービスであり、福祉的就労の場であるため、利用期間や年齢、障害の程度による制限もなく、障害者手帳と作業をする意思さえあれば誰でも利用できる利点が、この就B事業にはあります。<br> 作業を通して聴覚や触覚を使った物の確認方法を知ったり、買い物や散歩のレクリエーションを通して手引き歩行を学ぶことができたり、最近ではプレクストークの体験やスマートフォンの使い方を職員からだけでなく、利用者同士が情報交換し、お互いに伝え合う場が見られるようになり、ウイズが単に就労支援の場だけではなく、生活力を身につけ、社会参加するきっかけを作る視覚リハの現場であることを実感しています。<br> <br><strong>3. 全国の視覚障害者を対象にした就B事業所</strong><br> ウイズと同様に、全国には視覚障害者を対象にした就B事業所が存在します。視覚障害者のみに特化した事業所では、作業内容も支援内容も視覚障害者へ配慮されたものが多く、また視覚障害者同士のコミュニケーションを大事にされているところが多いようです。<br> 一方で、視覚障害者だけでなく、知的や精神等、他の障害のある方とともに活動することで、それぞれの障害特性を生かしたり、補い合うことで独自の製品づくりや、取り組みをしている事業所もあります。<br> 東京都新宿区にある日本視覚障害者職能開発センターの「東京ワークショップ」は、1980年4月に開所した日本で最初の身体障害者の通所型授産施設で、パソコンを使い、録音された音声を文字化する仕事をしています。会議に出向いての収録から、文字起こし、校正、納品まで一貫して対応することで、高度なスキルとそれにより安定した工賃の支払いを確保しているのが特徴です。<br> 静岡市にある「視覚サポートなごみ」では、プラモデル部品の袋詰め等の軽作業のほか、視覚障害者向けの講習会や機器体験会の実施、冊子『視覚障害者のための便利帳』を作成するなど、従来の就労支援施設の枠を超えて、視覚障害者をサポートするための取り組みを積極的に行っています。<br> また、埼玉県上尾市にある「領家グリーンゲイブルズ」では、視覚障害と他の障害を併せ持った重複障害の方も多く在籍し、点字名刺の製作や農作業のほか、コーヒーの焙煎など視覚障害者の特性を生かした、ほかにはない新たな取り組みを、利用者の「やれること、やりたいこと」を基に話し合って決めているのが特徴です。<br> その他、大阪では今夏、パソコン技術の習得と、パソコンを用いた音楽制作を仕事に結びつけるという大変興味深い試みを始める、「オトラボ」という就B事業所がオープンしました。<br> このように、今では視覚障害の特性をよく把握し、各々の個性を生かした取り組みが全国各地で広がりつつあり、就B事業を通した新たな視覚リハの場になっています。<br> <br><strong>4. 視覚障害者の就B事業の課題</strong><br> 今では一般就労だけでなく、視覚障害者の働く場の一つの選択肢として、この就B事業も大きな役割を果たしていますが、いい面ばかりではなく、制度や地域による課題も見えてきています。<br> すでに述べている通り、この就B事業は介護保険にない障害福祉サービスのため、年齢に関係なく利用できますが、自治体によっては障害特性を理解せず、一律に介護保険のサービスを優先しようとするところがまだあるようです。<br> また、地域によっては視覚障害者中心の事業所がなく、他の障害の方が中心の事業所を利用する視覚障害者も多くおられます。その場合、事業所の定員に対し、視覚障害者の割合が少ないこともあり、職員が視覚障害に対する知識が乏しく、作業の提示方法や食事等の支援で意思疎通を図れなかったり、他の利用者とのコミュニケーションがうまくいかなかったりして、退所してしまうといったケースを聞きます。当然ながら他の障害の方と良好な関係を築き、楽しく通っている方も多くおられますが、視覚障害のある方が安心して利用できる事業所を、通所可能な範囲で作っていくには、各都道府県の障害保健福祉圏域に1か所ずつ設置するのが理想だと私は考えます。<br> さらに言えば、その事業所に視覚障害専門の相談員を1名ずつ配置することができれば、手帳の取得から補装具・日常生活用具の相談、就労支援、生活訓練の相談に至るまで、視覚に関することであれば何でも受けられる体制をその福祉圏域で担うことが可能になります。また、そのことで現任の相談支援専門員、介護支援専門員(ケアマネ)にとっても、負担の軽減が図れるとともに、今まで以上に視覚障害者に必要な情報を、必要なタイミングで届けることが可能になります。<br> もう一つ、この就B事業を行う上での大きな課題は利用者負担金です。就B事業に限らず、障害福祉サービスを利用した場合の自己負担は、世帯の収入状況に応じて設定されています。生活保護世帯や、市町村民税が非課税世帯の場合には自己負担金はありません。障害年金は非課税ですので、障害福祉サービスを利用している多くの障害者は負担金がないのが現状です。<br> しかし、ここでいう世帯とは成人の場合、本人とその配偶者となっています。なぜ本人だけでなく配偶者が含まれるのか、その理由を見つけることはできませんでしたが、配偶者のいる中途障害の方にとっては、この設定が大きな負担となっている現状があります。<br> たとえば、病気で視覚障害になり職を失った40代の男性が障害福祉サービスを利用する際、配偶者である妻が働いていれば課税世帯となり、自己負担金が発生します。月の上限額はあるにしても、もし家のローンが残っていたり、子育て中の世帯であれば、その男性が必要な福祉サービスの利用を控えることは容易に想像できます。<br> 併せて問題なのが、この自己負担の範囲がA型、B型、移行の就労支援事業にまで及んでいるという点です。皆さんの周りに会社にお金を払って働いている人がいるでしょうか? たとえ福祉的就労であっても、社会を構成する一員としてやりがいを持って働き工賃を得ています。それなのに、働けば働くほど工賃とほぼ同額の費用負担をすることには大きな違和感があります。<br> 利用者負担金における世帯範囲の改善と、負担対象から就労事業を除外しない限り、真の社会参加には繋がらないと思います。なお課税に関する問題は、本人が65歳を迎えた時に、老齢年金か障害年金かを選択する際にも考慮すべき大事な視点ですので注意が必要です。</p>
<p><strong>5. 新規事業の検討と立ち上げ</strong><br> ウイズの二つの就B事業所には、現在3名の歩行訓練士と2名の点字指導員がおり、ウイズ利用者のほかに在宅の視覚障害者への訪問支援も県事業の中で行っています。しかし昨今は、ICT機器の習得を希望する方や、歩行への安全意識の向上により歩行訓練を希望される方も増え、就B事業の中でそれらのニーズに適切なタイミングで応えていくことに限界を感じています。<br> そこで3年前より、法人の中期計画の中で視覚リハを提供するための新規事業立ち上げを模索してきました。現在、全国で視覚リハを提供している施設は、大きく分けて、情報提供施設、自立訓練事業、地域活動支援センター、地方自治体の単独事業に分別されますが、制度的な制限や市当局の方針から検討を重ねた結果、ウイズでは最終的に自立訓練事業を実施することとしました。この自立訓練事業の中には、看護師や理学療法士の配置義務のある機能訓練事業と、専門職を配置する必要のない生活訓練事業があり、平成30年の法改正で、どちらの事業においても視覚障害者への提供ができるようになったため、ウイズでは生活訓練事業の実施を選択しました。<br> しかしながら、機能訓練にしても生活訓練にしても、ほぼすべての事業所が資金的に大変厳しい運営をされているのを知っていましたので、ウイズにとってもこの事業の実施は大きなチャレンジであります。</p>
<p><strong>6. 地域で視覚リハ事業を成り立たせるために</strong><br> この機能訓練、生活訓練の事業は、他の障害においては集団でのプログラムを中心にしているため、利用者6名に対し職員1名という配置基準になっています。しかし、視覚障害者への支援は、歩行であれ、ICT支援であれ、1対1での支援を基本とするため、圧倒的に人件費の持ち出しが発生します。単独での一事業所の最低定員は20名ですので、生活訓練を週2日利用されることを予測しても定員の2.5倍、50名の利用者の確保とそれを支援するスタッフの確保が必要になります。地方都市においてその体制を整えることは容易ではなく現実的ではありません。<br> そこで一つの方策として、生活訓練事業の定員を6名、就B事業の定員を14名とし、合計20名の多機能事業所とすることで、安定した運営が成り立つのではないかと考えています。生活訓練事業で培ったスキルで、就Bの作業幅を広げることができたら相乗効果も期待できます。</p>
<p><strong>7. 将来的な目標</strong><br> ウイズの新たな取り組みは本年10月からスタートします。相談支援や福祉用具の販売等、構想にはありながらまだ準備段階のことも多くありますが、利用される視覚障害者には、身近な場所で身近な人から歩行やICTを学び、社会参加できること、また、自分が学んだ知識や技術を次の視覚障害者に伝えていくことで、支援の循環が図られることを実感してもらいたいと思っています。<br> まずは浜松において、就Bと生活訓練による多機能事業が成り立つことを証明できれば、今後、多くの地方都市での良い先行事例になると考えています。</p>